ありきたりな方が


 廃墟や心霊スポット巡りを趣味としている山崎さんに言わせると。

「ありきたりな話が一番やばいんだよ」

 とのことだ。


 何故かと言うと、それは、そちらのほうが、出る可能性が高いからだそうだ。

「よく出来た話とか、本当の話っていうのは、そういう話や事実が先なんだよ。因果でいうと、原因が先ってことだな」


 事故物件などと同じで、例えばその場で人死にがあったから、その話を元に、そこが心霊スポットと化す。だが、そこに必ず出る、かというと、そうでもないのだという。


「だってそうだろう? もしも悲惨な死人が出たところに必ず幽霊が出るっていうんなら、戦争被害があったところや、被災地なんかは漏れなくそうならないとおかしい」


 そう言う場所、を巡るのが趣味なだけあって、山崎さんの言うことには、一定の説得力が有る。

 ここから、ありきたりな話が一番やばい、というところにつながるかと言うと――


「逆だからなんだよつまり。因果の果が先にあるんだ」

 山崎さんは続ける。


「マジで何かが出た、だから、後付でこういう原因があったなら納得できる、みたいな形で話が付けられる。だから、なんか稚拙だったり、ありきたりだったり、なんなら露骨にどっかの怪談のパクリだったりするわけだ。だから、出る」

 山崎さんは笑った。


「あんたの近くにも無い? どっかで見たような、チープな謂れの心霊スポット。そう言うところのほうが、やばいかもしれないよ?」

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