第17話 居候始まる

 宮本家でお世話になった僕は、居候初日の朝にとりあえず朝食の手伝いから始めることにしました。美智代さんに頼んで、とりあえず味噌汁を作ることにしました。朝食を作り終えると、美智代さんが起きて来ない迂闊さんを叩き起こしに行き、一喧嘩あった後にいよいよ朝食です。三人で椅子に座り、ちゃんと「いただきます」を言ってから、迂闊さんが僕の作った味噌汁に手を伸ばします。はたしてその反応や如何に。


「えっ、この味噌汁美味い‼」


 僕の作った味噌汁を迂闊さんが美味しそうに飲んでくれています。良かった久しぶりに作ったけど上手に出来たみたいです。


「うん、本当に美味しいねぇ、こりゃ負けたよ」


 美智代さんもそんなことを言っていますが、美智代さんの焼いてくれた焼き鮭もとっても美味しいです。


「おいババァ♪こりゃウチのシェフは交代だな♪」


「あん?作りもしないヤツが粋がってんじゃねぇぞ‼刺殺すぞ‼」


「おぉ……怖っ」


 朝から殺伐とした親子のやり取りを見せられましたが、喧嘩するほど仲が良いが当てはまるかどうかは分かりません。

 朝食を食べ終わると僕は自分の部屋、つまり迂闊さんのお父さんの部屋の整理と掃除を始めました。昨日は居間に布団を敷いて寝ましたので、今日からは自分のあてがわれた部屋で生活を始めます。四畳半の畳部屋、これが僕の生活スペースです。

 使われていなくても一応は定期的に掃除されていたらしく、掃除は昼前には終わりました。それで朝に美智代さんが仕事に出かけたので、迂闊さんのお昼ご飯を僕が作ることにしました。


「お昼ご飯は何が良いですか迂闊さん」


「うーんとね、特上寿司♪」


 そんなふざけたことを抜かすので、カッパ巻きと納豆巻きを作ってやりました。しかしながら、迂闊さんは文句を言いつつムシャムシャと食べていたので、どうやらお口にはあったようです。お昼を食べると迂闊さんは自分の部屋で爆睡し始めました。僕は本を一人で読むことは禁止されているし、そもそも手元に本が無いので暇になり、とりあえず家の掃除を勝手にしてしまいました。

 夕方になると美智代さんが帰ってきて、家が掃除されていることに気が付いたのか「ありがとうね」とお礼を言ってくれました。はなから迂闊さんが掃除したとは思わなかった様です。

 そこから美智代さんの晩御飯の準備を手伝って、出来上がった夕食を食べ、美智代さん→迂闊さん→僕の順番にお風呂に入りました。


「どうだった♪この迂闊様の残り湯の味は♪」


 風呂上がりにからかうように迂闊さんがそう言ってきましたが、シャワーしか僕は浴びてません。てか味って、僕が残り湯をすすってるとでも思ったのでしょうか?

 自分の部屋に戻り布団を敷いて、やることも無いので寝ようと思いましたが、急に部屋の入り口の襖がスパーン‼と開いて、迂闊さんがニタニタしながら僕にこんなことを言いました。


「お姉さんとお話ししない♪」


 僕は何となく嫌な予感がしましたが、こんな人でも恩人なので、その申し出を受けることにしました。

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