追放された鑑定士、実は最強のスキルを隠してました 〜役立たず扱いされた俺、ダンジョンで拾った猫が神獣で人生逆転〜

@ruka-yoiyami

第1話 お前のスキル、"鑑定"なんて役立たずだろ

「ルーク、お前は……今日限りで、パーティから外れてもらう」


静かな森の奥、魔物の残骸を前に、リーダーである勇者リオンは冷たく告げた。


「……は?」


思わず耳を疑った。俺、ルークは"鑑定士"としてパーティに加わっている。

前線には立たないが、モンスターの情報分析、罠の察知、アイテムの真贋など、地味ながらも役に立っていると信じていた。


「急にどうしたんだよ、リオン」


「もう決まったことだ。お前のスキルは"鑑定"だけ。それじゃあ高難度ダンジョンは攻略できない。今後は"真の仲間"だけでやっていく」


隣で頷くのは聖女マリエと槍使いのガイル。俺と一緒に旅をしてきた仲間だった。

その目は、どこか冷めきっていた。


「貴様がいなくても、アイテムは俺たちで確認できるし、罠も気をつければ問題ない」


「そういうこと。あんた、邪魔っていうか……正直、もう足手まといなのよね」


「…………」


何も言えなかった。


確かに俺のスキルは《鑑定》ただ一つ。

レアスキルでもなければ、戦闘力があるわけでもない。

けど、それでも必死に貢献してきた。

地図を作り、罠を見抜き、毒を検知し、武器の真価を見極めてきたのは、俺だ。


「今までありがとう。報酬はちゃんと渡す。じゃあな」


金貨の袋が投げられ、俺の足元で乾いた音を立てた。



その夜、俺は焚き火の傍に一人いた。

……くそ、悔しい。

けど、仕方ないのかもしれない。

実際、俺のスキルは"鑑定"だけ。誰よりも、それを一番わかっていたのは自分自身だ。


「……違うか」


小さく呟く。


俺の《鑑定》は、普通の鑑定じゃない。

レベルが上がるにつれて、徐々に気づいていた。

視えるのだ。相手の本質、未来、さらには——進化の可能性まで。


スキル名こそ《鑑定》だが、本質は【未来視】と【スキル強化】を兼ね備えたもの。

それを知られれば、利用されるだけだと思い、隠してきた。


「……結果がこれ、か」


俺は、ただ信じたかっただけなのかもしれない。

仲間を。人を。幼馴染だったリオンさえも。


そのときだった。


「ニャー……」


低い鳴き声が、暗闇から聞こえた。

振り返ると、黒く艶やかな毛並みの猫がいた。

その体は傷だらけで、明らかに魔物に襲われたばかりのようだった。


「おい、大丈夫か?」


俺はすぐに駆け寄り、持っていた回復ポーションを分け与える。

猫は俺の手に触れると、一瞬だけ光が走った。


「……なんだ、今の?」


《鑑定》を使ってみる。猫のステータスが、目の前に浮かび上がる。


【神格存在】ネブラ

種族:神獣(封印中)

属性:空・影・運命

スキル:《千里眼》《契約》《時喰らい》《世界の調律者》


「…………は?」


思わず目をこする。


神獣……? いや、そんな存在が、なんでこんなところに。

封印されているとはいえ、とんでもない力を秘めている。

スキル構成が、もう完全に規格外だ。


「……おまえ、ワタシの真の名を"視た"か?」


突如、猫が口を開いた。

その声は、低く、どこか女神のような響きを持っていた。


「……喋った……?」


「"鑑定"とは、面白いものだな。ワタシの封印の奥まで視た者は、おまえが初めてだ」


猫は立ち上がり、俺の目をじっと見据えた。


「ならば、契約するぞ。おまえに力をやろう。

ワタシを封印から解き放ち、新たなる"運命"を共に見よ」


その瞬間、俺のスキルが変化した。


《鑑定》→《全能の目(オムニスコープ)》へ進化

効果:万物を視通し、未来・過去・虚偽・成長性・確率など、存在にまつわる情報を網羅的に分析可能



俺の中で、何かが弾けた。


捨てられた。裏切られた。でも——


世界は、俺を見捨てていなかった。


ならば、始めよう。

俺と、神獣ネブラの、逆転の物語を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る