第22話 告白
栞は部屋へ入っても何も言わない。落ち込んでいるのか?怒っているのか?
どちらにしても意味が分からない感情だ。
私は冷蔵庫から500ミリの炭酸のペットボトルを出して、グラス二つに分ける。白いソファーの前に座る栞の前にそれを持っていき、あえて距離をとる様に向かい側に座った。
「炭酸水しかないけど・・・どうぞ」
手渡すと、栞はうなずいて受け取る。何を思っているのか?何も言おうとしない栞を見ながら、私はグラスに口をつける。
しばらくそんな感じで・・・。
あまり遅くなってしまうと、いくら男の子でも帰りが危ない。そう思った私は、栞から話を聞こうと思い尋ねる。
「今日はどうしてここに来たの?」
栞は顔を上げて私の方を見る。涙でキラキラした目元はいつも以上に綺麗。
真剣に話を聞こうとしているのに、そんなことを思ってしまう自分が恥ずかしくて目をそらす。
「あの人と付き合ってるの?」
小さな声。私は少し考えて、
「まだ・・・まだ付き合っていない。」
そう答えると、栞は膝を抱えてまた黙り込む。何?何を考えているのかがよくわからない。もやもやしていると・・・、
「まだっていう事は、付き合おうって思ってるの?好きなの?」
直球に聞かれると困る。どうして困るんだろう?自分の動揺の意味も分からない。栞は何を思っているのだろう?私は戸惑う気持ちと、お酒が入っていることもあって、いつもより感情的になり、
「何が聞きたいの?栞は私にどうあってほしいの?今日は、何しに来たの?
泣いている理由が分からない?泣きたいのはこっちの方よ!栞が私のところに来るたびに気持ちがグラグラ揺らぐ。何も手が付けられないほどに栞で一杯になる。だけど、何も残らない。すっと来て、ふわっと居なくなって、気が付くとまた一人になってる。夢だったのかな?って、考えさせられる。あなたにとっては何気ない事なのかもしれないけど、は忘れていくのかもしれない。でも、私にとっては、一つ一つ、どれも特別だった。」
気が付いたら私も目から涙が・・・。どうして私、泣いてるんだろう?
感情的に一気に話したから、栞はびっくりしている。
栞は目元に少し残った自分の涙をぬぐり、
「悠ちゃん。そんな風に思ってくれてたの?知らなかった。」
告白のようになってしまったのかもしれない。こんな子供に何言ってるんだろう?栞の言葉に”ハッ”と、させられて、私は赤面する。栞はそっと立ち上がって、私の横にピタリと座りなおした。近い。私の頬に伝う涙を栞は指でなでるように拭う。私は照れてしまって下を向く。
「好きだよ・・・悠ちゃん」
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