図鑑No.03:黒薔薇ノ黙咲(くろばらのもくしょう)




 ぺたりと最初の頁を捲った刹那、背筋をつたう冷気に息を呑む。

 墨のような闇の中から、紅の線画が浮かび上がる。

 その輪郭は人の形をしていながら、視れば視るほど歪み、蠢き、俺の記憶を食い破っていく。

 ──これはただの図鑑ではない。禁忌の“生き物”そのものだ。





https://kakuyomu.jp/users/kaede-san/news/16818792436564855772

(*擬態形態・静止時のイラスト)



■ 分類名


沈黙開花型・深層妄想精霊(ディープ・ミューズ)

• 妄想発動条件:

 静寂の夜 × 香気過多 × 妄執の余熱

 → 発動確率:極めて低い(ただし発現時の衝撃は最大級)

• 通称: 「黙して咲く黒の幻影」

        「禁忌に咲く死香の花」

  「精神侵蝕型ヴィジョン」




■ 外見特徴

• 黒薔薇と赤薔薇が幾重にも重なった中に、ひとつの顔。

 その表情は“沈黙”そのもの。

• 虚ろに光る紅い瞳が、見る者の感情を“凍結”させる。

 眼差しだけで言語を不要とし、威圧と色気を両立。

• 肌は夜に沈むような深黒。輪郭すらも不明瞭な幻想体。




■ 内面/キャラ性

• 発声は一切しない。妄想主(ゴクトー)ですら「言葉を許されぬ存在」と錯覚するほど。

• 感情は眼差しと花弁の動きで表現。戦闘時は花弁が刃となる。

• 常に“見下ろす”視線を保ち、接近者を圧迫し精神的支配を行う。

• 登場時の周囲には“音”が消えるという現象が発生(無音結界)





■ 神代魔法との関連

• 関連呪式:「黒薔薇結界陣(ノクターン・ブロッサム)」

 敵意を察知すると自動発動。精神支配と感情封印を同時に行う高等妄想干渉魔法。





■ 発動魔法候補

• 「薔薇界顕現(ブラッサム・フィールド)」:半径5m内の精神活動を封じ、感情エネルギーを吸収。

• 「紅瞳封縛(ブラッド・グレア)」:視線を合わせた者の妄想を一時停止状態に追い込む。




■ 備考

• 黒薔薇ノ黙咲は、ゴクトーの“心が最も沈んだ時”にだけ現れる幻影であり、普段は彼自身もその存在を封じている。


• 妄想図鑑内でも“最も危険な沈黙体”として神々から要監視対象に指定済み。

• その存在理由は不明。「トラウマ」と「禁断の憧憬」が混じり合って形成されたとの説もある。




■ 図鑑メモ


「……言葉が、届かない。いや──あの眼に見られた瞬間、

 俺の妄想が、ひとつ……息を止めた気がした。」


⸻ゴクトー(黒薔薇ノ黙咲・発現後の記録)



ページを閉じても、その余韻は心の奥底に残り、俺の妄想を絶え間なく掻き立て続ける⸻。






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