Ice lolly12⋈②
*
7月22日の朝。私は新幹線の中にいた。
「…
「…ねー。廃墟で夜遊びって。そんなキャラだったなんてさぁ、マジやばー」
あ、コソコソ話聞こえて……。
でも気にしない!
乗る前に取った
あっ、既読ついて返信が……。
『…ありす、かわいい』
え、かわ……!?
私の顔がボッと熱くなる。
『…楽しんで来いよ』
私は返信する。
『うん、楽しんでくるね』
*
7月23日の夜。私はホテルの部屋で一人
「
動物園、アメ横、浅草、ツリー…、
もんじゃ、カニやローストビーフの超豪華なバイキング……
『…いや、見てるだけで俺も楽しめてるから気にすんな』
『…最終日はディズニーシーだっけ?』
「うん、楽しみ」
『…
「あー、うん。今日は最後のお泊りだから
『…は?
「そうみたい」
「…
『…何?』
「…あ」
『あ?』
「ううん、なんでもない。切るね」
『…おい、
私は電話を切った。
危なかった……。
もう少しで“会いたい”って言いそうだった。
そんなの、無理なのに。
電話やライン出来るだけでも幸せなことなのに、私、
でも。
私はぎゅっとスマホを抱き締める。
会いたくて仕方がないの。
*
ベットが上がった状態で寝ている
着替えは電話をする前に下っ端に頼んで済ましており、
ベットから降り、扉まで歩いて行く。
「
「…あぁ」
「ありすに会いに?」
「それとも、親父に会いにか?」
「…昨日の夜の電話聞いてたんかよ」
「あぁ。隣だから聞きたくなくても聞こえる」
「…親父に会って話つけた後、ありすに会いに行く」
「…ありすが待ってるんで」
「そうかよ。なら上手く話しつけておいてやる。行って来い」
*
車の運転席から
マンションの前にはスーツを着た冷たい目の男性が立っている。
「…親父」
「
「…話ってなんだよ?」
「単刀直入に言う。お前を夏休み前に転校させる」
「…は?」
「…何言ってんの? 転勤が決まったんなら一人で行けばいいだろ」
「そうじゃない。とにかくこれは決定事項だ」
「あのマンションの部屋も引き払う」
「なんだその顔は。マンション代、誰が出してやってると思ってるんだ!?」
「…うるせぇ!」
「…ふざけんなよ。こんの転勤族の放置主義野郎が!」
「…そんなんだから、おふくろに離婚されんだよ!」
「もういい。お前と話していても
「とにかく転校の手続きを先に進める」
「…おい、待てよ!」
「…は? おい…」
「すまない」
父親は
「…らしくねぇ。何謝ってんだよ?」
「…俺を呼び出した本当の理由言えよ」
「……長くないんだ」
「医者にもって、あと一年だと診断を受けた」
「…迷った。お前に伝えるべきか」
「この先どう生きて行くべきか」
「そしたらお前の顔が浮かんできてな」
父親は一筋の涙を零す。
「母さんと出会ったこの東京で……お前と暮らしたい」
「…
「
「……分かった」
*
「…はぁ」
深夜になり、私はホテルの711号室の部屋で、一人、ため息をついていた。
ここは和のテイストを取り入れた落ちつきのある部屋で、4つベットがある。
一人、寂しい。
みんなまだ戻ってこないな…。
とりあえず、部屋着のTシャツと短パンには着替えたけど、どうしよう……。
先に寝ちゃっても大丈夫かな?
ピロン♪
……え、グループライン!?
私はトークをタップし、ラインのトーク画面を開く。
『ありす! 大変!
え、
あ、
『今ホテルの部屋に入ったぞ』
部屋に入った!?
『俺達の隣。902号室だよ』
「…行かなきゃ」
私はベットから降りて歩き、部屋から出る。
あっ。
同じ部屋の女の子達が話しながら戻ってきた。
「C組の女子達ヤバかったねー」
「うんうん、突然現れた
「修旅サボるタイプなのにギブスつけたまま来るってヤバくない!?」
「担任に頭下げて部屋用意してもらってさぁ、必死すぎ! アレは絶対女いるよね!」
私は涙を堪えながら、女の子達の隣を駆けていく。
「え!?」
「
それからエレベーターで9階まで上がって歩いて行くと902号室の前に着いた。
エレベーターホール前は、紫のライトがホテルじゃない雰囲気を
部屋の前で扉をノックした瞬間、
あ、先生!?
どうしよ…見つかっちゃう!
ガチャッ。
部屋の扉が開いた。
グィッと手を引っ張られ、
私が中に入ると、
スタイリッシュな2人部屋…かっこいい……。
「…危ねぇな。見つかってたら完全にアウトだったわ」
「…なんで来んだよ」
「
「
「…電話で会いたいって言うから会いに来た」
両目から光が溢れて止まらない。
「言ってないよ…」
「…あ、は言ったよな?」
私は右腕で両目を隠す。
なんで、あ、だけで分かっちゃうの?
「…まぁ、俺が会いたかっただけなんだけどな」
「
「…あぁ。急いで来たから」
「…乗せて来てくれた先輩は違うホテルに泊まるらしいけどな」
急いで来てくれたんだ……。
「着替えた方が…あ、でもないよね……」
「…着替えならホテルのがある」
「そっか。あ、でもギブス……」
「…お前がいいなら脱ぐけど」
え!?
「…嫌だよな」
ギブス、誰にも見られたくないんじゃないかなって思ってたのに……。
私はいいんだ。
「い、いいよ。後ろ…向いてるね」
その上にある硬めの枕を2つ背中のクッションとして固定し、ベットに座る。
そして、パサッ……。
白のTシャツを脱ぎ捨てた。
「…ありす」
上半身裸のまま、ふわふわのタオルで体を拭いていた。
「わ、私がタオルで……あ……」
あばら骨のギブスを見て、胸がきゅっと痛む。
「…かっこ悪いよな」
私は首を横に振る。
「そんなことない。かっこいいよ!」
「…そう。じゃあありす、背中拭いて」
「わ、分かった」
タオルを受け取ると、背中を優しく拭いた。
「
「…お前は脱がねぇの?」
「え……あ、もしかして汗臭い!?」
私は、くん、と自分のTシャツの香りを嗅ぐ。
「…いや、冗談だから気にすんな」
「……て」
「…は?」
私は両手でぎゅっと自分のTシャツの裾を持つ。
「
すごく恥ずかしい。
消えたい。
そう思いながらも
きながら早足で
もう後ろの
私の上半身がリボン付きの黒いブラだけになると、目を見張る。
「…は? 黒?」
「あ……」
体中が猛烈に熱い……。
まさか、
「
ぎゅっ。
後ろから
「…やっぱ会いに来て良かったわ」
あれ……なんか元気ない……?
「
「…なんもねぇよ」
「嘘…やっぱり体、辛いんじゃ…」
「…うるせぇな」
「んっ」
え…いつもより長い?
やばい、息が……。
「ぷはぁ…」
唇が離れ、息を吸うと
「あの、私、どうすれば…」
「…好きにして」
そう言われても……どうしよう……。
あ…!?
私は考えた末、バッと振り返る。
「……
ちゅ。
私は
あの時は酔ってたけど、
私の両目からぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「…嬉しい」
「
「こうして来てくれたことが」
「私、これからも卒業後も」
「ずっとずっと
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