砂上の楼閣-湖東事件の真相
龍玄
第1/5話 冤罪・湖東事件・疑わしき遺体
北山杏奈は、軽度の知的障害や発達障害があった。取調官の誘導に乗りやすい「供述弱者」だった。怯えているのか考えがまとまらないのか取り調べは、警察の描いたストーリーの様に運ばなかった。杏奈が柳沢徹刑事にだけ、笑顔で接するのを見て好意を抱いていることを察知するとそれを利用して、弁護人は簡単にこの件を片付けたいだけだ。このままだと一生ここから出られなくなる。私を信じて、悪いようにはしないから、と雑談交じりにジュース、ドーナツ、ケーキ、ハンバーガーなどの飲食物を提供しながら信頼関係を含め、弁護人との関係を破壊していった。
杏奈が供述を変えたり曖昧にすると「逃げるな」「「そんな弁護士を信用するな」と柳沢取調官に言われ、このままだと差し入れが貰えなくなり、柳沢にも嫌われると言いなりになるしかなかった。
供述を変える杏奈に対し、自白を維持させるために起訴後も頻繁に柳沢は、取調べを行い、「公判で否認しても、弁護士に言わされたもので、それは自分の本心ではない」という検察官宛ての手紙を書かせていたことが後に問題になり、死因も再鑑定の結果、疑問が炙り出され、判決内容が変更されたものだ。
その事件とは…
2003年(平成15年)年5月22日午前4時30分頃、滋賀県愛知郡湖東町(当時)の湖東記念病院で、入院患者の虎沢重吉(当時72歳)が心肺停止状態になっているのを、当直の見上鏡花看護師と看護助手の北山杏奈が発見した。虎沢は約7か月前に心肺停止状態で湖東記念病院に救急搬送され、一命は取り留めたものの植物状態となり、人工呼吸器で生命を維持している状態だった。
虎沢の死から1年以上が経過した2004年7月2日、任意で取調べを受けていた杏奈は、取調官の柳沢刑事に対して、人工呼吸器のチューブを外して虎沢さんを殺害したと自白し、同年7月6日に殺人罪で逮捕された。杏奈の自白は、虎沢さんの殺害方法について目まぐるしい変遷を繰り返していた。しかし、最終的に人工呼吸器のチューブを約3分間外して窒息死させたという内容となっていた。検察官は、杏奈の自白に基づいて、同年7月27日に殺人罪で起訴した。
取り調べで得た自白内容には、取調官の強引とも言える誘導や看護助手である北山杏奈が知り得ない情報があった。
取り調べを行った柳沢徹刑事は、亡くなった虎沢重吉さんの写真を机に並べ、「何とも思わないのか」と杏奈を攻め続け、取り調べに迎合しやすい杏奈は、「これは無理だ」と認めたが、柳沢は裁判ではそのようなことは一切なかったと証言している。
また、杏奈が最初に発見した時、人工呼吸器の管が外れていた。杏奈は三根山浩一医師に報告した。三根山医師は虎沢さんの司法解剖を行い、人工呼吸器の管の外れなどに基づく酸素供給欠乏が一義的な原因であると判断し、鑑定書を作成した。さらに看護師藤原佳代は、虎沢さんの異変に気付いた時、人工呼吸器のアラームはなっていなかったと証言していた。杏奈も鳴っていなかったと証言していた。
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