口うるさい専属メイド その1
お城へと戻り、クロトと別れたあたしは、まるでスパイのように人目を避けながら自分の部屋を目指していた。
そのおかげか、幸いなことに今のところ誰にも見つかってはいない。
(もう少しよ……、あの角を曲がって真っ直ぐ進んだらあたしの部屋よ……)
抜き足差し足となぜ自分のお城なのにこんな泥棒みたいに進まないといけないのかと思わないこともないけど、今のこの格好を見つかったら色々と面倒なことになりかねない。
特にあたしの専属メイド!
彼女に見つかろうものなら間違いなく理由を求められた上にお説教が待っているに違いない。
あたしは周囲を警戒しながら最後の角を曲がると誰かとぶつかりそうになった!
「わあ……っ!?」
「きゃあっ!?」
突然の出会い頭にあたしと、その相手は思わず尻もちを付いてしまった。
いたたた……、角もきちんと確認しておくんだったわ……。
尻もちをついたところを擦りながら相手の顔を見ると、そこには今最も会いたくない人がいた。
(げ……!アリア……っ!)
「申し訳ございません、わたくしの不注意で……、て、あら……?ご無礼を承知の上でお尋ね致しますが、もしかして、あなた様はステラ様ではございませんか?」
「き……気の所為よ……!あたしは断じてステラ・ムーン・トリエステではないわよ……!」
あたしはまじまじとこちらの顔を見つめてくる彼女から顔を背けながらいそいそとこの場を後にしようとするも、時既に遅かった!
「あぁっ!やっぱりステラ様ではありませんかっ!いったい本日はどこにいらしていたんですかっ!?城の者総出で城内をお探し致していたんですよっ!?」
アリアは仁王立ちとなりあたしの前に立ち塞がる。
彼女の名前は「アリア・ローランド」。
クロトの妹で、黒髪のポニーテールとあたしよりも
胸のサイズでいえば、あたしがBで、アリアがE。
少しどころじゃないと思ったそこのあなたっ!あとでお仕置きをしてあげるから訓練場に来なさいっ!
コホン、話は逸れたけど、アリアの歳は確か24歳で、あたしの専属メイドにしてクロトよりも口うるさい幼馴染でもある。
クロトの妹と言っても、正確には義理の妹であり、幼い頃にどこからか連れてこられたとクロトが言っていた。
「そ……その……、今日は急用があってお忍びで街の視察に……」
あたしはアリアの追求から逃れるように目を彼女から逸らしながら尤もらしい事を言ってみる。
「街の視察っ!?ステラ様!そのようなお話は聞いておりませんっ!おおかた暇だからお忍びで街へと繰り出していたのではありませんかっ!?」
「うぐ……!」
しかし、アリアに図星を指摘され、あたしは思わず言葉に詰まってしまった。
相変わらず鋭いわね、アリアは……。
「どうやら、図星のようですね」
すると、アリアは呆れたようにため息を吐いた。
「そ……それは……その……」
あたしはなんとか言い訳をしようとするも、いい言葉が思い付かない。
「ステラ様っ!いくらお暇だからと言え、勝手にお忍びで街を散策されるのは危険です!もしも、賊に拐われでもしたら、どうなさるおつもりなんですかっ!?」
「それは……その……」
「それに、ステラ様はご自分のお立場をもっとよくご理解してください!あなた様はこの国の第三王女、ステラ・ムーン・トリエステ様なのですよっ!?もし、賊に拐われでもしたら国王ご夫妻やエルト王子が悲しまれるんですよっ!」
「そ……それはクロトが一緒だったから大丈夫かなって……」
あたしは咄嗟にクロトの名前を口に出すと、アリアの目つきがさらに険しいものへと変わっていくのが分かった。
「はあ……!ステラ様はわたくしの兄様とご一緒だった訳ですね!本当はいったい街へと何をしに行かれていたんですかっ!?本当のことをお話して頂きますっ!」
「分かったから、あたしの部屋でもいい……?」
だ……ダメだ……、アリアの追及からは逃れられそうもない……。
観念したあたしは、アリアを自分の部屋へと促すとそこで全てを自白する事にした……。
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