わたしの愛した音楽を

29曲目 雰囲気だけ読み取って欲しい

タイトル：ポストシェルター

歌：弦巻マキ

作詞・作曲：稲葉曇

URL：https://www.youtube.com/watch?v=kYwB-kZyNU4&t=1s

初聴：現在

蓬葉No：1899

蓬葉階級：——／6つ星　

　ポストはあの赤いポスト。シェルターは避難所。

　この曲は、「手紙」目線の曲ということになるでしょう。

　Bメロの歌い方が面白いです。

　1番では基本的に一つの音で歌われています。

　一方、2番では、1番でハモリとして入っていた音程で歌う。まるで、言葉に色がついたかのようです。

【なかなか読めない漢字は飛ばして　雰囲気だけ読み取って欲しい

余分に切手を貼って　溢れちゃいそうな言葉を書き足せるように】

　1番Bメロの歌詞です。

　どこか作者の言葉のようにも聞こえます。

　これを読んでいる方は、文章を書く人が多いでしょう。そのとき、どのようなことを考えていますか？　自分の思いが届けばいいと思うでしょうか。

　当然かもしれません。けれど、私の場合、どこかわかりつくされてほしくはない気持ちもあります。だからあえてわかりづらく書いてみる、ということもあります。けれど、そのときも「わかってほしい」という気持ちもある。つまり曲中にあるとおり

【雰囲気だけ読み取ってほしい】

　わかってほしいけれどわかってほしくないという矛盾した考えですね。

【明日、明後日、声になっていますようにと願ったよ】

　これは1番サビ、また曲の締めの歌詞でもあります。

　言葉は、届いてこそ声になる。これはあたりまえのようにも思えますが、興味深いことです。つまり、言葉は話し手だけに主導権があるわけではなく、聴き手がいなければ意味がないということ。これは、ある意味で厳しいことです。一人でいるしかない人だって、この世にはいるのですから。

　けれど、その場合でも、自分が自分の言葉の聴き手になれば、どうでしょう。少しは気が休まるかもしれません。

　以前紹介した40㍍P「ハートブレイク・ヘッドライン」の歌詞に、「あなたが誰かを愛すことであなた自身が救われるなら　その清き愛はこの世界を変えるかもしれない（……後略）」とあります。これはいろいろなところに転用できる気がします。

「ポストシェルター」の文脈を踏まえるなら、「あなたが何かを伝えることであなた自身が救われるなら　その言葉はこの世界を変えるかもしれない」となるでしょうか。世界とはなかなかオーバーですが。

　稲葉曇さんといえば、「ラグトレイン」が超有名曲となりました。私の偏見ではありますが、現代ボカロを作った方の一人と言えると思います。

　ポストシェルターのMVは一枚絵ですが、他の曲同様、ぬくぬくにぎりめしさんがイラストを担当されており、つながりを感じさせます。

　私は今年の前半ほど曲を聴かなくなってしまいました。この曲はその中で聴いた、数少ない曲であり、ピアノや笛の音がなかなか心にしみる印象です。

　なお、曲自体は3年前らしいです。