プロローグ
ネットの検索エンジンに、『ラノベ作家 なり方』と打ち込んだのが、俺の青春の始まりだったかのかもしれない。
ラノベを読んでいた自分が、ラノベを書く仕事につく。想像するだけでワクワクした。
結果として出てきたのは、主な二つ。
一つ目は、新人賞への応募。各レーベルが開催する新人賞に応募し、受賞すれば金も稼げるし、たくさんの人に読んでもらえる。もし受賞を逃しても、審査員の目に留まれば書籍化するかもしれない。ただ、そのぶん応募する人も多いので、倍率は格段に上がるだろう。効率的だが、リスクも伴う方法だ。
二つ目は、小説掲載サイトへの投稿。人気にならなければ努力が水の泡だし、読んでくれる人がいなければモチベーションも下がる。ご褒美がないと頑張れない自分にできるかどうか、疑わしいところだった。
結果として選んだのは前者。国語の成績が良かったのか、謎に自信が湧き、一時は『俺がラノベ界を変える!』とか思ってた時期もあった。
結果は......”あえて”言わないでおこう。というか絶対言いません。察してください。
原因は、『環境』だと思っている。
俺には妹がいる。
妹がいないやつからは、『いいなぁ』『うらやましいなぁ』『妹ちゃんに頭ふみふみされたいなぁ』とか言うバカがいるのかもしれない。というかいるんだよな。俺の友達が―—。
だが、実際は違う。
アニメのopを大音量で再生して熱唱するわ、勝手に部屋入ってきて本棚にあるちょっとえっちぃ表紙のラノベを見てニヤニヤするわ......。
親に薄い本を見られた時よりもいたたまれない気持ちになる。
ということで、家族と話し合った結果、俺、黒雨蒼(くろさめ あお)は高校一年生になる四月から一人暮らしをすることになった。
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暖かくなってきた三月半ば。俺は、都会の有名な不動産屋に足を運んでいた。
『ラノベ作家になる』という夢を叶えるため、静かな町にあり、集中して執筆のできる環境を求め、いい感じの物件を探していたのだが......。
「お、お客様......こちらの物件はワケありなんです!!私が言うのもなんですが、本当にやめておいたほうがいいんですって!!」
「何でですか!?駅から徒歩五分、近くには商店街があるものの、周りは閑散としているし、何よりもこの値段ですよ!!二階の一戸建てで一万円!!こんな値段見たことないです!!これ程の好物件が他にあるっていうんですか!!」
「一万円の家なんてあるわけないじゃないですか!!その物件
が異常なんです!!ほら、こっちの物件とか」
「いやそれ、五百万円もするじゃないですか!!高校生の懐事情も知らない大人がよく言いますよ!!俺はなにを言われても譲りませんよ!!」
......という感じで一悶着あり、不動産屋から条件付きでこの物件を購入した。よっぽど高い家を買わせたかったらしい。
でも......俺は数週間後、不動産の人が言っていたのと違う意味で、後悔することになる。
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