ポトス、しゃべる

「最近さ〜、めっちゃ体動かしたいんだよね」


「へー、俺にはわからん気持ちだわ。動けないし」


「新しい動きができるようになってきてさ。なんていうか、世界が広がってきた、みたいな?」


「えー、それ羨ましいわ。俺なんかずっと定位置だし、人間の手借りないとどうにもならん」


「ははっ。おまえ、ポトスだもんな」


「とはいえ、おまえも似たようなもんだろ? 手借りないとロクに動けないじゃん?」


「まあね。けどそのうち、もっと動けるようになるって。マジで」


「おっ、それは期待しとくわ」


「いまも結構、手足動くし? ほら、見てみ?」


 俺は精いっぱいの力で、手足をバタバタさせてみせた。

 どうよ! この軽やかな動き!!


「すげぇじゃん! 一ヶ月前に比べたらめっちゃ動いてる!」


「だろ? 将来有望ですわ」


「うわー、こいつ自分で言ってるよ」


 俺はケラケラと、ポトスと一緒に笑い合った。

 その様子を、にこにこと見つめている気配にも、ちゃんと気づいていた。


「あいつ、ずっとこっち見てるな」


「まあ、俺のファンだからな。仕方ないさ」


「ははっ、ファンか。そうに違いないな」


「あー、なんかお腹すいてきたわ」


「そりゃ大変だな」


「ちょっくら、泣いとくわ」


 うぇ〜〜〜〜〜〜ん!!


 俺は高らかに、大泣きしてやった。



「あらあら、さっきまでご機嫌でおしゃべりしてたのに。お腹すいたのかな?」


 ファンは、俺をやさしく抱き上げた。

 そして、ゆらゆら揺らしながら言う。


「待っててね。いまミルク用意するからね」


 ふふっ。

 さすが俺のファン――ママだ。

 俺の言いたいこと、ちゃんとわかってくれてる。

 


「ほんと、不思議なやつだよな……まだしゃべれないのに、赤ちゃん語だけで会話になっちゃうんだもんな」


 ポトスがぽつりとつぶやいたけど、俺はあえて返さなかった。

 泣いて、ちょっと疲れちゃったからね。


 俺はママの腕のなかで、静かにまどろみはじめる。

 その隣で、ポトスがそっと葉を揺らしていた。


 やわらかな光が、部屋いっぱいに差し込んでいた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る