第2話 【誰我為(たがため)の祈りと願い・前編】
●【作者】ぐるこ☆(スター)さみん
●【作品タイトル】 【
●【男女比率】男2/女性3/不問2/(合計7人台本)
●【目安時間】 約90分。
●【ジャンル】 ネオ・ミソロジカル・ラメントダークファンタジー
●【配役一覧】(敬称略)
ナレーション(不問)→
ロキ(♂)→
フェンリル(不問)→
ヨルムンガンド(♂)→
ヘル(♀)→
アングルボザ(♀)→
──────────────
ナレーション
───ある
その
【祝福】も【祈り】も与えられず、
ただ世界の"
誰も望まず、誰も見ようとしなかった。
ただ、“
"ソレ"は名前を与えられ、"神"となった。
裏切りを受け、"
笑った瞬間から、"
──────でも本当はただ、
誰かが決めた【正しさ】に叩かれ、
誰かが作った【悪】に仕立てられ、その度に笑い、
涙の代わりに【仮面】を身に
だから、
世界の端を歩く事を。
それは"始まりと終わり"の【影踏み】。
それは美しく、そして酷く、
とても────────静かだった。
「……これでようやく、始められる」と。
───
世界の"
壊してしまえば良いのだと…………。
「────ほな、行ってらっしゃい。
ロキ
「ちょ、待っ、カミムス……!?!?─────」」
ナレーション
―境界ノ座に咲ク祈リと嘘―
第2話 【
あの衝撃の
混沌を巻き起こしたロキは今、
─────
氷と闇の
深紅の
居心地の良い“孤独”に満ちている。
天井の高い
書物と巻物をじっと
神々の歴史、
異界の
………しかし、その
ロキは小さく舌打ちし、 ふと、己の内側に生まれた
ロキ
「はぁ………もぅ、ぜんっぜん分かんない!!!
どれも "黒い月"について
なんも書かれてないじゃん! !!
オーディンのジジィもあれからずっと
帰ってからヘイムダルにも聞いてみたら
「そんなモノは何にも見てない。
知るかクソが。死ねよ、失せろゴミ
言われるし……。
あの見張り番、目ェ
と言うか、口悪過ぎじゃん???
はぁ……もう
ナレーション
机に一人突っ伏して、愚痴を小さくぼやいついると、静まり返った神殿の
破壊音が鳴り響く。
次の瞬間、
ロキの足元にパラパラと崩れ落ちた。
勢い良く吹き飛ばされた扉の向こうから、
まるで嵐のように飛び込んできたのは
ロキの子が一人、狼の子。次男のフェンリル。
そのはしゃぐ姿が、重苦しい空気を一瞬で
そんな彼の後ろからぐったりとした表情で
やってきたのは、同じくロキの子が一人。
世界蛇。長男のヨルムンガンド。
彼は溜息混じりに、そっとロキの肩に
フェンリル(元気いっぱいに尻尾を振りながら飛び込んでくる)
「とぉおぉちゃぁああああんん!!!
今日のご飯ね、すっごいイイ匂いしてるよ!!!
ほら!!!早くみんなで食堂行こーー!!!」
ロキ
「うぉ!?!?うるさっ!?!?
……ちょっ、フェン!!!??
お前また扉壊したのか!?!?
ったく……今回で何枚目だっけ???
つーかご飯てお前な……。
一応神殿なんだぞ
ヨルムンガンド(焦りながら涙目で)
「うああああ!!!
すみませんすみませんすみません!!!
フェンが父上様の気配を感じたら突然バーンって、
壁まで吹き飛ばしてしまって……
父上様、お怪我はないですか!?!?
あぁぁーもぅフェンのバカ!!!バカ犬!!!
あとで絶対説教だからな!!!
これでヘルに怒られるのは僕なんだからなぁ!!!」
ヘル(いつの間にか後ろに立って冷静な低い声で)
「……もう怒ってますけど???
わえの大事な大切な愛して愛して愛して……
愛するお父様の身体に傷を
付けてたら……どうなるか……
…………分かるわよね……???」
ナレーション
静かに場を締めくくるように、
後ろに立っていたのは、冷静さと
彼女は黒いオーラを身に
空気を引き締める。
フェンリル(ビクッと振り返り、しどろもどろに)
「ひぃ……!?!?ヘ、ヘル姉ちゃん……!?!?
いやその……オイラ、ちょっとだけ扉が
邪魔だっただけで……!!!
お、怒らないでぇぇぇぇぇ!!!!」
ヨルムンガンド(泣きそうに)
「フェンのせいだからな!?!?
僕じゃないからな!?!?
ああああ、どうしようヘルが怒ってるぅ!!!」
ロキ(溜め息混じりにぼやきながらヘルには棒読みで)
「……ハイハイ。
とりあえず、ちょっと落ち着けお前ら……。
はぁ……ヘルちゃーん、パパの宝物のヘルちゃーん。
ほら〜ヘルちゃんの愛しのパパは大丈夫ダヨー。
パパの大切な愛しの
お兄ちゃんや弟に酷い事シナイヨネー???
ネー???」
ヘル
「…………大事……宝物………
はっ!?!?……やっ、やだぁ!!!
わえったら勘違いして2人にコラ☆って
ちゃうとこでしたわ☆!!!てへ♡
わえったら勘違いして取り乱してしまいましたわ☆
コホン………二人共ごめんあそばせ。
……で、でもぉお父様がわえを愛しのって……ぐへへ」
ナレーション
ロキの
雰囲気で場の空気がふっと柔らかく和らぐ。
見つめるヘルの姿があった。
その無邪気な
神殿にそっと温かな光を差し込んでいた。
フェンリル(ヨダレを垂らすヘルに若干引き気味に)
「うわぁ……ヘル姉ちゃん……凄い顔してる………。
………あ、忘れてた!!!
あのねあのねあのね父ちゃん!!!
今日のご飯はねー、えっと、うんと、
あのねあのね……あれ?………なんだっけ???
忘れちゃったぁ!!!
でもなんか美味しいやつだよー!!!
あとさっき裏山の
ぜぇんぶ倒しちゃったぁ!!!」
ヨルムンガンド(ロキの肩に乗りながら、ぐったり)
「……そして朝からフェンが暴れたせいで
その結果、
朝イチで報告が来て……
しかもそれ、また僕のせいにされてる……
もうやだ……」
ヘル
「……ハァハァ……今日もお父様の眉間の
シワが1.5ミリ増えてる……最高……マジ尊い……
カッコ可愛すぎ……
お父様……お疲れなら、わえが特製毒抜き風呂で
癒して差し上げますわよ……こ、混浴とか……
ふへ、ふへへ……」
ロキ(軽くイライラしながら)
「………うーん……カオスになってるとこ
悪いんだが………ごめんな、お前達。
ちょぉっと静かにしてくんないかな???
ボク、今わりとマジでお疲れモードなんだけど……
って……ん?何この地響き……???
ハッ!?!?ま、まさか…この気配は……」
ナレーション
そんな粉々に砕け散った扉の破片が
荒れ果てた空間に肩で風を切りながら
踏み込んでくる人物の姿があった。
────その名はアングルボザ。
彼女の怒気は嵐の
空気を震わせるほどに激しい。
静まり返っていた室内は、一瞬にして張り詰めた
緊張感に包まれ、まるで空間そのものが
怒りに
アングルボザ
「……ロキィィィィィィィ!!!!
テメェ!!!またやらかしたなぁぁぁぁ!!!」
ナレーション
その
ロキの肩がピクリと
目は泳ぎ、表情はあからさまに動揺を隠せない。
突然の
たじろぎながら必死に冷や汗を
ロキ(肩びくっ、と跳ねて目を泳がせる)
「うわ!?!?び、ビックリしたぁ!?!?
ど、どうしたのかな………アンちゃん………???
ご、ご機嫌麗しくって………えっと………
今日も今日とて見事にキレてるけど………。
え……な、何で怒ってんの???
……な、何か……あった………???」
アングルボザ(詰め寄る)
「“何かあった?"、じゃねぇよ!!!
このクズロキが!!!
あとアンちゃんって呼ぶな!!!
アタイの事はアングルボザ
ロキ(じりじりと後ずさりしながら)
「は、はいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
ごめんなさぁぁぁぁい!!!すんませんんん!!!
で、でぇ…………アングルボザ
今日はどうしたのかな???
ボク、君を怒らせるような事したっけ????」
アングルボザ
「しらばっくれてんじゃねぇぞ、このクソロキ!!!
お前、昨日の
フェンリル
(耳をぴくぴくさせて、きょとんと目を丸くして)
「んえ??? そうなの父ちゃん???
喧嘩はダメだよー!!!
みんなで仲良くしないとって
狼の群れでもそう習うよぉ???」
ヘル(頬を赤く染めうっとりとロキを見つめながら一歩ロキに近づいて)
「……ふふっ、やっぱりわえのお父様は
誰よりも素敵……♡
お父様が世界で一番なのに……
何で他の
分からないのかしら???
お父様をバカにする神達なんて、
壊れちゃえばいいのに……。
わえが全部壊してあげる……お父様の為に……♡
だから……誰と喧嘩したか、
教えてお父様???今からそいつブッ殺すから」
ヨルムンガンド(巨大な尾をばたばたさせながら、疲れたように)
「はぁ……またやらかしたんですか、父上様???
今度は
今度こそ……ボク、本当に
ロキ
「はぁぁぁぁぁぁ?!?!えええ!?!?
いやいやいや!?!?ちょっと待って!?!?
ボクそんな事してない……と思う!!!
……たぶん!!!」
アングルボザ(目が据わったまま、新聞をバンと机に叩きつける)
「……じゃあ、これはなんなんだよ、
あ゛ぁ゛ん?!?!」
ロキ(新聞をおそるおそる広げて)
「なになに?これ今日の朝刊じゃん???
何が書かれてって……」
ナレーション
ドンッという音とともに机に叩きつけられた
一枚の新聞。
タイトルには、大きくこう書かれていた。
『イズンは見た!? 大波乱の
お騒がせ大炎上神ロキが
そしてその下には昨夜の
立ち去る
蹴り飛ばしながら
ヨルムンガンド(記事を横から見てドン引きし)
「……うわぁ……一面フルカラーで大々的に
報じられてる……しかも相手が
フェンリル(新聞を覗き込みながらキラキラした目で)
「わぁっ!!!父ちゃん新聞乗ったの!?!?
かっこいい顔してるね!!牙めっちゃ出てる〜!!!
すごーい!!!オイラも父ちゃんと一緒に
新聞乗りたい乗りたい乗りたーい!!!!」
ヘル
「……ヤッバ、記事のこの写真、お父様の怒気が
美しすぎて待ち受けにしたい……。
あ、でも違うわ、待ち受け以上の価値が……
これはあかん……強すぎる……。
脳が焼き切れる……そうだわ、いっそ
ロキ(新聞を広げ、わなわなと声を荒らげ)
「……おっふ…………わぁお…………
何これめっちゃ動きのある写真……。
てか、これ絶対狙って撮ってるやつ………
って……あんのくそゴシップ共がぁぁぁぁ!!
それに"イズンは見た!?!?"って何だよ!?!?
つーかこの写真、どうやって撮ったんだよ!?!?
盗撮じゃんか!?!?」
アングルボザ(バキボキッと拳を鳴らす)
「……ロォォォォォキィィィィィィ??????」
ロキ(わかりやすく泣きそうな顔)
「え、いや、待って!?これは、その違う!!
ボクは無実だよ?!?!
ま、まだ椅子蹴ったくらいだし!!!
と言うか蹴った記憶もないけど!?!?
ぼ、暴力は何も解決しないよ!?!?」
「フフ……相変わらずやなぁ、ロキはん。
口先ばぁっかり
でもそう言うとこが、アンタらしくてオモロいよなぁ」
ナレーション
空気を
本来ならば
神殿に足を踏み入れたのは……………。
"
【
ヘル(鋭く、神殿に響く声)
「何者か!?!?
この
一体、誰の許しで足を踏み入れ……何これ!?!?
……この気配………!?!?
“
ヨルムンガンド(吠えるように)
「な、何だ!?!?この空気……!?!?
甘ったるくて、冷たくて暖かくて痛い……???
花の匂いがする!?!?」
フェンリル(低く唸る)
「…………だ、誰!?!?
こいつ……"何だ"………!?!?」
アングルボザ(前に出ようとする子供達を片腕で制し)
「下がりな、お前達……………
アタイが良いと言うまでの後ろから一歩も
動くんじゃないよ。
この
決して"触れてはならぬモノ"さ………。
……アタイ達がまともに触れて良い存在じゃねぇ…
…触れれば、どうなるか………。
…………お前達もタダでは済まないよ…………」
ヘル
「……分かりましたわ……お母様………。
さぁ、お兄様達もお母様の後ろに下がってて………
って、ちょ、フェン!?!?」
フェンリル(アングルボザの背中から顔を覗かせ、キラキラと瞳を輝かせて)
「あれが………うわあぁぁ!?!?
じゃぁじゃぁお姉さんが父ちゃんと新聞に乗ってた、
えっとカミュミィ………。
わぅぅ、噛んじゃったよぉぉ~
……よぉし、もう1回言うぞぉ!!!
んと、
こんにちわ!!!初めまして!!!
オイラ、父ちゃんと母ちゃんが
産まれた次男のフェンリルです!!!
好きな物は父ちゃんの頭を
美味しいご飯です!!!!
よろしくお願いします!!!ガウガウ!!!」
ヨルムンガンド
「こ、こぉんのアホ犬ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!
ばかばかばかばかばか!!!馬鹿野郎!!!!
いきなり何言っちゃってんだよ!!!!
あぁぁーーもぅ!!!
すみませんすみませんすみません!!!
うちのバカでアホな単純頭の
次男が失礼しましたぁ!!!
ほら謝ってフェン!!!不敬だよ!!!」
「あらまぁ、可愛らしい子らやんか。
うんうん、上手にご挨拶出来て偉いなぁ。
良い子には……ほれ、ご褒美のお菓子をやろうなぁ」
フェンリル(尻尾をぶんぶん振りながらお菓子を食べる)
「むぅ~オイラはアホでもバカでも、
犬でもないやい!!!
オイラは立派な狼だもん、ワオーン!!!
え、お姉さん、お菓子くれるの?!?!
わぁい!!!やったー!!!
姉ちゃぁん母ぁちゃん!!お菓子貰ったよー!!!
あむあむ………兄ちゃんも食べるぅぅー???」
ヨルムンガンド(尻尾でフェンリルの身体に巻き付き引きずり)
「何が食べるー???だよ!!!
ちゃっかり餌付けされてるじゃないか!!!
ただの大型犬じゃないか!!!
ほら、早くは、な、れ、な……さい!!!
こっち来いバカフェン!!!」
アングルボザ
「……はぁ……ったく……。
仕方ない子だよ、まったく……安心しな、ヘル。
あれは"敵意"じゃなくてただ単に
可愛がってるだけさ、少なくとも、今は………な。
だからその槍を下げな。」
ヘル
「は、はい………ですがどうやってこの神殿に???
母様の力とわえのルーンの結界が破られた形跡は
見られませんが………」
アングルボザ
「……そう見えるのは、お前達がまだ
“神の間合い”を知らないからだ。
彼女は“真理”そのモノだ。
"真理"の前じゃどんなモノも
"無かった事になる"のさ…………」
ロキ(呆れた顔で嫌味のように)
「…………うちのキッズ達と仲良くするのは
構わないけど……….アンタ、どうやって来たんだよ。
"境界"にすら触れていない。
飛び越えたり貫いたりしたわけでもない。
ホント意味分かんないよね、アンタ。
で???今日は一体何しに来たのさ???
今ボク疲れてるし、忙しいんだよ。
お茶くらい出してあげるから飲んだら帰ってよね~」
「フフフ……ちゃうちゃう。
そないムキにならんといてぇな???
アンタがどれだけ
"黒い月"の事、何一つ見抜けへんかったんやろ?
せやから"黒い月"行けるようにしたろうかな。って
思うとってなぁ。
ずぅとホンマは行きとぅて行きとぅてって
急かす心のままでたまらんくせになぁ……
……嗚呼、嗚呼、なんやその顔、みっともない。
……必死に頭
あげくの果てに
─────知恵も力も足らん子どもが、
自分で
そんなん見てたらなぁ、哀れを通り越して
笑えてしもて……。
ホンマに可愛らしゅうて、可哀想で、
ついつい構うてあげたなったんや。
可愛いなぁ、可哀想やなぁ…………
笑ったろか???笑ったろうなぁ…………。
ホンマに……どうしようもないなぁ、アンタ」
[ロキの独白]
ロキ
────────嗚呼、嫌いだ………。
この
全てを見通したような、あの目。
まるでボクを"駒"か何かみたいに、
転がしてくる。
口先だけは上品で、笑顔の下には鋭い
ヒトの心の"裏"を、コイツは"遊び道具"みたいに
まるで甘い
ゆっくりと投げてくる。
それが……たまらなく
────【
【
"
けれどコイツは、ただ"結んで繋ぐ"だけじゃない。
"切り離す事"にも、"
それでいて笑って言うんだろう。
"可愛いなぁ、可哀想やなぁ"とかって言って………。
気に食わない。
気に食わない、気に食わない、気に食わない。
気に入らない。
気に入らない。気に入らない。気に入らない。
────────けどボクは………
コイツの言葉に逆らえなかった。
───────"黒い月"。
その"名"を耳にした時、
コイツは"知っている"。
ボクが"恐れているモノ"も、
ボクが欲しがっているモノ"も
──────全て"黒い月"にある事を……………。
アングルボザ(思い切りドンとロキの背中を叩く)
「ほらっ!!!
どうせお前、知りたいし、行きたいんだろ???
その"黒い月"とやらに。
ならあとの事はアタイらに任せな。
なぁに上手くあのクソオーディンのジジイには
丸め込んどいてやるさ。
いざとなったらボコボコにして
やったっていいんだし………
だからアンタはさっさと……ほら、行っといで」
ナレーション
アングルボザはまるで母狐が仔狐の尻を
軽くつついて、「さ、遊んでおいで」と
追い立てるような、優しくも手加減のない
声と腕でロキの肩を組んだ。
その
溶かしていくような、計り知れぬ想いの深さが
秘められていた。
ロキの胸の内を笑いながらも、すっかり
見透かしているアングルボザのその
目の当たりにして、ロキは
ロキ(キョトンとした顔で)
「…………は???…………えぇえ!?!?
ちょ、ボクは別に行きたいなんて一言も……
いや、まぁ確かに気にはなるけどさ!?!?
ちょっとだけだからね!?
だからその………あ〜〜〜もう、なんなの!?!?え、神って全員そんな腹黒なの!?!?」
アングルボザ(爽やかに腕組みして遠くを眺めながら、ふっと微笑む)
「あぁん???
バーカ、アタイや子供達に何、気ぃ使ってんだい。
“行く”ってテメェ自身が決めた事なら
アタイ達はアンタの意志を尊重するさ。
これはさ、信じるとかってとは違うんだけど
アタイは誰の手で"道"が編まれるべきかで
口も刃も拳も使うけどよ………
アタイはさ、ロキにとって必要な選択の時に
"ケツを叩くのが今だって”分かるんだよ。
アンタはアタイの【
ナレーション
その一言に、ロキはピタリと動きを止める。
何とも言えない顔で溜息を吐き、
その背中には怒りと困惑。微妙に傷ついたプライド。
だけどその奥、深い場所に不意に光る、
一つの“きっかけ”が芽吹いていた。
それは、興味???懐かしさ???
あるいは………………─────名もない"衝動"。
ロキはぶつぶつ言いながら頭をガリガリと
掻きむしってから小さく息をつく。
ロキ(腕を組み、ふてくされたまま前へ進み出して)
「………チッ……分かったよ……。
……行けばいいんでしょ、行けば………。
あーもう、なんかさ……
ボクは
遊び道具の駒の一個なんだろうね……。
否定できねぇ自分が一番ムカつくけど……
い・ち・お・う!!!頼まれてやるよ。
………それと……ありがとう……。
アングルボザ
「…………フフフ、話は
ほいで早速ロキはんには"黒い月"に
行って貰うけんどかまんへんよな???
長いような短いような所にあるさかい、
色々準備やらほんまやったらいるんやけど。
今回は、アンタを早う"黒い月"に
着けるようにしたったるから感謝したってな。」
ロキ(舌を出して悪態をつきながら)
「うっげぇ、ハイハイ、
でもボク、"黒い月"の行き方とか知らないよ???
だってこんだけ
調べても無いんだし………」
「ああせやったなぁ。これ、そないにしょぼくれて。
………ロキはんはホンマ、変わらないなぁ……
そう言う顔するんのわ。
昔から怒った顔も、困った顔も、
全部、ホンマに愛らしいわぁ。
あの頃からなぁんも変わらへん"意地けん坊"やな。」
ナレーション
その言葉と同時に
すぅと音もなく歩み寄った。
黒い着物の袖がふわりと揺れ、次の瞬間にはもうロキの目の前。
息がかかるほどの距離。
冗談ではなくまるで口付けすら
届きそうなその近さで。
ロキが一歩引こうとするより早く、
にこりと
ウィンクを
ロキ
「は???……何言ってんの???
アンタとはあの時が初めまし―──―って!?!?
な、何!?!?何なになに!?!?
ちょっ、近い近い近い近いっ!?!?
近すぎるだろ!?!?
ちょっと、アンタ、一体何考えて……!?!?」」
(あ、……まつげ、長……それにこれ……
甘い匂い……
目ぇ合った……うわ、ヤバ……!!!)
「……だって、アンタ、行く言うたやん???
……………行って知るとええわ………。
"黒い月"の事も、
自分自身の事も……………。
【可愛ええ子には旅させよ】、やったかいな………」
ナレーション
────そして次の瞬間、そう言うや
まるで、風に舞う
指先で、ふわりとほんの少し、
「トンッ」とロキの肩を押した。
ロキ
「…………………へ???」
ナレーション
ほんの小さな圧と接触。
世界が凍りついたように静まり返った。
風は止まり、光は
されどそれは、世界の
床も空間も一切の区別が
その瞬間、床下が"ぽっかり"と音もなく割れた。
床は消え、空間の
飲み込んだ。
ロキの足元に開かれたのはどろりと揺れる
泥のようで、夜のようで、夢の
不思議な質感。
「────ほな、行ってらっしゃい。
ロキ
「ちょ、待っ、カミムス………!?!?────」
ナレーション
ロキの叫びが終わるよりも早く、ロキの身体は
抵抗する間もなく、声も表情も影に溶けるように
────全てが“
それはまるで、この世に存在したという
神の
【
それは
ヨルムンガンド
「ち、父上様が……き、消えた……???
……………いや、
"落とされた"???」
フェンリル(低い唸り声をあげながら)
「……オマエ…父ちゃんを
ヘル(喉を裂くような絶叫と激情に突き動かされて崩れ落ちるように)
「ぁああああああああ!!!
………あ、あぁ……お前…………
わえの………わえの……わえ達のお父様に
何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!
殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
アングルボザ(一歩前に出て鋭い目で見つめながら、低く静かに対峙)
「落ち着きな!!!気ぃを乱すんじゃないよ!!!
…………
お前さんはこんな
お前さん達、最上位の創世神なら
本来、アタイ達みたいなモンに決して
接触なんかしない
……………そうだろ、天すら届かぬ
"
……………お前さんがこの世界に現れた理由は
ただのロキに対する【興味本位】か???
それとも………─────────」
(大地を踏む音すら楽しむように、にじり寄る足取りで微笑む)
「……… さぁなぁ………
それが【興味本位】かどうか、
知りたいんやったら……………。
ロキはんが戻ってくるまで、アタシと一緒に
───────遊ぼうや……………」
ナレーション
言葉は甘く、響きは静かだがその足音には、
命を削るような圧が
世界の温度が一つ、ぬるりと落ちる。
狂気は声ではなく、呼吸の合間に潜み、踏み出された
その一歩は冥府すら黙らせる“
ヘルの
ただ一人――──
一方、ロキはと言うと………───────
ロキ
「………アイタタタタ……痛ってぇなぁ、もう!!
なぁにすんだあのババア!!
いきなり、このボクをよく分かんない
あの黒い泥みたいなのに放り込む!?
いやいや普通そこは
こう、
一応、ボク、北欧神の中じゃ
偉い神様なんだからさぁ!?!?
せめて事前にアポとか取れよ!!!
優しさって
あのアマァ!!!!」
ナレーション
ロキの叫び声は裏返り気味に響き、床をゴロゴロと
転がりながら派手にのたうち回り、
そして
受けたかのように、
その顔は痛みによる涙か、怒りによる汗か、
もはや区別もつかないまま、目だけは
鋭く
ロキ
「あーもう、肩痛っぁ……
ボクの麗しき完全無欠のボディをなんだと
思ってんだよ?!?!
しかもあいつ笑ってたよね???
「ほな、いってらっしゃ~い」って……
笑いながらさぁ!?!?
あのド変態冷血神、どうかしてる!!!
やってることただの極悪ババアじゃん!!!
あー……ケツ打ったぁ……
ボクのプリチーなお尻に青タンでも
出来てたらマジ許さないんだから……って、
……
ナレーション
──────落ちたのは、天でも地でもない。
"
"奈落"の【
"空白"と
“名も無き渦"、"
上下もなく、左右もなく。
ただ空の"白い月"が揺らめくばかり。
時は
全てが"
"
それは世界の“外”でもなく、“内”でもない。
ただ、
それが、この場所。
────────"黒い月"。
天の
叶わぬ
昼も夜もなく、光さえ
──────もう一つの“月”。
ロキ
「……見渡す限り……なんにもない、か……
真っ白な大地……空も風も音もない……………。
………これ、“果て”すら無いってやつか。
まるで誰かが途中で投げ出した世界の"裏側"。
いや、そもそも“完成させる気”なんて
無かったのかもね……」
ナレーション
ロキは足元の地を軽く蹴った。
空間の中でふわりと浮かび、やがて音もなく
消えていった。
ロキ
「でも"世界の裏側"ってより、"設計ミス"のまま
放置された白いキャンバスって感じだな。
おーい、誰か筆、置き忘れてんぞー???
……なーんてな、返事ある訳ないよね…………。
……進んでも、何かが劇的に変わるとは
思っちゃいないけど……でも……止まってると、
体の奥がムズムズしてしょうがないや。
………あーもう!!!
ボクってば………やっぱ"性分"なんだよな、
こう言うのは」
ナレーション
ロキは何もない白い大地に一歩足を踏み出した。
その踏みしめた大地は
それでも確かに
ロキの
笑みを含んだ"祈り"にも
ロキ
「"退屈"ってのは、"神殺し"よりタチが悪いし、
どうせ誰も起こしてくれやしないなら……
せめてボクが“何か”を始めてやるさ…………。
………さて、こっちが“前”って事で良いかな???
間違ってたら────その時は、その時だし、
世界が壊れるよりは、マシじゃん???」
ナレーション
小さく肩をすくめると、ロキは歩き出した。
何もないはずの世界に確かにだけか彼の足音が
刻まれていった。
"音"の無い空と"色"の無い風が吹く。
けれど、歩みの先に
まるでそれを待っていたかのように
白一色だった地平に"影"が差す。
それはロキの影ではなかった。
まるでカタチを持たぬ筈の"世界"が彼に“
──────── 一つ、"音"が響く。
ロキは足を止め"ソレ"を見た。
それは遠く、
あるいは涙の落ちる音にも
まるで世界が眠りの中で見た、悪夢の
ロキ(眉をひそめ、じりじりとゆっくり一歩ずつ近寄る)
「人間……? ??
……いや………これは"どれとも違う"……???」
………"こいつ"一体………………"何だ"???」
ナレーション
───────彼が"ソレ"と出会う前に
一つ、お客様に語りましょう。
それは彼が"
"アスガルドを地獄に変えたあの日"の事を。
───────"彼"の話をしよう。
これは一人の記憶の
火のように鋭く、声無き叫びを放った話である。
その
永遠に、
誰にも届かぬ声を上げるしかなかった。
神々が隠し続けた“真実”を。
────────あの日。
アスガルドの
大いなる宴。
神々の笑い声が空に、大地に
神々の宴の席の中、"彼"は"家族"の
だが、祝宴の中で語られた"彼"の言葉は
“冗談”と呼ばれ、
それは"冗談"などではなかった。
ただ、誰もが言えなかった。
言葉にするにはあまりに正しく、
あまりに残酷な"真実"だったから。
"彼"が放ったその一言は宴を
─────────"地獄"へと変えた。
"彼"の全てを切り裂き、
神々はそんな"彼"から目を
"彼"は決して
"災厄"を産む
─────"彼"の心から流れたのは血ではなく、
流れたのは神々への“敬意”そのモノだった。
それでも"彼"は笑った。
それしか"残されていなかった"のだから。
涙の代わりに
"仮面"の奥に、誰にも見せぬ"傷"を抱いて。
"
神にも人にもなれぬ、
偽りを踊る“道化”の神として。
───────そして今。
宴が終わったあの日のように、
忘れ去られた“想い”との再会とかつて誰かが
捨てた"祈り"のような、"世界"そのものが
"彼"は再び笑うだろう。
それは
"名"も無く、"カタチ"もなく、
ただ
彼が知らなかった自身の痛みに触れる
かくも切ない"色"を。
だがそれはまだ───────誰も知らない。
────
遠い記憶の残響に導かれ、
"名を持たぬ想い"の"
―境界ノ座に咲ク祈リと嘘―
第2話 【
完。
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