花天月地【第24話 第三の星】

七海ポルカ

第1話



 夜が空けた。


 辺りが白み始めている。


 司馬懿しばいは寝台の側に置いた椅子に寛いだ姿で腰掛け、頬杖をつきながら、寝台で眠る青年の白い裸の背を眺めていた。

 ようやく眠りを許されて寝台に沈んだのは少し前だから、今日は半日は起きないだろう。

 司馬懿自身はやるべきことが山のようにあるのだが、妙に静かで心が落ち着く朝だった。

 それでいて何か……望んでいた季節がやって来たかのような高揚感も感じる。


「……。」


 辺りが白み始めたことで、窓辺に置いた鳥籠の鳥が目覚めたらしい。


 ピチチチ……と可愛らしい声で鳴いたが、

 生憎司馬懿は、鳥には全く興味がない。



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 やがておもむろに立ち上がり、そこにあった掛け布を青年の身体にかけてやると、その名を呼んだ。すぐに背後に気配がする。


 振り返らないまま司馬懿は命じた。


「先だって甄宓しんふつ殿を迎えるために長安ちょうあんの宮殿で行われた、夜宴に集まった顔触れを全部調べろ。特に末席に座っていた人間が知りたい。必ず確実な情報を持って来い」


「かしこまりました」


 短く返事が返り、すぐに気配が消えた。



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