見守り幼なじみの恋
雪月すず猫
プロローグ 幽霊少女のおめでとう
夜の22時にとある少年が住む家の屋上で、白いワンピースを着た12歳の少女が祈るように鼻歌を歌いながら、ふわりふわりと屋上に足をつくかつかないかの、ぎりぎりで宙で歩いている。
そこへ、脚立を伝い屋上を目指して登ってきた少年がまだ肌寒さを残すこの春の夜に声を上げる。
「よっこいせっと」
―――それはとてものんびりした緊迫感のない慣れた声だった。
その声にふわりと歩いていた少女は足を止め呆れたため息をついた。
「また来たの?」
その呆れた声にその少年、高校を卒業した18歳くらいの溌剌した顔つきの男はむくれ顔で答える。
「来るに決まってるだろ?」
「いいけど、危ないよ?家の屋上なんて」
何回このやりとりをしただろう?と少女はやれやれと肩を落としながら、ゆっくり長い黒髪をさらりと風に揺らせ、小首を傾げながら優しく少年、裕也に笑いかける。
「だって、お前、夜の10時、俺の家の屋上にしか現れないだろ!」
裕也は仕方なく笑いかける自分より小さな少女に駄々っ子のように言い放った。―――少女が目を離したら消えてしまわないように。
「まぁね、それが『私』だから。それから、高校卒業、おめでとう。あんた、モテんだから、沢山告白されたんじゃないの?」
少女―――夏菜子は複雑な笑みを浮かべながら、裕也を煽るようにふとしゃがみ込んで肘を足につきながら裕也に訊ねた。
「うん、前に話した葉月莉緒菜(はづきりおな)さんと付き合うことにした…」
裕也も複雑な面持ちで笑いながら、観念したように夜空を仰ぎ見、ため息をついてから、夏菜子に視線を合わせて答える。
夏菜子は黒目がちの目を瞬かせて、優しい儚い笑みを浮かべて頷いた。
「―――そっか、やっと、だね」
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