I-2.きみと踊りたいのさ③

 ジムパフォーマンスはCGGの所属メンバーが次々に出てきて、リングの上やその周りで音楽に合わせた集団演武を見せていった。


 頭に向けて蹴り上げられた足を、軽やかに躱したダンサーが次のひと蹴りを隣のダンサーに向ける。躱し、蹴り、躱して蹴る。それぞれがくるりと回って、大きな歯車機構のように全体が像を結ぶ。


 あっという間にジムパフォーマンスは終わって、会場は万雷の拍手喝采。興奮は最高潮に達していた。


「凄かったけど、ヨッカいた?」

「ヨッカは今日の主役だ。控え室で体を温めているんだろ」


 ナナナの質問に、オパエツはコーラを啜りながら答えた。


 オパエツの言うとおり、このあとはメインバトルで、一対一のグレイズダンスバトルが始まる。今日はヨッカにとって、そしてCGGにとって大事な試合だった。


 ジムパフォーマンスのメンバーが完全にリングからいなくなると、いよいよ照明が落ち、歓声が上がった。


 リングの上にスポットライトが落ち、ひとりの半裸の巨漢がマイクを持って立っていた。CGGのボス――シャーマだ。


「皆様お待たせしました。最高にエキサイティングなジムパフォーマンスのあとは、爆・最高にファンタスティックなグレイズダンスバトルをお届けします!」


 真っ暗な観客席から上がる歓声。


「本日のメインバトルは、新興グレイズジム『摩天』のCGG式洗礼バトル! 摩天は私の元教え子アーグァが開いたグレイズジム! アーグァの教え子もまたアーグァのような美しいグレイズを見せてくれるでしょう! 試合形式は1on1の三回戦! 二本先取したチームの勝ち! 摩天はどこまで爪痕を残すことができるのか! 早速選手入場!」


 向かって左側の入り口にスポットライトが当てられ、花道がリングから順にライトアップされていく。摩天の選手が三人、並んで入場する。


「あっ」


 その中の一人は私たちにも見覚えがあった。電車で私にぶつかってケロッとしていた少女だ。


「テネスって言うらしい。継続年数2年だから、イヨと同い年?」


 ナナナは摩天の入会募集チラシの中から、テネスに関する情報を見つけて教えてくれた。


 並び順から見て、テネスは二戦目の挑戦者だった。


 CGGの選手もスポットライトと共に入場する。三人の選手の中で、二戦目はヨッカだ。私は心の中で、ヨッカに私の仇を任せた。

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