心に灯るヒトデの約束――愛が記憶を超えるとき

 この物語は、失われた夏の記憶と、大切な人への祈りが織りなす珠玉のラブストーリーです。

 湘南の浜辺で交わされた“ふたつのヒトデ”の約束や、灯籠流しの静かな祈り、波音や夜風がそっと心の襞に入り込みます。百合子の遺した日記や手紙は、祐介だけでなく、読者の心にも澄んだ余韻を残してくれるはず。大切な人の死――決して消えない喪失感と向き合いながらも、主人公が“涙だけでなく、笑顔と共に生きる”と決意する姿に、人が“誰かの星”となり、記憶の中で永遠に輝くという真実の優しさを見出せます。

 何気ない会話や風景描写が、現実と幻想の境を曖昧にし、読み手自身の過去や大切な人を思い起こさせてくれる。特に「ありがとう」という言葉で結ばれるラストには、切なさと救いが同居し、きっとあなたの心にも温かい風が吹くはずです。人生の喪失や再生に寄り添う、静かで美しい余韻を味わいたい方に、ぜひおすすめしたい一作です。

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