第3話 【誰我為《たがため》の祈りと願い・後編】
●【作者】ぐるこ☆(スター)さみん
●【作品タイトル】【
●【男女比率】男2/女性4/不問2/(合計8人台本)
●【目安時間】 約90分。
●【ジャンル】 ネオ・ミソロジカル・ラメント・ダークファンタジー
●【配役一覧】(敬称略)
ナレーション(不問)→
ロキ(♂)→
フェンリル(不問)→
ヨルムンガンド(♂)→
ヘル(♀)→
アングルボザ(♀)→
???(作中、ナナシと判明)(♀)→
──────────────
ロキ
─────
奈落の果てで、
嗚呼、
片目に星を
異形の
"我が
そう言った彼の言ノ葉は凍りついた
温かな"火"を
義兄弟の
それは新たな
孤独の
唯一、許された"絆"だった。
だが彼は知らない。
本当の【真実】を。
刻まれた【
消えぬ"影"の"正体"を。
誰も気付かれない、忘れられた"想い"が
胸の奥で
─────この世は全て【舞台】、
ヒトも神も、
さあ、笑いなよ。
さぁ、
さぁ、目覚めなよ、お寝坊さん。
…………ねぇ、"
その"仮面"の下で
"誰を傷付けている"んだい???
─────それとも……
一体、誰の【台本】を演じているのかな……???
ナレーション
―境界ノ座に咲ク祈リと嘘―
第3 話 【
────
それは白く乾ききった大地の中で
唯一、世界が
肌は透き通り、命の気配もなく、
未完成のまま置き去りにされた"ソレ"は
呼吸も
まるで"世界の底"がそう告げているように。
"色"も"意味"も
"祈る"ように静かに
少女に
"ヒト"の姿をした"ヒト"ではない"ソレ"は
肌も髪も
その静けさは耳ではなく、心に直接触れてくる
冷たく乾いた無音の感触。
ロキの胸には言葉に出来ぬ、違和感が引っかかる。
恐怖でも
痛みの入り混じった"何か"。
そして──────音もなく"ソレ"は振り返り、
ぽつりと口を開いた。
???(囁くように)
「……………………だれ……???」
ナレーション
それは声ではなかった。
言葉にならない
"彼女"と言う存在その"モノ"が"問いのカタチ"を
とって響いてくる。
誰かが
【
ロキ
「……………ぅ…………っぁ…………」
ナレーション
ロキは、小さく息を
その異質な存在に本能は"近付くな"と
頭の中でガンガンと
だが、それと同じ強さで心が"触れてみろ"と
──────触れてはいけない。
──────触れなくてはいけない。
──────だが、触れずにはいられない。
それでもロキは足を一歩、また一歩と進め、
乾いた砂を踏む音がやけに大きく耳に響いた。
まるで自分と言う存在がその音だけで世界に
確かめられているように。
気付けば手を差し伸ばしながら、ロキの口が
勝手に動いていた。
無意識に
あの"声"に、あの"問い"に。
それは笑っているようで、泣いているような。
でも、
包まれるような感覚だった。
ロキ
「……すき………好きだ…………愛してる……」
ナレーション
静かに声にならない想いが 感情の奥底から
その
押し出すように空間を満たしていった。
???
「………すき………???
……すきって、なに………???」
ナレーション
シィンとした
重く落ちた。
空気は張り詰め、時が止まったかのような
ロキは
どうしてこうなったのか、自分でも理解が出来ない。
ただ
けたたましく高鳴り続ける。
──────そして。
ロキ
「…………はっ……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?
な、なななななな、なに言ってんのボク!?!?
い、今のナシ!!!取り消しッ!!!
て言うか、聞かなかった事にして!?!?
お願いだから!?!?ね!!!ね!!!
なんでもするからああぁぁぁぁぁぁ!!!」
(やばいやばいやばい!!!
なんで!?!?なんでなんで!?!?
なんで今それ言っちゃったの!?!?
いや、ボク!?!?ボクの口!?!?
本当に!?!?マジで!?!?
え、感情とかじゃなくて反射神経!?!?
バグ!?神でもバグるの!?!?
ていうか“愛してる”って!?!?
重!!!重すぎる!!!
いや言ったボクが一番重い!!!)
???
「……ん???」
ロキ
「あぁぁぁもうぅ!!なんて言うか、あの…、
その、えっと、勢いって言うか、
ノリっていうか………そう言うやつだよ!!!
そう!!!その場の空気!!!
……嗚呼、説明下手でごめんってぇ!!!」
(やっっべぇ………この空気どうしよう……
誰か助けてぇぇぇぇ!!!)
???
「……すき……って、どんな"カタチ"???
……… どんな"色"……???」
ナレーション
彼女は言葉の
首をそっとかしげた。
その仕草は、まるで
指先を触れた子供のように、
響きだけを頼りに、言葉の"意味"を探している。
一つ一つの音が彼女にとって、
まるで“ハジメテの音"だった。
ロキ
「……え????………えーーーっと……。
色で言うなら……"赤"………かなぁ???
ピンク? いや、そう言うんじゃなくて……。
感覚的なモノって言うか……ってぇ!!!
嗚呼、なんでボクが説明してんだよ、これ!? !?
つーか哲学の問題じゃねーか!?!?
いや恋愛の話だけども!!!」
ナレーション
ロキは両手で頭を抱えたまま、どうしようもない
混乱の中にいた。
感情の渦が言葉に"カタチ"を与える前にその全ては
崩れ散り、意味を失っていく。
その姿を彼女は無言でじっと見つめていた。
まるで、何かとても珍しい生き物でも見るように。
胸の奥にある名も無き問いに、
彼が
その
ただただ静かで、
ロキ(一瞬言葉に詰まり、半ば強引に明るく)
(くそ……完全に沼にはまった……。
もう詰んだわ……うぅ、穴があったら入りたいぃ。
それにコイツ、見た目は良いくせに
なんか変だし……)
「……ま、と、とにかくだ!!!
自己紹介が先だよね?!?
えー……っと………君の"名前"は………???」
???(無表情で首を傾げる)
「…………"名前"……? ??」
ロキ
「う、うん、"名前"。呼び方って言うか……」
???
「……ワタシに"名前"は無いよ…………???」
ロキ(一瞬言葉に詰まりながら、少し引きつった笑み)
「ハハハ…………マジかよ…………………。
そ、そっか……じゃ、じゃあ、仮にだけど
“ナナシ”って呼ぼっか。
とりあえず
……と、ところで
(……何か変だ………。
この子、表情がない………???
呼吸も感じない………。
この子、本当に"生き物"なのか……???)
ナナシ
「………"ナナシ"………うん、分かった。
ロキ(周囲を見渡しながら)
「
でも“黒い月”って言うなら、空にある
あの"白い月"はなんなのさ???」
ナナシ(首を少し傾ける)
「……………分からない……。
気付いたら、
あの光る"白い月"も、
ロキ
(不快感を隠しきれずに眉をひそめ)
「そうなんだ……。
ナナシ
「……無い、何もないの。
ワタシだけが
ロキ
「…………そ、そう、なんだ…………」
(んん???こいつは"神"でも"人"でもない、
"そういう
"
ナナシ
「……アナタ……………神様なの???」
ロキ(ドヤ顔をしながら)
「神かって???ハハ、その通り!!!
ボクは完全無欠のプリティー&チャーミングな
“
騙す為に笑い、笑う為に壊す、
それが“ボク”ってモンなのさ!!!キラ☆!!!」
ナナシ(無垢な目でじっとロキを見つめる)
「………そう……じゃあ…………
アナタは、ワタシを壊しに来たの???」
ロキ(言葉に詰まり、一瞬だけ真顔になる)
「…………あーもう!!なんだよ!!!
めっちゃ
ゔ………そんな目で見るなよ………
なんかボクが悪者みたいじゃないか……。
君を……えっと、ボクはナナシを
壊したりなんかしないよ。
つーか、"名前"ないと不便じゃないの???
本当に"名前"が無いの、君???」
(もう………なんか調子狂うなぁ………)
ナナシ(静かに首を振り、どこか遠くを見るような目で言葉を継ぐ)
「……………うん、"ワタシには何も無い"………。
…………それに"名前"は"優しい"から。
"優しい"と“
だから―─―ワタシは、“ワタシ”のまま。」
ロキ(口元にわずかに笑みを浮かべながらも、目は真剣なまま)
「……へぇ……そっか………。
………じゃあ………君の呼び名はこっちの
都合で
(………何だろう………胸の奥がざわつく……。
まるで自分の中の"何か"が、
"否定"されたような……
いや、違う……"守られた"みたいな……)
ナナシ
「……あ……。
………また………"誰か"が……」
ロキ(目を見開く)
「ん???なんだよ、急にまた、って…っ!?!?な、なんだ? !?!
空間が……
ナレーション
―──―その時、視界が静かに“
誰かがそっと吐息を
風が吹いたような気がした。
けれど
音もなく、時間すら眠るこの"
ただ“彼女”の周囲にだけ、目には見えぬ"揺らぎ"が
静かに鳴いていた。
まるで"封じられた想い"の"名残"のように…………。
──────そして次の瞬間、
彼女は、ふわりと手を伸ばした。
まるで見えない何かを掴むように
細い指先でそっとなぞる。
その仕草と同時に世界に“裂け目”が生じ、音もなく、静かに空間にヒビが走る。
ロキ
「これは!?!?世界の裂け目!?!?
一体何が起きて!?!?」
ナレーション
“裂け目”から、
光と影の粒子が
それは想いの"
記憶の"
─────彼女に呼び寄せられる“何か”。
それは花のように咲き、崩れ、砕けていく。
まるで産まれたばかりの"カタチ"を
美しさと
その
彼女はただ静かに立っていた。
ただ、それだけで
─────世界が、彼女の"声"に“
ナナシ
「……“願い”が来たの…………」
ロキ
「……"願い"………だと…………???
……おい……何を……?!?!」
(何だ!?……"
いや、違う………これは………
"
ナナシ
「……"助けて"って、聞こえたの………だから……」
ナレーション
そして次の瞬間
─────彼女は、ふわりと手を伸ばした。
ナナシ
「────────"叶えてあげる"。」
ナレーション
横たわった姿で骨は砕け、肉が腐り焼かれた
呼吸すら
そっと彼女が手を
命の底に触れるような─────"祈り"があった。
ロキ
「………………………………は???」
ナレーション
触れられた
再び結び直され、裂けた皮膚は静かに
再び
それはまるで原初の願いが叶う瞬間だった。
彼女はその傷付いた
自分の胸元へと抱き上げ、細く震えるその
まるで壊れものを扱うように、 抱き締める。
揺らめく粒子のように舞うその光が、
その全てがゆっくりと
そして光の中で世界を白へと
最後に残ったのは、一つの
その眼差しはまるで。
──────神さえ見落とした"祈り"に
ひと時触れたような、静かな【奇跡】だった。
ナナシ
「良かった……また、生きてくれた………。
さぁ、元の場所へとお
ロキ(低く呟く)
「あ、………あり
な、何だ………今の………?!?!
………ふ、ふざけてやがる………!!!」
ナナシ
「…………どうして???
どうしてアナタは"力"に怒っているの???」
ロキ
「違う!!!!!
君のそれは"力"なんかじゃない!!!
……君は………今の、“祈った”のか???
ただそれだけで………たったそれだけで………
───今……"願い"を"叶えた"のか……???」
ナナシ(ゆっくりと首を傾げ)
「……うん、ワタシは"祈って"、"叶えた"だけ。
温かい"ヒカリ"が欲しいって。
"怖くない"、"悲しくない"、"生きていたい"って……
―────―ただ、"願われた"から。」
ロキ(眉をしかめ、低い笑いを張りつける)
「ハ……ハハハ………。
たった、それだけで……"祈った"だけで
"願い"が"叶った"………???
なーんて………素敵な【奇跡】だよ、
まるで"神様"じゃんか……。
でも……"祈り"って…………"願いって"のはさ……
普通、“
"命"とか、魂"とか、"時間"とか、"運命"とかさ……。
君は……何を"払った"……………???」
ナナシ
「…………"払う"???……どうして???
ワタシは"空っぽだから何も払わない"…………。
ただ誰かの"願い"を"叶える"だけ………」
ロキ(ぞわりと背を走り、低く、唸るように)
「"空っぽ"……………???
………ハハハ……冗談じゃないな、マジで………
…………君は、一体……何なんだ……!?!?」
ナレーション
────ロキはただ、ただ息を
あれは【奇跡】ではない。
それは【祝福】ではない。
【
善も悪も、愛も憎も超えた。
世界が一瞬、静かに
ただ世界の
それはまるで"誰の言葉にもならなかった"、
"誰も触れられなかった"たった
ようやく世界に届いた。
──────永遠の
たった一度の、光の
ナナシ
「……ワタシは…………この"黒い月"。
ワタシは“誰でもないナニカ"。
………そして"願い"を"叶える"……
────“願い”だけは"消せない"から…………」
ナレーション
───────“黒い月”とは神々の手すら届かぬ、
"想い"と"欲望"の果てにある"奈落の果て"。
叶わぬ"願い"が沈み、失った"欲望"が倒れ、
忘れられた"祈り"が
"影"の記憶の"墓標"。
【生者】でもなく、【死者】でもなく。
ただひたすらに、【祝福】すら無い
誰に届くとも知れぬまま、夜より深く、
闇よりも静かに果てしない孤独の中で
"
神の加護にも、人の情にも触れぬ、
世界の背骨を
命を超え、"
生も死も
意志も、怒りも、感情すらなく。
ただ、
ロキ(目を細め、震えた声で)
「……だ、“誰でもないナニカ"、だと……?!?!
なら………
"願い"を"叶える"んだ…………???」
ナナシ(小さく首を傾げ)
「誰かが"願った"から……"叶えて"って……………。
それに………"願い"は…………
─────とても"綺麗"だから………」
ナレーション
────
これは"祈り"ではない。"願い"ですらない。
世界の底で誰にも届かぬまま
神すら
“神”が捨て、“人”が忘れ、"世界"が弾き、
"星"が失くした"
それこそがこの世界に生まれ
【終わらざる月を喰らう
ロキ
(─────こんなモノ、
この世界に
ナレーション
─────それは恐怖でも、怒りでもない。
胸を
何も無い"
………それでも……ロキは彼女から
目を離す事が出来なかった。
捨てられた“祈り”がまるで
────誰かの【心】のカタチに見えたから。
ロキの
ゆっくりと
ロキ
「………ハ、ハハハ……ハハハ…………
アッハハハハハハハハハハ!!!
………なあ……………“ナナシ”ちゃん。
────ボクの"願い"、当ててみなよ………」
ナナシ
「………アナタの"願い"????」
ロキ
「…………ほら……。
君はさ、“願い”を"叶えたい"んでしょ???
なら、次はボクの番だって良いじゃない???
ボクの"願い"が何か君に当てられたら……
ボクが君に一つ"願って"あげる…………。
………ねぇ、どう???」
ナナシ(静かに、でも真剣に)
「………アナタの願い…………。
──────本当に"叶えて"いいの???」
ロキ(不意に笑い声を漏らし、目を細めて)
「……ハハ……それは……どう言う意味……???」
ナナシ
「アナタの中には“
沢山、"酷くて"、でも"温かくて"……
"優しいモノ"が………。
……ワタシには何も“見えない”けど………
何も"分からない"けど………。
でも…………"分かる"…………。
アナタの光と影の深いとこの"何か"が………。
それに…………アナタの"
………とっても────
ロキ(白く細いナナシの手が胸に触れようとして、弾き飛ばし、彼女の首を片手で掴む)
「っ!!??
触んな!!!ボクに触るんじゃねぇ!!!
………何なんだよ、その
君は何も知らないくせに、何も分からないくせに
なんでそんな事言うんだよ!!!!
……………ボクは“
願いも、命も、引き換えにして騙し、
そう望まれて、そうで"
………けど君は……違うよね……………。
“名もない”のに、"何も無い"のに"祈り"を背負って、
“誰か”じゃないのに、“願い”を"叶える"………。
――それって………凄く
…………………凄く気持ち悪い……」
ナナシ(首を絞めてられても何も感じず、首を傾げて)
「気持ち悪いって……どう言う意味???」
ロキ(少し間を置き声を潜めて苛立ちを隠すように首を締める手に力が入る)
「…………君みたいに心が真っ直ぐで
純粋に何も疑わず、問いかける奴を見るとさ……
なんか、胸の奥がざわついて………
イライラするんだよ………。
ボクはさ………"願い"なんて……
もうずっとぐちゃぐちゃで…………。
誰にも見せられないものばかり抱えてるんだよ!!!
ボクの"願い"なんて"最低で最高の皮肉"だから…… 。
君のその“純粋”さがまるで鏡みたいに、
"触れたくないモノ"を、"見たくないモノ"を
ボクを映し出してるみたいで……。
…………だから………気持ち悪いんだ………」
(あれ…….なんでボク……こんな事、言ってるんだ???)
ナナシ(儚げに優しく不器用な笑みを浮かべ)
「…………それでも、"願い"は"願い"だよ。
例え
それはアナタの"一部"だから、
……………だからアナタの"願い"は
──────────とっても"綺麗"だよ」
ロキ(首から手を離し、少し目を逸らしてしゃがみ込む)
「……………うるさい……うる、さいよ…………。
………何も……何も知らないくせに……………」
ナナシ(しゃがみ込むロキの頭を撫でながら)
「……ねぇ………。
…………アナタの"名前"、聞いても良い?」
ロキ(拗ねたように)
「ボクは…………"オレ"はロキ…………
"
まあ……面白い事が好きなだけの
狂った"
好きに……呼びなよ………」
ナナシ(名前を噛み締めるように笑う)
「………"ロキ"……
アナタ、"名前"があるんだ……………。
……"ロキ"……………。
うん……とっても"綺麗"な"名前"………」
ロキ(表情を崩して)
「……君、本当に変な奴…………
でも……ちょっとだけ気に入ったかも、ね…………」
ナレーション
この一瞬にだけ許された
安らぎのような会話の中。
──────ふと、世界が揺らいだ。
遠くで水面が
そして柔らかな時間の終わりを告げる
鐘の
ナナシ
「………あ。もう“時間切れ”だって。」
ロキ
「……"時間切れ"???なんのこ……───」
ナレーション
その言葉と同時に、空間が
白く、何もなかったはずの月の大地に
“黒い泥”が
それはあの時、
ロキ
(これはあの時の!!!???)
ナナシ
「もう、"オシマイ"なんだって。」
ロキ
「ちょ、"オシマイ"って!?!?
ナ、ナナシっ!! ?待っ─────」
ナナシ
「……………さよなら。
───────"またね"、ロキ………」
ナレーション
黒い泥が空間を裂き、世界と記憶の
再びロキが
だが
彼女の声だけが、嫌に大きく耳に響いていた。
────それは
唯一はっきりと残った音。
名も無い少女の優し過ぎるほどに
ナナシ
「───────"またね"、ロキ………」
ナレーション
まるで深く沈んだ泥の底に、乾ききった大地に、
音も無い深海に、
【救い】のようなその声が、酷く眩しかった。
そしてロキは"世界"の底へ
───────音もなく、
「ほい、もう時間やで。──────
目覚めなんし、お寝坊さん。
早よ起きんとまた"迷子"になるで???」
ナレーション
─────黒い泥のうねりが
空間の継ぎ目から、ぐぼっと
まるでペッと
ロキの身体が勢い良くいや、乱暴に放り出される。
放り出されたロキの身体はぐしゃりと顔から
地面に勢い良く叩きつけられ、肺の奥にまで
入り込んだ水気を
全身の骨の隙間にまで
焼け
熱を
ロキは力強く
大きく
ロキ(呻きながら顔を上げ、ぐったりして)
「ぶへぇっ!!!!ゲッホゲッホ!!!!
…………いったたたた!!!!
鼻打ったぁぁぁぁぁぁ!!!!
もう何でこう毎回毎回、出オチ酷すぎんのさ!!!
訴えてやんぞこの野郎!!!」
「お疲れさん。お帰りやで、ロキはん。
"黒いお月さん巡り"は、お
フフフ……大丈夫かいな???
鼻、
ロキ (肩で息をしながら、にらみつける)
「ぜぇぜぇ……
「お
ふっざけんなっ!!!この冷血ドS女神!!!
アンタが出したあの黒いやつに襲われてこっちは
脳ミソの血管ブチブチいってんだよ!!!
………て、めぇ……ホントに………
何をしやがった……!!!」
「はぁ? 何って? そんなん決まってるやん?
アンタを“黒い月”に送ってやっただけやで?
手っ取り早く済ませたんにそないに怒らんでも。
それにほら。アンタの子らが……」
ナレーション
張りつめていた何かが、ついに切れた音のようで。
やがて、地を揺らすような足音が響く。
そして涙と衝動がそのまま強い体当たりとなり、
身体は温かな衝撃に包まれた次の瞬間。
ロキは思いきり我が子達に抱き
盛大に押し倒された。
ロキ(ぐしゃぐしゃに埋もれながら、パニック全開で)
「ちょ、ちょっ!? ?!え!??!
わぁっ!?!?なになになに何事!?!?
なにこれ!? !?
ぎゃあああぁぁぁ!?!?
誰だよ今、
どっから
痛い痛い痛いっ!!! 良い加減にしろっての!!
おい!!!
笑って見てないで、助けろよォおおおお!?!?」
フェンリル(涙目で飛びつきながら)
「うわぁぁぁぁぁぁぁんんんん!!!!
どぉぉぉぢゃあぁぁあああんんん!!!!」
ヘル(足をもつれさせながらも駆け寄り)
「お父様ぁぁ……うぅ、うわあああん……!!!
お゛どぉぉざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヨルムンガンド(声を震わせ、顔をくしゃくしゃにして
「……ぢ、ぢぢうえ゛ざま゛ぁ………。
よ、よかった……ほんとうに………!!!
無事で……本当に……!!!
よ゛がっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ロキ(ぎゅうぎゅうに抱きしめられながら、ジタバタ)
「ぐぇぇぇ!?!?
ちょっ、ちょちょちょ、待って待って待って!?
あのね!? !?
これ抱き締めるってレベルじゃなくない!?!?
これもう組み
プロレス!?!?バトルロイヤル!?!?
日頃の恨みでも誰か入れてる!?!?
うわっ!!!誰だ今ヒジ入れたの!?!?
ぎゃぁぁぁぁあ!!! 骨がァ! !!
父の
……って何でボク、家族に
掛けられてんの!?!?
もう
ギブギブギブギブーーー!!!」
アングルボサ(深いため息をつきながら)
「ったく……どいつもこいつも涙腺、緩すぎだろ。
しゃんとしな、お前ら。
だらしない顔するんじゃないよ、全く。
それに……案外元気そうで安心したよ………
お帰り、ガキロキ。立てるかい???」
ロキ(子供達の腕を解きながら、ゆっくりと起き上がり)
「あ、嗚呼…って………
もう、ガキは余計でしょ………でも、うん……
ただいま、アングルボザ
それにしてもあれ……???
何で……こんなお前達、ボロボロになって……
………部屋中……って言うか、何これ……!?!?
ええええ? !?!
壁どころか天井まで吹き飛んでるし!?!?
床もボッコボコだし!?!?」
ナレーション
見渡せば、もはや「部屋」とは呼べなかった。
大理石の床は
砕け散っている。
柱は根元から折れ、壁も崩れ落ち、煙と
匂いだけが空気に
天井は
ロキが倒れ横たわっていた場所だけが、
唯一かろうじて崩壊を
しかし、周囲を
ヘル(両手で口元を押さえながら、半泣きで後ずさる))
「ひぃん!!!あ、あ、あの、これは!!!
違うの!!!違うのぉぉぉぉぉぉ!!!」
ヨルムンガンド(額に汗をにじませながら、尻尾をバタつかせて必死に弁明する)
「あー…………そ、それはですね……
は、話せば長くなるんですが………。
で、でも!!!ぼ、僕は止めたんですよぉ!!!」
フェンリル(尻尾を縮めてしゃがみ込み、目に涙を浮かべながら)
「あ、えっと、あのね、あの、その……
う、うぅぅ……!!!
オイラ達はわざとじゃないのぉぉぉぉ!!!
わざとじゃないのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ロキ(ドン引きしながら一歩後ずさる)
「いやいやいやいや……
マジで何があったんだよ………???
つーか誰が暴れたの!?!?
いや、そもそも何でこんなに
被害甚大なわけ!?!?
だってボクが覚えてるのは……」
アングルボサ(肩をすくて苦笑して指を指し)
「誰がって……そりゃ“アレ”だよ、あのお方。
……………ま、アンタを取り戻すには、
それなりの“代償”が必要だったのさ」
ロキ(眉を寄せてハッと振り返る)
「……"代償"……??? “代償”ってお前達!!!?
何をした!?!?」
アングルボザ(眉をひそめ、苦々しい笑みを浮かべながら)
「おっと……!?!?な、なんだよロキ……。
アンタが取り乱してそんなツラ見せるなんざ、
ヘヴルヘイムの氷が溶けるより珍しいじゃないか。
……らしくねぇじゃないか。
「嫌やわぁ〜"代償"やないて、
そない物騒でも無いし、悪モンみたいな
言い方されると、困ってまうわぁ。
ロキはんがちょぉっとお出かけしとる間、
お子らが寂しそうにしとったけ、
アタシが遊んだって
なんや
可愛ええなぁ、可哀想やなぁ………。
笑ったろか?笑ったろなぁ………」
アングルボザ(目を細め、低く呟くように)
(……良く言うよ、アンタ………。
アタイ達が本気でぶつかっても、
傷一つ付けれなかった……。
ただの遊びだ、なんて笑ってるが………
その笑顔の奥に何を隠して
ヘル(震える手で胸元をぎゅっと握りしめ、膝をつきながら俯いて)
「ごめんなさい……お父様……。
わえ達、お父様を……助けたかったんです……!!!
でも、わえ、
弱くて……目の前で、お父様があんな風にされて……怖くて、でも……でも逃げたくなくて……!!!」
ヨルムンガンド(肩を落としながらも、おどおどと前に出て、消え入りそうな声で)
「ぼ、僕ら全員で……全力で戦ったんですけど……。
でも、手も足も出なくて……。
何度
それでも……父上様を助けたくて………………。」
フェンリル(涙をこらえきれず、しゃくり上げながら)
「オイラ、……狼なのに……
父ちゃんの子供なのに…何にも出来なくて………。
牙も爪も身体だってこんなにでっかいのに……。
弱くないのに……なのに……
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
ロキ(全身に泥をまとったまま、それでもわずかに口元を緩め、ぼろぼろの姿の三人の頭を撫でながら)
「そっかそっか……お前ら………ありがとな………。
……ボクなんかの為に、そんなボロボロになるまで
戦ってくれて………良く頑張ったな。
お前達はボクの自慢の子供達だ。
ホント………こんなボクには
良い子達ばかりだ………ほら、もぅ、泣くなって。
……この通りボクは平気だよ、
怪我一つしてないから安心しな。
……それにお前らが無事で居てくれるなら……
それだけでボクは十分さ……。
ありがとな、フェンリル、ヘル、ヨルムンガンド。
今回の事は気にすんな、
ホントに……ありがとな…………」
「フフフ……ほんま、えぇ家族やなぁ……
見とるだけで、胸がぎゅうぅっと
締めつけられるわぁ…………。
…………………けどなぁ、ロキはん? ??
"アスガルドの家族ごっこ”がどれほど見苦しうて、
アンタ、よう知っとるやろ???
ちゃーんと演じとったやん、"良き父親"のふりして.
……"あの子ら"に、笑顔まで向けてなぁ…………
………その手で
冷たぁい床に横たわってた、小さな命と
" あん時"のアンタの顔……
でも目は乾いたまんまやった。
……泣きもせぇへん、
─────忘れたとは、言わせへんで……???」
アングルボザ(怒りに震え、歯噛みしながら声を荒げる)
「だ、黙れッ……!!!
部外者のアンタに言われたかねぇよ……!!!
どいつもこいつも、ロキを“怪物”に
仕立て上げてやがって……!!!
誰が!!!誰がロキに……
"あんな選択"をさせたと思ってんだ!?!?
アタイは!!!あの時……!!!
アタイだけは……!!!
……アタイだけは……コイツを……ロキを……
“父親”にしようと……“ただの神”じゃない、
“家族”にしようとしたんだ……!!!
それを奪ったのは……
このクソみてぇな"世界"だろうが!!!」
「…はぁ???アンタ、何言うとるん???
"世界"は
そんなん"最初から分かっとった"のに
今更文句なんか言うんやないよ。
それにアングルボザはんは、"家族"って言うけんど
アンタらが"自分達のエゴ"で
"災厄を背負わせた破滅の
勝手に作って産んで、そいで愛した
殺させた"終末の
減らず口を言うたもんやなぁ………」
アングルボザ(肩で荒く息をし、涙を堪えながら拳を強く握り締める)
「…………っ!!!」
(……分かってる……全部……
"運命"や"世界"のせいになんか出来ない。
アタイがロキを選んだ事も…………
この子達に背負わせた"運命"も……
全部ロキとアタイの"罪"だ……………
でも……でも、それでも……アタイは……。
ロキを“愛してしまった"……!!!
ほんの少しでも"シアワセ"にしたかった、
……ただ、それだけだったんだ……!!!)
ヘル(長い黒髪を揺らし、母を真っ直ぐに見つめ)
「それは……!!!
……わえ達は、お母様の"代償"と
"犠牲"で生まれましたわ……。
その命で世界を変え、ラグナレクを
起こしてしまったとしても……………。
でも……だからと言って、お父様とお母様を
責めたりはしません…………。
そうでしょう、お兄様、フェンリル……」
ヨルムンガンド(低く落ち着いた声で)
「嗚呼、……その通りだよ、ヘル。
僕達は"厄災で
逃れられない"
それでも、僕達は父上様と母上様を誇りに
思ってるんです……だって………」
フェンリル(片腕を握りしめ、力強く)
「だってね!!!家族だから!!!
オイラ……難しい事は全然分かんないけど、
父ちゃんも母ちゃんも大好きだよ!!!
オイラ達の母ちゃんと父ちゃんは
世界に一人しかいないんだ!!!
だから、泣かないで、笑って母ちゃん……!!!」
ロキ
「…………お前達……………」
「……泣かせるなぁ………ほんに誰に似たんやか。
………なぁなぁ、ロキはんや。
アンタは
まだ持っとるつもりでおるん???
アンタが
ホンに
こんな風に愛される事もなく、
嗚呼……けんど、アンタの
あれは“
出来すぎとったわ。
……………せやろ???ロキはん。
アンタはその“罪”の重み、今も肩に乗せたまんま……
ずぅっ痛みと
じわじわ
あれはな、"偶然の
アンタ自身が、"選んだ事"やろ???
──────自分の手で"壊す事"を……………」
ロキ(唇を噛みしめ、目を伏せ、震える声で)
「……全部……ボクが……選んで……"壊した"……」
ナレーション
────まるで花を散らす風のように
扇をそっと揺らしながら
だがその声は
裁きの言葉は
────それは
美しい残酷な処刑宣告。
神が神を
「それはな……アンタが“神”やからやない………
───────アンタが、“
ロキ(顔を伏せ、感情の色を見せぬまま)
「………………」
ヘル(拳をキツく握りしめ、血を流しながら低く怒る)
「貴様………黙って聞いていれば……!!!
その言葉、
うつけの
例え
わえ達のお父様を
絶対に……許さない……!!!!」
フェンリル(目に涙を浮かべながら必死に叫ぶ)
「オイラ……怒ったぞ……… 。
オイラ、怒ったんだからね!!!!
父ちゃんと母ちゃんをイジメる
お前なんか大嫌いだ!!!
オイラの家族をバカにするな!!!!」
ヨルムンガンド(静かに一歩踏み出し、低く唸るように)
「……あまり…僕らの父上様と
母上様を
次にその舌で
その口ごと……噛み千切りますよ……!!!」
神皇産霊神(目を細めてにやりと笑う)
「フフフフ……おぉ……怖や怖や……………。
へぇ~……アンタらがまたアタシと
遊んでくれるんけ???
今度はすぅぐには終わらんと
もっと楽しませてなぁ………」
アングルボザ (ガンッと地面を強く槍で叩き付け)
「…………おやめ!!お前達!!!!」
ヘル
「お、お母様……どうして……?!?!」
ヨルムンガンド
「そんな!?!?
フェンリル
「なんでさ!?!?母ちゃん!?!?
父ちゃんがこんなに言われてんのに
悔しくないのかよ!!!」
アングルボサ (拳を強く握り、静かにしかし強く)
「お黙り!!!
……アンタ達やアタイが暴れたところで、
コイツには指の先、髪の毛一筋だって通じやしない。
力の差は歴然だってさっき分かっただろ。
………それに………
ロキが“止めろ”と
だから、良い子だから
静かにアタイの言う事聞きな………」
ロキ
「……………なぁ……
アンタは……
"ナナシ"をボクに
いや、正確には…"一体何をさせたいんだ"……???
それは……ボクに対する"罰"か? "試練"か??
それとも……ただの冷やかしの"
過ぎないのか……???」
「……ふふ……えぇなぁ……
あぁ、その顔……ええなぁ……たまらんなぁ……。
魂の
ほんに、ええ匂いや。
まるで腐りかけの花を煮詰めた
"希望"と"絶望"。
まだ……何かに
……───────今にも砕けそうな
"
触れたら割れる……けんど放っといても崩れるが、
それでいて踏みつけられても、なお
フフフ……なんて、可愛いらしゅうて
オモロいんやろなぁぁ………。
可愛ええなぁ、
笑ったろか?笑ったろなぁ………」
ロキ(囁くように、喉の奥から滲む声で)
「……アンタは、こうなる事も全部、
最初から見えていたんだろ………???
"ナナシ"がただの"万能の願望器"なんてモノでは
"アイツ"がどんな"祈り"を抱えて、どれほどの
"祈り"と欲"望"を飲み込んで"孤独な袋小路"の中に
"
それでも、“お前達”はああして、"名"も与えずに、
誰も分からず、知らずに"痛み"の中で
―──―"オモロい"って言うんだろ………???
答えろよ、
「……フフ………そやなぁ………
“全部見えてた”やなんて……。
そんな都合のええお手軽な"全知"なんか、
アタシはまだ
……けどな……ロキはんの言う通り。
……"あの子"が、ただの"
とうの昔に気付いとったわ……………。
……あの子は、ホンマにええ子や。
"傷"を見せず、"欲"を語らず、"色"を知らず。
"名も無きモノ"に、"捨てられ弾かれたモノ"に、
"忘れられたモノ"に、"忘れていくモノ"に、
…………誰かの"願い"の為に"祈って"、
ただ、"叶え続ける"………。
そんなもん、
"
……せやからこそ純粋で、
ナレーション
それは春の風に
ふとすれば、背筋をなぞる冷たい"音"に変わる。
優しさの仮面を
穏やかに
まるで、迷子をあやす母のように。
─────
その
井戸のようにそっと覗き込めば、
だが、誰が見抜けようか???
奥底に
その"
───── それに気づいた時には
……………………………"もう戻れない"。
ロキ(震えた声で鋭く遮り、怒りを込めて)
「黙れ!!!!!やめろ……!!!!!
アンタが"アイツ"の"名"を口にするな……!!!
"ナナシ"の"祈り"を飾り物みたいに語るな!!!」
「………はぁ……せやけど、"あの子"はずっと
"名"が無いままで、"祈り"も"願い"も…………。
いずれ風に溶けて、誰の記憶にも残らへん。
それって、ちょっと
…………アンタ、ホンマに"あの子"に
"名"を与える気はあらへんの???
あの
ええと思てるん???」
ロキ(顔を上げて低く、深く、感情を噛み締めるように)
「………………"名"は、"
"定義"であり、"境界"であり、"
…… "名"を与えたら、それは"誰か"になってしまう。
“奪われてしまうモノ"になってしまう。
"アイツ"は………"ナナシ"は 誰かの為じゃなく、
全ての為に"祈って叶え続けている"……………。
それがアイツ自身の、
唯一無二の【自由】と【救い】。
…………ボクは………。
"名前"なんかにしてやられるのは、
もう沢山なんだ…………。
だから………"アイツ"に"名前"なんて……
ボクは与えない。
決して…………渡さない、 呼ばない…………。
……存在しなければ壊れないんだから。
だから────"
ナレーション
しかし背筋に冷たい
─────"名"とは、"
すなわち【祝い】であり、【呪い】。
"定義"であり、"
“名”を与えられたモノは"物語"に"
神々に
やがて"
その重さを知るロキだからこそ、"名"を与える事の
"罪"を知っていた。
それ
まるで
「………せやけどなぁ、ロキはんや。
“名を与える”ってのは、"コインの裏表"よ。
【祝福】と【呪い】が紙一重"の
位置にあるモンなんや。
……"名"を持たんはちゅうんは"何も無い"んと
同義や。
本来、あらゆる"
"意味"が生まれるけんな………。
……このまま"名"を与えへんかったら……
"あの子"は永遠に“何者にも
"神"にも"
“物語”からも忘れられ、語られる事は無い。
もしアンタが
"
きっと"生まれ、目覚める"やろう…………
ホンマもんの“
ロキ(真っ直ぐ目を逸らさず見つめ)
「──────ボクは、
“ナナシ”にボクが見えなくても、届かなくても。
誰にも分からなくても、"物語"に語られなくても。
ボクだけが語ってやる。
だって今でも"アイツ"はボクの胸の奥を静かに
"想っている"んだから………。
…………誰にも、ボク自身すら見つけられなかった
この"最低最高の想い"を誰にも汚させない」
「……さよか、アンタの考えはよう分かったわ。
………………じゃあ一つ。
アンタに聞きたいんやけど、かまんけ???」
ロキ(疑心暗鬼の眼差しを向けて)
「…………聞きたい事???
良いけど……なんだよ……???」
「…アンタ……"あの子"に……。
──────…ナナシに惚れたんやろ???」
フェンリル
「………え!?!?
………えぇぇええええええ!?!?」
ヘル (あまりの驚きで語彙力を無くす)
「な、なななななななな!?!?!?」
ヨルムンガンド
「……………………う、そでしょ?!?!?
あの、父上様が………………!?!?」
アングルボザ(叫ぶフェンリルとヘルの口を塞ぎつつ)
「これ!!!静かにしな!!!」
ロキ(ピクリと肩を揺らし、無理に笑うように俯きながら、乾いた笑いをこぼし)
「………は……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?
な、なななななな、なに言ってんの!?!?
惚れた???ボクが???
"アイツ"に、"ナナシ"に???
な、なに馬鹿な事言ってんのさ、ハハッ!!!
ないないない!!!
そんなの、あるわけないじゃん……!!!
このボクが、
────"
……ハ、ハハッ……ハハハハハ……!!!
そんな薄っぺらな感情、とうの昔に捨てたよ………。
……"愛"だの、"
……………一度もないよ………」
「ふぅん………そうかいな…………
……じゃぁ……… なんでアンタは今そうやって………
───────泣いてるん???」
ロキ
「…………………え………???」
ナレーション
────騙し、
一筋の光が
──────それは"涙"と言う名の"祈り"。
誰にも与えず、誰にも明かさぬと誓った“真実”。
静かに、深く、
それは、己自身が
ロキ(我に返るようにハッと目を見開いて、呆然としたまま、震える指先でそっと頬をなぞる)
「……………え…………???
…………ボクが………泣いてる…………???
……これ……涙……???
なん、で……こんな……なんで……。
熱くて、止まらない……ボク……なんで……
こんなに……苦しいんだよ……???」
ヨルムンガンド
(父上様が………人前で………そんな…………)
フェンリル
(あんな父ちゃんの姿なんて………)
アングルボザ
(ロキ………それは………
アタイがアンタにあの時、
"教えれなかったモノ"じゃないか………)
ヘル
(………お父様……わえでは今の貴方様に
触れれないのですね………)
「ほぉら、見てみ。そやって泣いとるって事は
それだけアンタの心が叫んどる証拠やないけ。
フフフ……アンタ、顔に似合わずに
案外
ロキ(嗚咽が混じりに声を震わせてぎゅっと拳を握り、声を荒げて)
「……………るせぇ…………うるせぇぇ!!! !
うるさいうるさいうるさい!!!!
そうだよ!!!惚れたさ!!!!!
惚れて何が悪い!?!?
この"
……でも……でもなァ……ボクだって………
分かんねぇよ………。
なんであんな奴が、あんなに目につくのか……。
……"アイツ"なんか変だし……何にも知らなくて……
何にも分からない癖に、なのに真っ直ぐで……
放っておけなくてさ……。
気付いたら目で追って、
また声を聞きたくなって………。
胸が、心がザラつくんだよ…………。
苦しくて、痛くて、切なくて、
でも目が離せなくて…………。
……………"アイツ"、笑ったんだ………。
ボクの前であんな綺麗な
何も
この"異端で
"
………だから……ボクは……ボクは……!!!
ただ"ナナシ"に
そう想った……それだけだったのに……!!!
そしたらボクの中で何か、ぐしゃって…音がして……
……知らねぇよ、こんなの……!!!
どうしたら良かったんだよ……!!!
こんな気持ち………知らなきゃ良かった…………」
「それはな……間違いなく"愛"やないけ……。
愛するが
それが"想う"ちゅう事なんやで………。
"想いは重い"モンやさかいな。
そんでも……もし、アンタが、その自分の
"想い"の"重さ"に耐えきれんで手放した時、
"あの子"を抱いてくれる者は
その時が来たら、
アタシが"ナナシ"を
ロキ(頭を撫でられた手を叩き落とし静かに、でも強くかすれた声で)
「………言っただろ、渡さないって……………。
ボクは"アイツ"が………
ボクみたいに壊れるの見たくない……。
あんなに"祈って"、あんなに"叶えて"……
それでも、"何も
…ボクが……全部背負う……。
"アイツ"が本当に望んだ自分の意志を
ボクが"ナナシ"の代わりに
泣いて笑って、地獄ごと抱いてやる……………」
「…………その“
ホンマに背負いきれるんか?
与えらない"あの子"の祈りも、魂も、
"
消えていくだけやのに。
フフ……そう、その顔…… 。
迷い、
そして──────ほんの少しの
それら全部がごちゃ混ぜになって、
アンタのその表情…………
嗚呼、まるで"あん時"みたいやなぁ。
………………アンタが…………
──────【バルドルを殺した】の時と………。
でも、壊れかけの"
なんとも言えん、美しさがある。
………【バルドルが死んだ】時。
……【お前が殺した】ってなぁ……………。」
ナレーション
彼の前髪を掴んで強引にその場に押し倒した。
押し倒され、馬乗りとなった体重と圧に
押さえつけられたロキの胸中には、
恐怖と
そんな彼の事など気にもかけない
指先はそっとロキの首筋に触れ、その冷たさと
柔らかさを確かめるように
彼女のその
憎悪でも
ただ“
全ての罪も愛もこの瞬間に絡め取られるかのように
「───────あの
誰もアンタの事、"欺神"《ロキ》とは呼ばんかった。
家族も、仲間も、 誰一人として………。
フフフ……まさかアンタはそれまで自分の事、
ホンモノの神さんやと思うとったんけ???
そないな"
"誰にも
“何も守られへん”、 “何も
……けどな、それでもアタシはそんなアンタが
たまらなく可愛いくて、
愛しゅうて憎らしくて
好きなんやで…………─────"
ナレーション
まるで
そして強く、片手でロキの首に
再度、
静かに顔を寄せ、乱暴に髪を掴んでいた
もう片方の手でロキの
長い爪先で彼の肉を
その
爪先には冷たい残酷さが
微笑みを浮かべ続ける
自身の舌で舐め取った。
それは"優しさと毒"、"想いと
世界の
魂の底に静かに
だが、──────その時だった。
ロキは
片手で着物の
ヘル(真っ黒なオーラを纏って槍をギリギリと握り締め)
「な!?!?
ななななななな何をなさってるんですの!!??
あ、あ、ふ、ふしだらですわよ、お父様!!!!」
フェンリル
「んー???
姉ちゃぁん、母ちゃぁん、父ちゃんとそいつは
何してるのー???
ヨルが尻尾を巻き付けてきて何にも見えないよぉ」
ヨルムンガンド
「シー!!!フェンにはまだ早いよ!!!
あとヘルはその槍、早く下げて!!!」
アングルボザ(顔を赤らめて、慌てながら)
「アンタ達は見るんじゃないよ!!!
目を潰されたくなきゃ今すぐ塞ぎな!!!」
ナレーション
激しくそして強く。
"
互いに深く押しつけられる
熱い吐息が
それは
【
"神"が"神"を喰らい合う、
─────永遠にも
ロキは絡ませ合った
絡ませ合った互いの舌を
熱を
ロキ(唇を離し血の滲む唇を歪め、喉の奥で笑いを漏らしながら)
「………ククク……あっははははは!!!!!
やっぱアンタ、イカれてんだろ!!!!!
"
そんな顔で笑ってるなんてさ!!!
“ハジマリの女王様”ってのは、痛みすら
お高くとまってるクセに、
ずいぶん
「………へぇ…………やるやん、アンタ…………。
"オモロい"やないけ……。
でも、フフフ………そんな顔で噛みついて来るとは
思わんかったわ」
ナレーション
すると今度は押し倒されていたロキが逆に
顔を近づけ息が触れる距離で口を開いた。
ロキ(低い声で笑いながら不敵な笑みを浮かべて)
「"
無事で済むと思った…………???
"
ねぇんだよ、ヴァァァァァァカ!!!!!!」
「……ぷ、アハハハハハハハハ!!!!
このアタシに手ぇ出して、
そんな
ちっとはヤるようになったやん、"
アンタのその"毒"、ちょっとは"マシ "になったやん。
舌先だけで触れるには………
まぁ、悪ぅない"味"やけど、まだ"三十点"やね。
焦がす覚悟もなしに、アタシに牙向けるとか………
フフ、まだまだ“遊び方”が甘過ぎやなぁ。
アンタみたいなお子様には
また早かったかいなぁ???」
ロキ(小さく舌打ちし、けれど決して譲らぬ目で)
「うるせぇよ、この性格最高最低の性悪女神が。
……………"オレ"は真っ当な"神"じゃない。
"祈り"も背負わないし、【
……………"オレ"は、“
だから、"オレ"が"アイツ"を守る。
……"ナナシ"自身が求める"名前"と
"一番呼ばれたい誰か"に出会うまで、
"名前"を呼ぶ事も、与える事も、誰にもさせない。
この世の誰にも、"お前達"にも渡さない。
─────だって、それが"オレ"の"罪”だ…………
永遠に
「フフ……アハハハハハハ!!!
ホンマ牙を
……………ええで………… 。
次に"あの子"が
"あの子"自身の"祈り"と"願い"、
そして"名付けられない名前"が呼ばれた時……
果たして、どれだけ"オモロい事"になるか…………
アタシも楽しみにしとくわ……………。
せやけどなぁ、"
どんな"嘘
─────
ロキ(軽くニヤリと笑って、
「忠告、ありがとさん………でも…………
──────"
今更無駄って、分かってるでしょ???
"黒い月"ってね……………。
"揺らいで"て、"不確か"で、誰もが
近寄りたがらない"境界"に似てるんだ。
神々のご立派な"
世界の
都合の悪い"空白"の“何か”。
それはもう、グチャグチャで、狂ってて!!
……でも、なんか凄く"綺麗"だったんだよね。
ゾッとするくらい完璧な混沌と理解なんて、
とっくにぶん投げた方がマシってくらいの“真実”。
だから、だからこそ。
"オレ"が動かなきゃいけないんだ。
この
……それが、"オレ"の“宿命”ってやつだから
だから………
────"
ナレーション
────"
声にも
ただ、時の
名も無く、形も持たぬその"祈り"は、
仮面の奥底で、音も無く揺らいで響き渡り、
やがて彼の頬を一筋の涙として
彼が裏切りの続けた
たった一つの"願い"。
それは誰かを信じ、誰かに
────"
ロキ
「───これが"
……………もう、"嘘"は
ナレーション
―境界ノ座に咲ク祈リと嘘―
第3話 【
完
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