異世界転生したしがないOLの乙ゲーライフ日誌

霧影 深月

前編

第1話:突然のお姫様抱っこ

今日もまた仕事でミスをした。


上司には怒られ、取引先には謝罪に行き、今月切腹モナカを買ったのは何回目だろうか……?


家に帰れば、意味わからん彼氏が問題を抱えてやってくる。


「ごめん!ヒナタ!今日もまたバイクで事故っちまった。慰謝料貸してくれ!」


慰謝料なら保険使えよ。

そもそもそれもう何回目?ってか絶対それ嘘だよね?

なんでバイクで事故ってるのに、あんた無傷なの?


もうこんな人生ヤダ。


私はタクミに別れを告げた。


現実で辛いことがあった時、私は乙女ゲームの世界に逃げる。彼らは私に優しくしてくれるからだ。怒りもしないし、暴言も吐かない、タカリもしないし、暴力なんてもっての外。ちょっと落ち込んだ時には、心配し、慰めてくれる。


「あーあ、この世の中が乙女ゲームみたいだったらいいのに……」


そうつぶやきながら、いつものように乙女ゲームの電源を入れた。


私の記憶があるのはここまでだ。


気がつくと私は来たことのない、だが見たことはある景色の場所に立っていた。


ここはどこ……?

私はだあれ……?


そんなことを思って突っ立っていると、突然後ろから何かがぶつかってきた。


いったたた……。


もう一体なんなんだ?


「ワリィ! 大丈夫か?」


頭を押さえていると、上から声が聞こえる。


その言葉に、私は頭を押さえながら顔を上げると、目の前にはちょっとガラの悪そうな、だけど顔の整ったイケメン男子校生がいた。


「あ、いえ、大丈夫です。気にしないでください」


こう言うタイプとはあまり関わらない方がいい。


私は平静を装って立ち上がろうとするも、足をついた瞬間激痛が走り、思わずよろめき、イケメン男子校生に抱きついてしまう。


「あ、すみません」


な……な……なんてこと……!

いきなり知らない人に、しかもちょっとガラ悪そうな人に抱きついてしまった……。


私が内心慌てていると、突然身体がフワッと宙に浮く。


え……?


「捻挫か? とりあえず保健室に連れてってやる」


イケメン男子校生は、私をお姫様抱っこすると、そのまま見知らぬ学校に向かう。


いや、恥ずかしいよ、人前でこんなお姫様抱っこなんて……!


私は恥ずかしさで顔が赤くなるが、抗うまもなく彼はどこかに向かって歩き出す。


え? 私は一体どこに連れて行かれるの?

一体何が起こってるの?


これから私、どうなるの〜〜?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る