ラベンダー、しゃべる

 心配になっていることがある。


「ひいっ! ごめんなさい。もうしませんから!」


 あぁ……まただ。


「ごめんなさい……ごめんなさいいいい!」


 オレはこいつを助けてやりたい。

 最近、悪夢を頻繁に見てうなされているのだ。


「ごめんなさい! それ、柔軟剤じゃなくて豆板醤なんですぅぅぅぅ!」


 いや、どんな間違えだよそれ。

 さすがに間違えないだろ。


「ひぃっ! 今度はオイスターソースぅぅぅう!」


 ……どゆこと?


 このわけわからん悪夢にうなされている人物は、どうやら仕事のストレスが溜まっているらしい。

 リラックス効果のあるオレを部屋に置いたのも、そのせいだろう。


 よし、ここはオレの出番だな!

 こいつが悪夢にうなされているとき、オレは自分の香を勢いよく放つ。


 ――いけっ!


 ふわりとオレの良い香りが部屋中に漂う。

 よしよし。呼吸がゆっくりになり、こわばっていた表情が和らいできたぞ。


「へへっ。それは豆板醤じゃなくて、パンツですよ〜」


 ……こいつ、一体どんな夢を見てんだよ。

 毎度毎度、寝言が意味不明すぎる。

 変な夢にうなされるぐらいストレス溜まってるのは、可哀想だな。


「良い夢みろよ」


 オレはこいつに一言声をかけてやった。

 もちろん、人間に聞こえるわけないがな。


 ――翌朝。


「ふー……ラベンダー置いてから調子いいなぁ」


 そうだろ、そうだろ?

 オレのおかげだからな。


「ぐっすり眠れるようになったし」


 うんうん。


「なんか、すっごい良い夢みた気がするし」


 ……豆板醤やパンツが出てくる夢で“良い夢”って、どういう基準だ?


「そういや、ラベンダーがしゃべった夢も見たな。『良い夢みろよ』って」


 んん???


「おまえ、いいやつだな。部屋に置いてよかったよ」


 にこにこと笑いながら言われて、思わず照れる。


「こちらこそ、置いてくれてありがとな」


 あれ?

 なんだか青ざめた顔でこっちを見ているぞ。


「え……しゃべった?」


 え?


「いや、そんなまさか……な。顔洗ってこよ……」


 アイツは逃げるように去っていった。


「まさか……俺の声が聞こえてるとは……」


 予想外の出来事に、オレは驚いた。

 だが、これはこれでチャンスだ。


 おっ! アイツが戻ってきたぞ。



「一体、どんな夢見たのか具体的に教えてくれ。毎回気になって仕方ないんだよ!」



 

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うちの植物よくしゃべる 未白 @mishiro_3

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