Ⅲ.炎

Ⅲ-12.ジンとソーイ①

「ナナナが、死んだよ」


 部屋にいたオパエツに伝えると、オパエツは「すまなかった」とだけ言って、ナナナの遺体を引き取った。


 テネスには「マレニは死んだ」と伝えた。テネスにとってはそれが真実だと思ったから。


 テネスは「マレニが死んだんだね」と改めて私に確認した。私は黙って肯いた。


 自分の部屋に戻った私は、空のまま立っているイーゼルに、持ち出した絵を載せた。


 底面に付いた土がぽろぽろと床に落ちる。


『僕の中から、段々マレニが消えていくんだ』


 その気持ちは痛いほど分かった。


 私の描いたナナナは、どこか歪で、でもそれが今の私の中のナナナだった。


「っ……」


 一瞬、胸に針が刺さったような痛みが走った。


 明日はナナナの部屋とマレニの部屋を掃除するついでに、自分の部屋の掃除もしよう。

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