第23話 森の中の屋敷
森の中を進んで行く僕ですが、舗装された道など一つもなく、生い茂る草を踏みつけながら、露出した木の根っこに気を付けて一歩一歩進んで行きます。蚊が多数おり、至る所を刺されて痒くて堪りません。もう帰ってやろうかとも思いましたが、首に付けられた銀色の首輪の存在を思い出し、下手な行動は出来ません。それにしても迂闊さんのせいでこんな目に遭ってると思うと、あの人の憎しみがドンドン増していきます。今頃シャワーでも浴びてのんびりしてるんじゃないでしょうか?というかこんな所に人が住む建物なんて本当にあるんでしょうか?段々と怪しくなってきました。
しかし、僕はこのあと衝撃的な光景を目撃したのです。やっと木が無い開けた草原の様なところに出たと思いきや、そこには西洋風のバカデカい屋敷の様なものが立っており、それは森の中に突然出てきた異物の様に感じられました。迂闊さんが真っ直ぐ進めと言っていたので、おそらくあれが助っ人の住む家(?)なのでしょうが、一体どんな人が住んでいるのでしょう?興味は尽きません。
僕は恐る恐る屋敷に近づき、その外観を観察しました。石造りの外壁には所々蔦が絡みついており、窓らしきものには色鮮やかなステンドグラスがはめられています。明らかに日本建築では無いと思いますが、本当にどうしてこんな所に、こんな建造物が造られたのでしょう?これ以上考えても仕方が無いので、僕は屋敷の門を目指しました。門の扉もこれまた大きく、僕の身長の倍ぐらいはあるでしょうか?赤くて重厚な鉄の門です。その横に不似合いな現代的なインターホンの様なものが付いていたので、僕はそのスイッチを押しました。
“ピンポーン”
いかにもな音が鳴り、僕は緊張しながら反応があるのを待ちました。するとインターホン越しから女の人の声が聞こえてきたのです。
『はい、何か御用ですか?』
若い女の人の声、その声は落ち着いた淡々としたものであり、声からしてあのガサツな迂闊さんとは正反対の様な雰囲気があります。
「あのすいません、宮本 迂闊さんの使いで来たんですが」
『……ふぅ』
微かに聞こえた溜息。それがどんな意味を持つのか分かりませんが、あまり良い意味では無いに様に思えます。
『分かりました、今扉を開けに行きますから待っていて下さい』
「あっ、はい、ありがとうございます」
どうやら迂闊さんの知り合いというのは間違いないらしいです。暫くすると赤い扉がギィッと開き、中から黒いエプロンドレスを着た、ショートボブの黒髪の眼鏡をかけた女性が現れました。彼女の見た目が理知的な美人だったので、僕の緊張は一気に最高潮に達しました。
「あ、あの、その……」
僕がモジモジしていると、女性はスカートの両端を両手で摘まんでから丁寧にお辞儀しました。
「どうも森本 読子と申します」
「あっ、お、小野 颯太です」
これが森本 読子さんとの僕の出会いでありました。
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