第22話 そうして颯太は森の中に

「お前、助っ人連れて来い」


 迂闊さんからそう言われて僕は驚きました。助っ人って大体誰なんでしょうか?


「心配すんな、今からアタシが分かりやすい地図を書いてやるから」


 そう言うと汗だくの迂闊さんは、ホテルに備え付けられていたメモ用紙に地図を描き始めました。


「えっ?本当に僕が行くんですか?」


「当たり前だろ、アタシはダイブしたので疲れてんの、仲介屋は異本の監視から離れるわけにはいかないし、そしたらお前が行くしかねぇだろうが」


「行くしかないって、僕って監視されて無いといけないんですよね?」


 もしも僕が逃げたらどうするつもりなのだろうか?その辺のことを迂闊さんが考えているとは到底思えません。


「颯太さん、その点においては大丈夫です。こんな風な首輪を付けてもらえばGPSで颯太さんの場所は丸分かりです」


 仲介屋さんはポケットから銀の首輪を取り出して僕に見せてきました。それを僕に付けろってことですか?百歩譲って呼びに行くのは良いとして、その首輪を付けることに僕はある心配があったのです。


「あの、その首輪ってもしも僕が逃げようとしたら……爆発したりしませんよね?」


 まさかそんなことがある筈無いと思いながら仲介屋さんの返答を待つ僕。割と緊張の一瞬です。


「……そんなことありませんよ」


 待って、間があったよね?これとんでもない物を付けられそうになってません?仲介屋さんがいつも通り、にこやかなのが逆に怖いです。


「よし、地図を描いたぞ。そら首輪を付けて行ってこい」


 こうして僕は迂闊さんから地図を手渡され、仲介屋さんから首輪を付けられて、助っ人が居るという場所に徒歩で行くことになった。大体片道20分ぐらいで着くらしいですが本当に大丈夫なんでしょうか?あと僕、外に着ていく服が学生服しかなかったので、それを着ているのですが警察に補導されたりしないですかね?

 様々な不安を抱えつつ、僕は迂闊さんの描いた分かり辛い地図を見ながら歩いて行きます。とにかく線がふにゃふにゃで、道を曲がる時もこの道で合っているのか自信が全く持てません。途中でパトカーに遭遇した時は、咄嗟に物陰に隠れたりしてやり過ごしました。首輪も付けられていますし、何だか悪いことしている気分ですね。

 

 迂闊さんの地図通りに歩いていると、どんどんと町から離れていき、田んぼ道になり、とうとう森の手前までやって来ました。僕はこれは何処に向かっているのでしょうか?地図には”あとは真っ直ぐ進むべし”とだけ書いていあるので、間違っていなければこの森を直進すれば助っ人さんの場所に着く筈です。

 あぁ、言い忘れていましたが、助っ人さんの名前は森本もりもと 読子どくこさんと言い、森の中で図書館を開いている人らしいです。

 ……迂闊さんの知り合いということも相まって、会うのに不安しか無いですね。




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