追放された鑑定士、実は最強のスキルを隠してました 〜役立たず扱いされた俺、ダンジョンで拾った猫が神獣で人生逆転〜
@ruka-yoiyami
第1話 お前のスキル、"鑑定"なんて役立たずだろ
「ルーク、お前は……今日限りで、パーティから外れてもらう」
静かな森の奥、魔物の残骸を前に、リーダーである勇者リオンは冷たく告げた。
「……は?」
思わず耳を疑った。俺、ルークは"鑑定士"としてパーティに加わっている。
前線には立たないが、モンスターの情報分析、罠の察知、アイテムの真贋など、地味ながらも役に立っていると信じていた。
「急にどうしたんだよ、リオン」
「もう決まったことだ。お前のスキルは"鑑定"だけ。それじゃあ高難度ダンジョンは攻略できない。今後は"真の仲間"だけでやっていく」
隣で頷くのは聖女マリエと槍使いのガイル。俺と一緒に旅をしてきた仲間だった。
その目は、どこか冷めきっていた。
「貴様がいなくても、アイテムは俺たちで確認できるし、罠も気をつければ問題ない」
「そういうこと。あんた、邪魔っていうか……正直、もう足手まといなのよね」
「…………」
何も言えなかった。
確かに俺のスキルは《鑑定》ただ一つ。
レアスキルでもなければ、戦闘力があるわけでもない。
けど、それでも必死に貢献してきた。
地図を作り、罠を見抜き、毒を検知し、武器の真価を見極めてきたのは、俺だ。
「今までありがとう。報酬はちゃんと渡す。じゃあな」
金貨の袋が投げられ、俺の足元で乾いた音を立てた。
*
その夜、俺は焚き火の傍に一人いた。
……くそ、悔しい。
けど、仕方ないのかもしれない。
実際、俺のスキルは"鑑定"だけ。誰よりも、それを一番わかっていたのは自分自身だ。
「……違うか」
小さく呟く。
俺の《鑑定》は、普通の鑑定じゃない。
レベルが上がるにつれて、徐々に気づいていた。
視えるのだ。相手の本質、未来、さらには——進化の可能性まで。
スキル名こそ《鑑定》だが、本質は【未来視】と【スキル強化】を兼ね備えたもの。
それを知られれば、利用されるだけだと思い、隠してきた。
「……結果がこれ、か」
俺は、ただ信じたかっただけなのかもしれない。
仲間を。人を。幼馴染だったリオンさえも。
そのときだった。
「ニャー……」
低い鳴き声が、暗闇から聞こえた。
振り返ると、黒く艶やかな毛並みの猫がいた。
その体は傷だらけで、明らかに魔物に襲われたばかりのようだった。
「おい、大丈夫か?」
俺はすぐに駆け寄り、持っていた回復ポーションを分け与える。
猫は俺の手に触れると、一瞬だけ光が走った。
「……なんだ、今の?」
《鑑定》を使ってみる。猫のステータスが、目の前に浮かび上がる。
【神格存在】ネブラ
種族:神獣(封印中)
属性:空・影・運命
スキル:《千里眼》《契約》《時喰らい》《世界の調律者》
「…………は?」
思わず目をこする。
神獣……? いや、そんな存在が、なんでこんなところに。
封印されているとはいえ、とんでもない力を秘めている。
スキル構成が、もう完全に規格外だ。
「……おまえ、ワタシの真の名を"視た"か?」
突如、猫が口を開いた。
その声は、低く、どこか女神のような響きを持っていた。
「……喋った……?」
「"鑑定"とは、面白いものだな。ワタシの封印の奥まで視た者は、おまえが初めてだ」
猫は立ち上がり、俺の目をじっと見据えた。
「ならば、契約するぞ。おまえに力をやろう。
ワタシを封印から解き放ち、新たなる"運命"を共に見よ」
その瞬間、俺のスキルが変化した。
《鑑定》→《全能の目(オムニスコープ)》へ進化
効果:万物を視通し、未来・過去・虚偽・成長性・確率など、存在にまつわる情報を網羅的に分析可能
—
俺の中で、何かが弾けた。
捨てられた。裏切られた。でも——
世界は、俺を見捨てていなかった。
ならば、始めよう。
俺と、神獣ネブラの、逆転の物語を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます