血に染まる
その女性は、いつも包帯を巻いていた。会うたびに色んなところに巻いている量が増える。
一体何故なのだろう、生傷の耐えない職場だとでも言うのだろうか。
とは言っても、聞いて良い事なのかどうか。センシティブな内容なのかもしれないし、傷の中には手首近くのものもあって、自傷やリストカットという可能性もある。
会うたびに彼女の傷は増えていく。
ただ、気になるのは、彼女はいつも輝くような笑顔を浮かべているということだ。
傷は増えているのに。
自傷を繰り返す人や、傷が増えるような仕事をしている人、あるいは家庭内暴力を受けているような人のそれには、とても思えない。
私はついに我慢ができなくなって、彼女に出会ったときに聞いてみることにした。
彼女は笑顔で応えてくれた。
「私ね、最近花を育ててるんだけど」
そうなんだ、という私の相槌に彼女は続けて言った。
「血ってすごく栄養が有るのよ」
花が咲いたような笑みだった。
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