第4話
第八章:奇跡の生還と新たな取引
雪が積もった斜面のおかげで、佑真は運良く命を取り留めた。意識を失いながらも、かすかに遥の名前を呟いていた。
洞窟では、遥がヤホホに必死に懇願していた。
「お願い、佑真を麓の病院まで運んで。そうしたら、私は喜んであなたに食べられるから」
遥は心からそう思った。
ヤホホは興味深そうに遥を見つめた。「ほほう、男のために自分の命を差し出すか。面白い取引じゃな」
「佑真は怪我をしているの。このままでは凍死してしまう。あなたなら、一瞬で麓まで運べるでしょう?」
ヤホホは少し考えた後、頷いた。「よかろう。だが、約束を違えれば、お前だけでなく、その男も食べるぞ」
「分かった。約束する」
ヤホホは巨大な身体で佑真を抱え上げ、風のように山を駆け下りた。遥は洞窟で一人、佑真の無事を祈りながら待った。
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第九章:森の約束、未来への希望
二日が経過した。
佑真は病院で治療を受け、意識を取り戻していた。遥のことを探そうとしたが、
山は大雪で封鎖されており、救助隊も入れない状況だった。
一方、洞窟では遥がヤホホと向き合っていた。
「約束の時が来たな」ヤホホが言った。
ひょいと遥を持ち上げると、ヤホホは遥の左手をがぶりと噛みちぎった。
「あがーーーーーー」遥は叫んだ。
ヤホホは傷口を瞬間冷凍し、止血した。
「おおお、久しぶりの人間の味はたまらんわ」
「暗い…」遥はつぶやいた。
最初は貧血で目の前が暗くなったのかと思ったがそうではないようだ。
ヤホホは言った、「ん、森のことか?!よく分かったな」。
そう、暗い森は、下層植生が育たず、生物多様性も維持されない。さらに、過密状態で育つ木は、隣の木が近いため、根をしっかりと張ることができず、木としての成長が遅くなるのだ。
「おばあちゃんが言っていたの。人間は森がなければ生きていけないって。森を大切にするんだよって」
ヤホホはひとしきり考えて、言った。
「お前の左手を食べて申し訳なかった。森を甦らせてほしい。お願いします」
「もちろんよ」遥は力なく微笑んだ。
ヤホホは、遥を抱き、高速で近くの緊急病院へと向かった。
山の精と戯れ 奈良まさや @masaya7174
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