第5話:再度の説得と決裂
数日後、ミレーヌは再び父の執務室を訪れた。今度は、薬草学の書物を何冊も抱えて。
「父上、これらの書物をご覧ください。薬草学は単なる趣味ではありません。人々の命を救い、苦痛を和らげる立派な学問です」
彼女は興奮気味に書物を開いて見せた。
「この『北方薬草録』によると、雪蓮花は高熱を下げる効果があり、多くの人命を救ってきました。『東方薬草大全』には、様々な薬草の組み合わせによる新しい治療法が記されています」
公爵は困ったような表情を浮かべた。
「ミレーヌ、お前の情熱は理解できる。しかし、現実を見なさい。お前は女性だ。薬草師として独立して生きていくことがどれほど困難か分かっているのか?」
「でも、挑戦してみたいのです」
「挑戦?」公爵の声が厳しくなった。「お前が失敗した時、誰が責任を取るのだ?お前には家の名誉もかかっている」
「私は家の名誉を汚すつもりはありません。薬草師として成功して、ローラン家の名を高めたいのです」
「十分だ」公爵は立ち上がった。「来月、ヴェルデン公国のアルフレッド様がお見合いのためにいらっしゃる。それまでに、薬草学への執着を捨てなさい」
ミレーヌは唇を噛んだ。父への愛情と、自分の夢への情熱が激しく葛藤していた。
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