ふつうで善良で愚かな私たちへ

がしゃむくろ

序文

 私がこれから書くものは、現在への悔恨であり、過去への怒りであり、未来への──もしこの国が再出発できるのであれば、そこで暮らす人たちに向けた警笛である。


 2045年、朽ち果てた日本列島のある場所にて、これを記す。


 ※※※


 どれだけ年月が経とうと、どれだけ技術が発展しようと、どれだけ歴史が積み重なろうと、人間はいつも過去を忘れ、同じ轍は踏まないと決意しても、いつの間にか血で汚れたその道に戻ってきてしまう。自分が自分であることを忘れ、でっち上げのアイデンティティの中に魂の自由を閉じ込め、独善的で粗暴で幼稚なペテン師に権力を与えてしまい、繰り返さぬと誓ったはずの悲劇を自ら招き入れる。

 それは私自身のことであり、そして、あなた達全員のことでもある。

 

 ※※※

 

 以下は過去に起きたことの著述であり、なるべく客観的な視点を心掛けた一方で、当時の私自身が感じたこと、考えたことをそのまま記述した箇所もある。よって明らかな事実誤認、差別表現なども散見されるが、ありのままを書き残した方が資料として価値があると判断し、不適切な表現をあえて使っていることをお断りしておく。

 なお、必要と思う箇所には適宜註を入れている。

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