宿泊中

 宿泊施設にはそこそこの割合で、必ず埋まっている部屋、がある。

 長期の宿泊客などが存在しない、ラブホテルなどでもそうだ。

 私が仕事で出入りしていた経験の有るラブホテルにも、そういう部屋があった。


 日中の時間ですら、必ず使用中。だが、駐車場に車が停まっている様子はなく、誰も客は居なさそう。

 気になったので、従業員に聞いてみた。


「ああ、あれね。事故物件、とかじゃないですよ」

 その部屋で人死にがあって、使用禁止にしている――というわけではないということだ。


 そもそも、宿泊施設には、住居のように、心理的瑕疵の報告義務はないとも聞く。

 しかし、事故物件で、人が宿泊して何かあったら困るから、というわけでもないのならば、一体どうしてそうなっているのだろうか?


 従業員の彼は言う。

「泊まってるからですよ」


 一体誰が、と聞くと、笑って答えた。

「いや、知らないですけど、なんかが本当に泊まってるらしいですよ」

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