海翔彩虹伝聞(アマカケルアヤシニジノキキヅタエ) ~島嶼連邦録(シマジマノツラナルクニノシルシ)~
と〜まなさん
第壱章 始まりの始まり
第壱章第壱部 *マユンの誕生*
第1話 ◆コッチャ家
☆当作品を読みに来て下さってありがとう!!
題名の読み仮名をここに入れておきます。長くてスミマセン
あまかけるあやしにじのききづたえ~しまじまのつらなるくにのしるし~
ぜひまた来てくださいね☆
~
*** マユンの誕生 ***
◆コッチャ家
奈落の底を見たことはあるだろうか。
ごく平凡に生きている人なら、あまりにも辛い現実を比喩的に表現することはあっても、実際に目にすることはないはずだ。
地獄とか九泉とか国によって言い方は異なるが、好んで行きたい素敵な場所じゃないことは確かだ。
そして、死後堕とされる場であるという点も共通しているように思う。
死後に行く場所ではあるが、なぜか真っ暗闇という印象はない。
地獄の業火が燃えていたり、魔の蒼い炎が揺らめいていたり、その場所なりの灯りの表現があるからだ。
こんなことを言いたくなる事態に陥ったのは、春にしては暑く寝苦しい夜だった。
細長い半島の中でもまだ温暖な地域に住んでいた私達家族が、程なく北方にある
ともかく、その時の私は奈落の底にいるのだと意識していた。
いや、今まさに奈落に落ちようとしているところだったのかもしれない。
初めは、遠くに黒い小さな点が見えた。それが見る間に蛇となり、今や背中まで迫って真後ろに巨大な壁を作っている。
むしろ光沢さえ感じてしまうその黒いモノは、背中から私に張り付こうとするように、どんどん巨大化していた。
そうして、深淵を覗くような闇にぺったりと包まれて、私の全身は呑み込まれようとしていた。
あれに捉われたら何にも見えない聞こえない……に違いない。
闇のどろりとした粘りが、手に喉に顔に纏わり付いて来た。
「タスケテ」という声が声にならない。自分の身体さえ不確かに思える真の闇に呑まれてしまう。怖い……
逃れようのない絶対的な恐怖。そんなもの相手じゃ、震えるしかないじゃない。
その時、一閃、闇を払った声があった。
「おかあさん!」
第一子とも第四子とも異なる、もっと幼い女の子の声だった。
目が覚めた。夢だったのだ。
ぐっしょりとかいた汗が、髪も服も肌に縫い留めていた。
多分、じわじわと忍び寄ってきたあの深い闇の恐怖は忘れられないだろう。
それでも、こんな恐ろしい夢をみたことに捉われていては、日々を生きていくことが出来ない。
何とかして忙しさの中に埋没しようと試みた。
ところが、私は再び、そして今度は長期に渡って夢に苛まれることになった。
続く
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