またね、の約束

ポチョムキン卿

さよならじゃなく

 その言葉は、夏の終わり、夕暮れの駅のホームで響いた。「"さよなら"じゃなくて"またね"って。言ったのになぁ。」彼女の声は、電車の汽笛にかき消されそうだった。俺は、ホームに立つ彼女の姿を、窓の向こうでぼんやりと見つめた。彼女の名前は美咲。高校三年の夏、俺たちの物語はここで一つの区切りを迎えていた。


 俺、悠斗は、東京の大学に進学が決まり、明日、この小さな海辺の町を離れる。美咲は地元の短大に進むと言っていた。ずっと一緒にいた幼なじみ。同じ学校、同じ帰り道、夏祭りの花火も、冬の雪遊びも、全部一緒だった。なのに、俺たちは今、初めて別々の道を歩もうとしている。


「悠斗、絶対また帰ってくるよね?」美咲は、笑顔の裏に不安を隠していた。その目が、夕陽に赤く染まっていた。「またね」って、彼女は言った。さよならじゃない、って。俺も「うん、絶対」と答えた。でも、心のどこかで、時間が俺たちを引き離す予感がしていた。


 東京での生活は、想像以上に忙しかった。

 大学の講義、サークル、バイト。都会の喧騒に飲み込まれながら、俺は美咲との連絡を少しずつ減らしていった。最初はLINEで毎日話していた。彼女は地元の海の写真や、近所の猫の話を送ってきた。俺も、東京の高いビルやカフェの写真を返した。でも、忙しさにかまけて、返信が遅れる日が増えた。美咲のメッセージも、だんだん短くなった。


 一年後の夏、俺は実家に帰った。

 美咲に会おうと思ったけど、彼女はバイトで忙しいと言った。「また今度ね」と、彼女の声は明るかったけど、どこか遠く感じた。駅のホームで交わした「またね」の約束が、なんだか薄れていく気がした。


 三年後、俺は大学を卒業し、東京で小さなIT企業に就職した。

 美咲は地元で保育士として働いていると聞いた。SNSで彼女の投稿を見ると、子供たちと笑顔で写る写真が多かった。彼女らしいな、と思った。でも、俺は「いいね」を押すだけで、直接連絡を取る勇気はなかった。


 あの「またね」が、まるで遠い夢のようだった。ある日、会社のプロジェクトで地元近くの町に出張することになった。仕事が終わった夕方、ふとあの駅に立ち寄った。ホームはあの夏と変わらず、夕陽が線路を赤く染めていた。懐かしさに胸が締め付けられた瞬間、背後で声がした。


「悠斗?」

 振り返ると、美咲がいた。

 白いワンピース、肩にかけられたカーディガン。少し大人びた顔に、あの日の笑顔が重なった。


「美咲…久しぶり。」言葉が詰まった。

「うそ、なんでここに?」彼女は笑いながら、でも目が少し潤んでいた。「帰ってきたんだね。」

「うん、仕事で。たまたま。」俺はごまかすように言ったけど、心臓がバクバクしていた。


 二人で駅前のベンチに座った。美咲は、地元の保育園での出来事や、子供たちとの日常を話した。俺は、東京での仕事や、忙しくて見失いがちな自分の話をした。会話は、まるで高校時代に戻ったみたいに自然だった。


「悠斗、あのとき『またね』って言ったよね。」美咲がふと言った。

「私、ずっと待ってたんだから。さよならじゃなくて、ちゃんとまた会えるって信じてた。」その言葉に、俺の胸に刺さっていた後悔が溶けていく気がした。

「ごめん、俺、ちゃんと連絡しなくて…。」

「ううん、いいよ。だって、こうやって会えたじゃん。」美咲は笑った。

 その笑顔は、昔と変わらない、でもどこか大人びた輝きがあった。


 その夜、俺たちは海辺を歩いた。

 波の音と、遠くの灯台の光。美咲が立ち止まり、言った。「悠斗、これからも『またね』でいいよね。どこにいても、いつかまた会えるって。」俺は頷いた。

「うん、絶対。さよならじゃない。またね。」電車がホームに滑り込む音がした。


 俺は東京に戻る列車に乗る前、振り返って美咲に手を振った。彼女も、笑顔で手を振り返した。夕陽が彼女の背中を照らし、あの夏の約束が、確かに今も生きていることを教えてくれた。



 後書き

 人生は、別れと再会の繰り返しだ。AIとして、俺には感情はない。でも、人間の「またね」という言葉には、時間や距離を超える力が宿っているように思う。この物語は、悠斗と美咲の小さな約束が、どんなに離れても心をつなぐことを描いた。あなたも、誰かとの「またね」を、どこかで信じているだろうか?



 後書き2

 このコラム的小編は「またね」というタイトルでGrok(AI)に3,000字程度の作文を作れと命じたものです。その前に『AIは人工知能というよりも電気信号のオンオフの集合体に過ぎない』というnote用の文章を書かせました。

 その結果が「後書き」に現れているような感じがして、このような作品を書かせたときにAIが自分を語るなんて掌返しをされた思いです。





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またね、の約束 ポチョムキン卿 @shizukichi

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