クズの視点で追っていく謝罪行脚の果て、気づけば抜け出せない箱の底
- ★★★ Excellent!!!
倒産してしまった小さな企業の元社員が、迷惑をかけた社内外の人々に謝罪して回っていく様子を描く本作。
それなりにうまく世を渡ってきたはずの主人公・逸見さんが、倒産の主原因を作った冴えない同期・前追さんの世話を焼きながら、さまざまな人の元へと後始末に訪れます。
一見するとロードムービーのような構造の本作は、人間の醜さや卑しさ、世の中の無情を描き出していきます。
クズキャラの造形に定評のある作者さまが、今回はなんとクズ側の人を主人公に据えて物語を綴られました。
こういう捻くれたタイプの人が、どんなふうに物を見るのか。一人称視点で切り取られていく人間関係や物事の状況に、ものすごい説得力があります。
親切のように見せかけて実は悪辣で底意地の悪い逸見さんに対し、前追さんの愚鈍なほどの純粋さと善性が際立ちました。
何が視界に入って、何を見落とすのか。
何かを良しとする判断基準がどこにあるのか。
持って生まれた性質に加え、それまで辿ってきた生い立ちによって、人それぞれ違います。
正反対と言える二人の謝罪行脚の果て、逸見さんはどんな景色を見るのでしょうか。
巧みな筆致で紡がれる、リアルな人間模様。
このざらついた読後感は、なかなか味わえるものではないでしょう。
苦い読み口の物語をお好みの方におすすめしたい作品です。