仲間の最強魔法使いに全部持ってかれた勇者だけど、主役の座はまだ諦めてない!

富樫モブ

序章

プロローグ

 魔王が世界に戦線布告し、開戦からすでに半世紀の時が過ぎていた。


 神託と王の命により、王都を出発したボクたちは魔王討伐の旅に出た。

 険しく、厳しい道のり。

 数多の困難や出会いと別れ。

 互いに助け合い、支え合い、成長していく。

 ――そんな旅になるはずだった。……はずだったんだ。


 ⸻


 魔王六将軍の一人〈攻防のガガンダ〉。


 全身を黒鉄の鎧で覆い、一歩一歩が大地を揺らす。

 手には、数々の英雄を屠ってきたであろう巨大な剣。


 “攻防”の名に恥じぬ豪傑。


 そんな存在に、ボクたちは今、挑もうとしていた。


「リティアは回復魔法の準備を!」


「ダランさん、ルーシーはボクに続け! アルベルトさんは魔ほっ……ん? あれれ?」


 アルベルトは、見たことも無い巨大な魔法を即座に形成し、〈攻防のガガンダ〉を瞬時に蒸発させた。


 眩い閃光のあと、轟音とともに砕けた破片が虚空に散る。

 熱気が空気を歪ませ、周囲は白く立ちこめる蒸気と焦げた匂いに包まれた。

 煙がゆらりと立ちのぼり、視界を覆う。


 一瞬の沈黙のあと、誰かが呟く。


「……あいつ、一人でいいじゃん」


 誰もが、あの言葉を“聞かなかったこと”にした。

 でも、全員が理解していた。


 あのとき、すべてが変わったのだ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る