第11話 乱舞
「アズキ先輩はまぁいいです。残り2人! まず100号ちゃん! なんですかそのキャノン砲は!? ロールはスカウター、偵察機だよね? 隠密系だよね!?」
他のゲームで言うと
「左様でございまする! 自分は影に紛れ、機を見て砲撃を狙うつもりです!」
「……スカウターは重量軽減の拡張パーツ装備できないから、キャノン砲を抱えると機動力が相当に落ちちゃうんだよ。重装系の武装使うならボマーじゃないと……うーん、でも隠密行動から不意打ち砲撃は面白い形ではあるかなぁ……」
美咲のスタイルには渋々納得する姿勢を見せる結。だけど、
「あの、ヒバリ先輩……メリケンサックって……メリケンサックって……!」
「あたしの愛用武器はいつだってコイツさ。このゲームじゃ『ナックルバスター』って呼ぶらしいぞ」
「これは
「当てるのが難しい分、1撃の重さはすげーって書いてあったぞ。任せとけ。梓羽……じゃない。アズキ以外に喧嘩で負けたことは無いんだよあたしは」
「現実の喧嘩で銃火器を持ち出す人が居たんですか!!」
ごもっともなツッコミだ。
やっぱり結が居るとボケとツッコミのバランスが良くなるね。
「まぁまぁいいじゃん。私達は素人チーム、真っ当なスタイルじゃ経験者相手に勝ち抜けないよ。こういう変則的なチームスタイルの方が定石に慣れている経験者には効く。そうでしょ?」
結を説得する。
火針も美咲も型に嵌めず、自由にやらせた方が光るタイプだ。ここは好きにやってもらった方がいい。
「……一理あります。わかりました。アズキ先輩のアドバイスに従います。それにしてもチーム射程が短すぎますけどぉ~……」
結は腕時計のような端末から電磁キーボードと電磁スクリーンを出し、何やら私達の情報を打ち込んでいる。ふと覗くと、【攻撃・生存力・機動・支援・指揮・射程・脳波感度・脳波強度】の8項目を評価し、レーダーチャートで表している。きっと部活のメンバー達もこうして分析していたんだろう。
「お! さっそく敵ですよ!」
現れたのは機械のサソリだ。名は『スコーピオンZ』。人間のサイズはある。それが3匹。
結は慌てて宇宙船をデータ化させ、アイテムポーチに収納する。
「ちょうどいい。腕試しだ」
私は双銃を抜き、メカサソリに向かっていく。
「待ってください! スコピは最初の相手にしては強いです! それも3匹相手なんて無茶です!」
無茶で結構。構わず進む。雑魚をいくら蹴散らしたとしても、自分の力は測れない。
サソリは両手のハサミを射出する。私は背中のスラスターに意識を集中させ、スラスターからエネルギーを放出する。
(加速しろ)
スラスターで加速し、迫りくる2つのハサミの間、中央を突破する。
「尾の針に注意してください! 喰らうと麻痺ります!」
サソリはすぐさまハサミを再生させる。私は双銃で胴体を狙うも、ハサミで防御された。サソリは尾を伸ばし、その麻痺毒を持った針で私を狙う。横にステップを踏み、尾を回避。また胴体に向かって撃つも、ハサミにガードされる。
(あのハサミ硬い。けれど、ここまで必死に胴体を守るってことは、そこは脆いんじゃない?)
また射出されるハサミ、そして伸びてくる尻尾。どれも最小限の動きで躱し、接近する。
「動作をコンパクトに……」
「危ないぞアズキ!」
左右から、2匹のサソリが同様のコンビネーションを繰り出してくる。私はその全てを躱し、狙いを定めていたサソリの背に乗り、その頭蓋を狙う。
「さようなら」
私のハンドガンは引き金を引いている限り連射するフルオートマチック。弾を連射し、頭を粉々に砕く。サソリはポリゴンになって消え、その跡には銀のアタッシュケースだけが残った。
(この銀ケースがドロップアイテムかな)
私が芝生に着地すると同時に、右からもう1匹のサソリが尾を伸ばしてきた。避けられる、けど、私は避けない。なぜなら尾は私に届く前に弾かれるからだ。
「ちっ!」
尾の針は金髪の拳闘士によって殴り飛ばされた。
「油断大敵!」
「ヒバリが防いでくれるって信じてたんだよ」
「それはそれで
ヒバリは右拳を突き出す。サソリは右のハサミでガードする。ヒバリの右拳のメリケンと、サソリのハサミが衝突する。
「弾けろォ!!」
ヒバリが叫ぶと、メリケンからエネルギー波が放出され、サソリのハサミが弾けた。
(あのメリケンサック……真ん中に放出口がある。あそこから高出力のエネルギーを放出したのか)
そのままヒバリはサソリの頭を左拳で押さえ、
「
サソリの頭を爆ぜ飛ばした。
残り1匹が私に向かって突進してくる。けど、すぐさま
「むほぉ! これは凄い威力ですね!」
四つん這いの状態で美咲は両肩のキャノン砲から煙を吹かしていた。
「100号ちゃん。別にキャノンは立ったままの姿勢でも撃てたんじゃ……」
「こっちの方が安定する気がします!」
……こう見ると、確かにイロモノと言わざるを得ないチーム編成だ。
「みんな個性的なプレイスタイルなのに……上手くいってる。あはは! このチームには今までの常識は通用しないや」
どこか嬉しそうに結は言う。
「これ、開けてもいい?」
アタッシュケースを指さして聞く。
「はい。それぞれ倒したスコーピオンの銀ケースを開いてください」
開いてみる。
・ダメージパーツ×1
・修理キット×1
・スモークグレネード×1
・250チップ
修理キットは回復アイテム。スモークグレネードは煙幕的なやつだったはず。チップはこのゲームで使えるお金。わからないのは……。
「ユイ。このダメージパーツっていうのは?」
「それは簡単に言うと武装を強化するアイテムです」
「じゃあ、私のこの銃も強化できるの?」
「できません。ウェポンネームに
「わかった。あと……」
私はステータス画面を開く。
「レベルが3に上がってさ、ステータスポイントってのが6ポイント入ったんだけどコレ――」
「待ってください先輩! ……レーダーにプレイヤーアイコン多数! これは……!」
「やぁやぁ新人の諸君」
平原を囲う森から、多数のスペースガールが現れる。
全員が金色の頭巾とマントを装備している。中でも3人、明らかに纏うオーラが別格の女子がいる。
「我々は
「お断りします!」
結が真っ先に断る。
「ほう? なぜかな?」
「PKアーミー金兵党……悪い噂しか聞かない盗賊団です。相手にするはずがないでしょう」
「やれやれ、嫌われたものだな……では仕方ない。戦争といこうか」
スペースガールの数は50といったところか。全員が武装する。
恐らく指揮官クラスと思しき3人が、前に出る。
「ウチはアルファ!」
「あたしはベータ!」
「私、ガンマ」
「我ら三姉妹!
飛び出してくる金布の集団。
「初心者の内にウチらの恐ろしさを身に沁み込ませるんだ!!」
私は一歩前に出て、
「ヒバリ、100号、ユイ。3人は固まってディフェンスに専念して」
金布の兵士が私を倒そうと飛び出してくる。
「アズキ、お前1人でオフェンスをするつもりか?」
「無理ですよ! 相手は全員がレベル40以上のチームです! 火力特化のヒバリ先輩や100号ちゃんの武器ならともかく、威力の低いハンドガンは通用しません! 1度合流して私の武器を――」
「いらない」
私は双銃をガンホルダーにしまう。
「……武器が無いなら、奪えばいい」
私は近づいてきたサーベル使い2人に接近し、2人のサーベルの持ち手を捻り、サーベルを手放させ、そのサーベル2本を拾って二刀流で両者の首を裂いた。
「え?」
「わたしたち、やられた――?」
「久々に……」
首を切り離されたスペースガールの背中からアサルトライフルを奪い、右手で連射。後続のスペースガール2人を弾で削り、サーベル2本を左手で投擲。胸の中心を穿つ。
「なん……!?」
「うそでしょ!? 死ぬ……!?」
――4キル。
「踊り狂おうか」
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