2. 電波の性質に関する初歩的知識
電波とは電磁波の一種です。電磁波は波長の長さ、エネルギーの大きさ、放射される原理によって、波長の短い順に並べると、ガンマ線、X線(ガンマ線からX線までが電離放射線)、紫外線、可視光線(皆の目で見える光)、赤外線、電波に分けられます。電磁波は波打ちながら飛んでいきます。その波打つ頻度を周波数、波の長さを波長といいます。
電磁波は物質と出会ったとき、吸収されたり、反射されたり、屈折したりします。電波も同様です。とくに原子の中の電子とよく干渉します。例えば、赤外線ヒーターの前にいくと、温かく感じることがあるでしょうが、あれはあなたの体を構成する原子の中の電子が赤外線を吸収してエネルギーを得ることにより、原子全体が熱エネルギーとして赤外線を受け取るので起こることです。
他に電波の一種であるマイクロ波による水分子の加熱が、電磁波と物質とエネルギーの伝達の関係の中ですごく身近なものだと思います。具体的に言えば電子レンジです。食品には大体水分子が含まれますが、これには極性(つまり電気的なプラマイ)があります。マイクロ波により作られた電界(電気的な力を及ぼす空間と思ってください)の変化により、その変化に釣られて水分子があっち行ったりこっち行ったりするので、そのエネルギーが熱に化けます。こうして、食品はマイクロ波によって加熱されます。
レーダーはマイクロ波を使っていて(一部ミリ波を使うものもある)、しかも、電波が遠くへ飛ぶように高出力で放射するようになっているので、一般に「レーダーの前に出てはならない」というのは、あなたの身体がマイクロ波によって加熱され、損傷する可能性があるためです。
そのほかに通信でもマイクロ波を使っています。電子レンジがあんなごつい作りをしているのは、マイクロ波をレンジの中に閉じ込めておく(遮蔽という)ためです。万が一、レーダーやレンジによりマイクロ波がだだ漏れの状況になると、特にWi-Fiが使えないなどの障害が起こります。そのため、電波法でこうした電波を発する機器については規制が設けられているわけです。
また、電波というものは、波長が長いほど透過性がよくなり、波長が短いほど性質が赤外線に近付き、物質に吸収されやすくなります。電波が通信に用いられるのは電波の透過性ゆえ、建物の中にいても通信が可能であったり、極端に長い波長の電波であれば水中の浅い位置にいる潜水艦にもメッセージを届けられるためです。かなり幅広い帯域が通信に割り当てられているため、たまたま使ったレーダーの電波の周波数が他の人が通信で使っている周波数と被った場合、強烈なノイズが走ります。
つまり、電波を何も考えずに使うと通信障害が起こったりする可能性もあるため、現実で軽率にこうした種類の電波を放射するのはやめましょう。総務省の人がすっ飛んできて怒られます。通信用に使う分なら、まあ、要するにアマチュア無線ですね。そうした場合は追加でちゃんと勉強して、資格を取ってください。
しかし、いくら透過性の高い電波と言えど、山や水平線や地平線の向こうに関しては山や海が邪魔になって電波が通っていかないので、必然的に死角が生まれます。レーダーサイトの設置、部隊や艦船、航空機の指揮に関しては、みなでその死角を補い合う形で展開するのがよろしいでしょう。ただ、追記すると、気象条件によって、電波は屈折するので、実際は水平線のちょっと遠くまで飛んでいくことがあります。
それと、さっきからマイクロ波やミリ波という言葉を使っていますが、これは電波はその波長の長さでマイクロ波、サブミリ波、ミリ波、センチメートル波、極超短波(UHF)、超短波(VHF)などなど(もっと波長が長いものがある)に分けられますが、特にマイクロ波の中のバンド(帯域)について次の章で解説します。
【民間人向け】よいレーダーの使い方 双ヶ嶺亜励克斯 @AlexanderNarabigamine
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