第24話 朝
朝が来た。
来てほしくない。
ギリギリまでこの幸せに浸っていたくて、私はベッド中から出れない。
スースーと寝息をたてながら眠っている栞を見つめる。昨晩の乱れた姿を思い出す。初めての行為は、思いのほか事細かに焼き付いていて、ニヤニヤとしてしまう。初めてって痛いと聞いていたけど、全く痛みを感じなかったのは、興奮しすぎてアドレナリンがでてたから?それとも、栞が上手だったから?後者なら、若干ショック。あまり、考えないでいよう。
こんなヘラヘラ顔見られたら、ドン引きだろうな。
”ぴぴぴぴ”
いつもの時間にスマホのアラームが鳴る。その音で栞が目を覚ます。マイペースにゆったりと。
想像していたとおり、慌てることなく、目をこすりながら体を起こす。私の方を見てにっこり笑顔になる。
「悠ちゃん、おはよう」
そう言って、子猫のように私の顔にスリスリと頬ずりをしてキスをする。
幸せ。
幸せ。
幸せすぎる。
目を覚ましたら栞がいなかったらどうしようって、眠れなかった。
栞が目を覚ました時、”やばい”って顔して、後悔したらどうしようって思っていた。
だけど、そんな不安は、それもこれもなく。ただ、幸せしかなかった。
栞がチラッと時計を見た。
「もう7時半だ・・・遅刻だな・・・」
栞のぼんやり、とろりとした表情が、とてもセクシーに思ってしまうのは、快びを知ってしまったせいなのかな?ドキドキが加速する。
ダメダメ。
色ボケしている私に私自身幻滅し、首を横に振り、冷静を保とうと努力する。
すぐに現実が見えてくる。
″ここから一回帰って制服に着替えて学校へ行くのに、この時間では間に合わない。″
「ごめんね。起こせばよかったね。」
という私を、栞は私をぎゅーっと抱きしめて、
「悠ちゃんのせいじゃないよ。」
そう言うと、私を転がすように押し倒し、上からジーっと見つめる。
”恥ずかしい”
目をそらすと、
「もう一回しよう」
にっこり笑って催促。頭の中で蘇る。薄暗い部屋に小さく響く吐息。繊細で優しい手が、唇が、舌先が、どの様に私を緩めたのか・・・。顔に血液が一気に登り、真っ赤になっている事が想像できる。すっぴんだし、寝起きだし、真っ赤っかって・・・好きな人に見せたくない顔してる。私は少しでも栞と距離を作ろうとし、栞の肩に手を当てて突っ張るような姿勢で、
「ダメ・・・遅れてもいかなきゃ!学校。シャワー浴びてきて、何か作っておくから。」
私はベットの横に脱ぎ捨てていた部屋着に手を伸ばしてササッと着た。
栞は少し膨れて私を後ろから抱きしめ引き寄せた。力強い。そして、首元にキスをしたけど、私はあしらう様に立ち上がった。
栞は寝室に置き去りにされた事が不満で、不貞腐れてコロコロしていたけど、私がベッドには戻らない事を察して、シャワーを浴びに浴室へ行った。
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