第4話 企画会議

 男が出社するとすでに部屋には ずらりと権力者たちが並んでいた。

「遅いぞ。お前の番は最後に回したから。きちんと準備しないと採用にならないぞ」

「すみません」

 すでにいくつか審査にかけられているようだ。

 厳しい意見がいくつも飛ぶ。

 月曜九時からの枠だ。人気の企画がいくつもあるだけに内容も充実している作品が多い。

 審査する権力者の中に駐車場で見かけた美女がいた。

「森永AD。彼女は何者なんですか?」

「ああ。あの方はこの企画の最高権力者だぜ。彼女の言うことでだめになった企画はごまんとあるんだ」

「そうそ。おとりつぶしにならないように気を付けることね」

「はい」

 小声でごそごそしているものだから美女が眉をひそめてこちらを見る。


(やばっ)

 美女の目線にビクリとしたが、次の瞬間には企画書に向いていてほっとした。

(あんな視線に耐えられないぜ)

 結論としては、プレゼンは無事成功。

「これからもこのレベルの作品をよろしくね」

「はい。これ、あなたを見かけたときに思いついたんです」

「……そう」

 美女は読めないため息をついた。

「いったい何才なんですか? どう見ても10代にしか見えませんよ」

 女性は眉をひそめて不快な表情をしている。

「日本男性は失礼な方が多いのかしら。女性に年を聞くものではないわよ」

「そうでしたね。大変失礼いたしました」

「あなた、まだまだね。これからも指導の甲斐はありそうだわ」

 クスリと笑って荷物をまとめる最高権力者。

「オレ、あんな人と渡り合える気がしないっすわ」

「段々となれるさ」

「あれがいないとな」

「ほんと。胃には悪いがなぁ」

 男性陣からやらたと慰めが多いあたり、

 他にも苦手に思っている製作陣はいるようだ。

「いいかしら。今までの男性がそんななぁなぁだから視聴率がいまいちなの!! きちんとした価値のあるものを電波に乗せられればある程度の視聴率回復は可能なの」

「はぁ」

「これまでの取捨選択がいまいちだから伸び悩むのよ」

 フンと彼女は鼻を鳴らして退出してしまった。

(こりゃ大変だ)


 日常生活のめどはたったが、しばらく胃は痛くなりそうだ。

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叙述探偵 朝香るか @kouhi-sairin

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