口うるさい専属メイド その2
「つまり、ステラ様はお暇だから冒険者へとおなりになったとっ!そう言うことなんですねっ!」
「はい……、そうです……」
あたしの部屋で仁王立ちとなっているアリアに対し、あたしは床に正座させられ、アリアによるお説教を受けていた。
「危険です!ステラ様っ!冒険者なんてものをやっていて、もし万が一の事があったらどうするおつもりですですかっ!?」
「そこはほら……、クロトがいるから大丈夫かなって……」
「ステラ様甘いですっ!兄様と言えど男なんですっ!もし何かの拍子にステラ様へと欲情して押したおされないとも限りませんっ!」
「クロトに限ってそんな事は無いんじゃないかな~って……。それに、自分で言うのもなんだけど、あたしは胸もないし、剣の訓練ばかりで身体も筋肉質だから女としての魅力には欠けてるかな~とも思うし……」
「ステラ様は自己評価が低すぎますっ!」
あははは、と苦笑するとアリアに一喝され、あたしは面食らった。
「で……でもクロトから『お前は男みたいだな』って言われた事あるし」
あれは確か、あたしがまだ幼い頃の話ではあるけど……。
「そういう問題ではありませんっ!男は皆野獣なんですっ!ちょっと隙を見せて、人気のない森の中に連れて行かれたら最後……ステラ様は兄様の毒牙にかかってあんな事やこんな事をされて……。ああ……おいたわしや、ステラ様……っ!」
アリアは泣き崩れる素振りをしながら床へと突っ伏すと、「よよよよ……」とあからさまな嘘泣きをしていた。
そうは言われても、もう既にクロトと二人きりで森に行ったわけだけど、それを言うとまたややこしい事になりそうだから、言わないほうが良さそうね……。
「アリア……。それはいくら何でも飛躍しすぎじゃないかしら……?」
「いえ!男は皆ケダモノなんですっ!ステラ様はもう少し男というものを警戒すべきですっ!それにステラ様は嫁入り前の御身!もしもの事があってからでは遅いのですよっ!?」
アリアはそう言うと顔を上げキッと睨み付けてくると、その顔にあたしは思わずたじろんでしまった。
「いや……でも……」
「それに、警戒すべきは兄様だけでなく他の男性冒険者達もですっ!親しげに近づいてきたと思ったら、人気のない路地裏に連れて行かれたステラ様……。その後は複数の男性に手籠めにされて……ああ……っ!おいたわしやステラ様……っ!!」
「あの……、アリア……?」
「そ・れ・で・も!ステラ様が冒険者を続けると仰るならば……!このわたくしが兄様に代わって付いて行きますっ!危険は魔物だけではありませんっ!ステラ様に男共の魔の手が伸びて来てからでは遅いのですっ!」
アリアは両腰に手を当てて胸を張りながら宣言した。
ダメだ……、今のアリアに何を言っても聞いてくれない。
決して彼女は悪い人じゃない。
寧ろ、あたしのことを一番に考えてくれている。
だけど、それがあまりにも熱が入りすぎるとこのように暴走をしてしまうのだ。
「分かったから、もう好きにしてちょうだい……」
「分かりましたっ!では早速兄様にその旨を伝えてまいりますっ!」
諦めにも似た口調であたしがそう言うと、それに満足したのかアリアはあたしの部屋を去っていった。
「なんか……どっと疲れたわ……」
まるで嵐が過ぎ去った後のような自分の部屋で、あたしは項垂れていたのだった……。
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