第46話 優しい時間

涼太と來未は結婚が決まって、まだ私や栞とは、一度も会えていない。

きっと会う気になれないのだろう。

だけど、形的におかしいから、いつかは対峙しなければいけない。

招待状はそれぞれの家に届いていた。


栞は寂しそうな顔で、


「涼太・・・。よっぽど許せないんだろうね」


そう言って、招待状に出席の記入していた。私は、頷くことしかできなかった。


ごめん・・・。


心で謝る。誰に?栞に?涼太に?

いや、皆にだ。



涼太と來未ちゃんの結婚式当日。

私は姉として、栞は親友として、披露宴会場へ別々に向かった。


來未ちゃんは本当に綺麗で、幸せ一杯な顔は輝いている。

涼太も、改めてみると大人になっていて、あんなに小さかった子が立派になったことが、頼もしく思えた。


本当なら、新郎友人の挨拶は栞がするのだろうけど、そこは空白だった。


最近の結婚式は色々あるから、友人スピーチがなくても変なことではないけども、私たちには刺さるものがあった。


終始、涼太は私たちどちらとも、目を合わせることは無かった。


もちろん、私たちは違うテーブルに座っていた。

栞は友人席。

私は新郎親族席。


栞は何度かパパやママに話に来たけど、私とは、目を合わすどころか会話はせず、私たちは、必要以上に距離のある態度をとっていた。

私たちが一緒に居ると、涼太の笑顔が曇る気がしたから・・・。


來未ちゃんは気を使って、席札の裏に、


”お姉さん

今日は私たちの結婚式に来てくれてありがとうございます

きっと涼太も同じ気持ちで感謝をしているでしょうが

今日は上手く言えないと思うけど許してあげてください

いつか

皆で笑いながらお食事したいです

                                                        來未”


とコメントを書いてくれていた。今の私には、それだけで十分に嬉しかった。來未ちゃんの気遣いに感謝した。


栞は久しぶりに会った友達の誘いを断り、二次会へはいかなかった。


涼太の為に…。いや、私の為かもしれない。


自分がいると、心から楽しめないのでは?

と、考えたようで。


別々に部屋に帰った。そのあと、私は栞の部屋へ向かった。


どっと、疲れた。

栞の顔を見たら、体全体から力が抜けて、ただ、泣きたくなった。


私は言葉なく、ポロポロと涙をこぼした。


だけど、栞は、何も言わず、

手をにぎってくれた。

その後、私たちは、さっきまでの涙は何なのか?と、思うほどにアッケラカンと、妙に明るく、私はあえて、涼太の話はしなかった。


私たちは、久しぶりにゆっくり過ごす。


最近では、栞は忙しくて、会っていて会えていないような。そんな感じで、


栞は優しいから、気にしていたようで、今日はいつになく甘やかしてくれる。

七つも年の差があるなんて、考えられないくらい

彼は私を包み込んでくれる。


穏やかで、優しい時間だ。

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いつまでも いつまでも 成瀬 慶 @naruse-k

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