第42話 フリーズ

帰国の日。


栞は、家族や友達には、帰国日を一日ずらして報告した。

一番に私と会うためだ。


帰国日には涼太が空港へ迎えに来ると言っていたらしいのだが、一度、自宅に帰ってから両親に会って

それから、うちの実家に挨拶へ行くと伝えたらしい。


その日は家で帰国パーティーがある。

私にも参加するようにと、弟からメールが来ていた。


私は簡単に


”仕事だから

行けたら行くね”


と、返信のメールをした。


彼が帰る日。


私は空港近くのホテルを予約して、彼を迎えに行った。


時間になり、胸が高鳴る。


ドキドキドキドキ。


栞の姿が見えると、私は彼に駆け寄る。栞もたくさんの荷物を押しながら、こちらへゆっくりと歩いてくる。


私たちはやっと会えた。


栞は、手荷物を大きな台車の荷物の上にポンと置いて両手を広げる。


私は満面の笑みで勢いよく抱き着く。

栞はぎゅ~っと、力ずよく私を抱きしめる。


「会いたかったよ」


私は喜びすぎて声が出ない。

うんうんとうなずく。


もう離れたくない。


私は人目も気にぜづに、何度も何度も栞にキスをした。

二人だけの世界・・・。


の、はずだった。


「えっ?なんで?」


その聞き慣れた声は、私たちの世界にぐさりと刺さる様に入ってきた。

私たちは声がする方を見る。


そこに立っていたのは、涼太と來未ちゃん。

二人は化け物でも見たような顔で、こちらを見ている。それはそのはず。明日帰るはずの親友と、それに絡みついている姉。

意味は不明なはずだ。


私たちだって、どうして涼太と來未ちゃんが目の前に立っているのか理解ができない。


四人の時間が止まった。


騒がしい空港は沢山の人がいきかう。私たち4人を避けるように・・・行きかっていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る