異物混入


 嫌な話ね……まぁ、俺の人生で、とびっきり嫌な話といえば、まぁアレになるかな。

 あんたも聞いたことあるかな、例の事件。俺、その当事者なんだよね。

 例の事件といえば、例の事件だよ。異物混入事件。


 俺が食らったのは、その中でも特別嫌な奴だったんだよ。

 その日、俺は冷凍食品を使って昼飯を済ませようと思ってたんだよ。ウィンナー入りの、トマトスパゲッティ。レンジで簡単に出来るやつ。


 簡単に出来て、美味いよな。俺はもう二度と食う気しないんだけどさ。

 で、レンジにかけて、あっという間に出来て、それを皿に乗っけて。

 いつも通り、おっ、美味そうだな、と思いながら、食ったわけだよ。美味い美味い言いながら、結構な勢いで。


 そうして食ってる内に、なんか食感が違うやつに当たったわけだ。

 ウィンナーかな? にしてはデカいし、なによりなんかパリッとしてない。ぶにょっとして、噛み切れなくて、そのくせに、ガリっと、芯みたいなのがあってさ。


 なんだよこれ、日が通ってないにしても変だな、と思いながら、空の皿に、ぺっとそれを吐き出したんだ。

 自分の口の中から出てきたものを見て、俺は思わず後退ったね。


 なんせ、それ、人の指だったんだもん。細くて長い人差し指。それが、ケチャップに塗れて、俺の歯の噛み跡が残っててさ。

 そう、異物混入事件、混入された異物……人体だったんだよな。


 俺はその中の、指に当たっちまったんだわ。

 嫌な話だろ?


 まぁでも、本当の本当に嫌な話だったのは、そこじゃないんだよ。いや、十二分に嫌だけどさ、知らない人の指食ってたの。

 でも、そんなことよりも嫌なことはさ。


 美味かったんだよ、そのスパゲッティ。俺が人生で食ったもので、一番美味かった。

 ……なぁ、俺どうしたら良いんだろうな?

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