第17話 親睦会

あの日、栞は目を覚ますと、何か予定を思い出したようで慌てて帰っていった。泊まる予定が無かったようで、びっくりしてもいた。


「悠ちゃん、ケーキ早めに食べてね。」


そう言ってたな・・・。

小さなケーキだけど一人で食べるには多くて、二日に分けて食べた。


ハイカロリーだったな・・・。太ってしまいそう。


お正月も、実家には帰れなかった。ママが言うには久しぶりに栞が遊びに来たらしい。


「栞ちゃん、久しぶりに会ったらかっこよかった~。ママときめいちゃった!」


そう言って浮かれていた。あれからここへは来ていない。


サービス業だし、まとまった休みは世の中が動き出してからになる。落ち着いたら実家に帰ってみよう。


1月も10日を過ぎて、やっと日常に戻った。


かきいれ時も落ち着いたころ。本社の営業部との打ち上げ的な飲み会が設定された。会社的にも大きいから、全体の飲み会はできないものの、慰労を兼ねた親睦会をチームに分けてすることで、一体感のようなものを作ろうとしているらしく、営業部も忙しいのに幹事として、

総務。

事務。

販売部。

配送部。

など様々な部署の自分の受け持つグループを、グループラインでまとめているそうだ。


私は連携といっても、社交的なタイプではないので、売り場以外でこういった初対面に近い相手との飲み会のような関わりは、実に迷惑で、でも、会社の飲み会はそうそうあるものでもなく、命令に近いものだし、営業の方の苦労を思うと素直に従うよりなかった。


飲み会当日。

結構おしゃれな半個室の洋食店で私たちの飲み会がおこなわれた。


社会人になって外でお酒を飲むことがなかったから、街で酔うのは久しぶりになる。酔いすぎないようにしなくちゃ。


各部署から1から2人。販売部は2人だけど、お店が違うから面識はなかった。仕事が仕事だけに女性が多いのかと思いきや、合わせたように男女の比率は同じくらいで、自己紹介から始まり、まるで合コンのような雰囲気だった。

職場の意見交換から始まり、些細な愚痴、プライベートの趣味など、結構みんな話し上手で時間はあっという間に過ぎた。


「では、そろそろお開きの時間になりました。今日の集まりは皆さんのご協力あってのことで、お忙しい中、お時間際ていただきまして、有難うございました。」


今日の幹事である営業部の男性が挨拶をして、この場は無事に終了した。

私は、飲みかけのグラスを置いて、私はコートを着た。店を出ようとしたとき、先ほど挨拶をしていた営業部の男性がこちらに駆け寄ってきた。


「あの・・・もしよかったら、もう一軒いきませんか?」


その男性は名刺を見せ改めて自己紹介をした。


「僕は営業部の早川 篤史(ハヤカワ アツシ)と言います。27歳です。独身で・・・、彼女が欲しいと思っています。ラインでの丁寧な対応と今日のあなたを見て、もう少し知り合いたいと思いました。今日を逃してしまったら

もうないかもしれないので、勇気を出して声をかけさせてもらいました。」


グイグイ来る感じに、強張りながら、戸惑う。あまり熱量のある人は好きになれない。以前のトラウマかな?グイグイ来る人にスカされた時のショックは、とてつもなく破壊力がある。

だけど、今日は少し酔っている事と早川の誠実そうな物言いに少し惹かれ、

そして、そろそろ私だって彼氏が欲しいと思う気持ちもあって、誘いに乗ることとした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る