Ice lolly9⋈① 終わり、だなんて嫌だよ。
ずっと守ってきた。
なのにさよならなんて、
終わり、だなんて嫌だよ。
*
どのくらい走ったのか分からない。
「はぁっ、はぁっ…」
私は息を切らして辺りを見渡す。
ここ、見覚えがある。
あ…
コツ、コツ。
え、前から誰かが歩いて来て…。
背の高い黒髪の男の子が見えた。
パーマをかけたショートボブの髪型をし、
その隣には男性がいる。
嘘…
隣の人は…監察官?
――――スッ。
通り過ぎる瞬間、
「…大きくなったな、ありす」
姿が見えなくなると、私はその場に崩れ落ちる。
私のこと覚えて……。
なんで
どうしよう…体が動かな……。
「大丈夫か?」
黒の特攻服を着た黒髪の男の子が話しかけてきた。
男の子はクールな顔つきをしている。
「誰…?」
「俺は暴走族
あ、思い出した。
ナンバー3だったんだ……。
「総長はどうした?」
「その、喧嘩しちゃって……」
「そうか。動けないのか?」
「はい」
「……」
あれ?
どうしたんだろう?
「
「なら俺が楽にしてやろう」
トン。
ふ…っ。
目の前が真っ黒になり、
私は
*
「……んっ」
しばらくして目が覚めると、私はなぜか暗闇の倉庫の中にいた。
え、両手後ろでリボンで縛られて……。
「起きたか」
「
「すまない」
「総長の妹に手荒な真似はしたくなかったんだが
え……頼まれた?
「いざとなったら助ける。今は耐えてくれ」
ヴーヴー。
「…かかってきたな」
『準備は出来たか?』
「はい」
『なら代われ』
『さっきは監視官がいる手前、一言しか話せなかったが』
『ありす、お前は
え、なんでバレて……。
『そして
『違うか?』
「それは……」
『お前は甘い。1つも守れないのに両方守れるはずがないだろう』
『今まで口を出さずに黙って見守ってきたが、お前は
『俺が特別に正してやろう』
「正す?」
「ありす!」
グレーの長袖のTシャツに長い紺色のアンクルパンツ姿の
「え、なんで……」
「俺が呼んだ」
「
「そんなに俺に殺されてぇのか!?」
『
「
『俺が
『お前は何をやっている』
『ありすが大事ならなぜ同じ高校に入学させなかった?』
『強引な手を使ってでも傍に置いておかなかった?』
『お前は甘い』
『そんなだから
『このままでは
「はい」
え……。
『ありす、単刀直入に言う』
『3分時間をやる』
『
『答え次第では
「
「それだけは!」
『誰に命令している?』
『俺は
『
――――私、
――――守ってみせるから。
そんなの所詮、夢物語。
両方守るなんて最初から無理だったんだ。
『時間だ。3』
ねぇ、
終わり、だなんて嫌だよ。
別れたくないよ。
『2』
だけど別れても、私、
生きてもう一度
だから――――。
『1…』
「私は
『
『素晴らしい』
『さすがは
「私が妹……?」
地面に横たわったまま聞き返す。
『そうだ。“本物の妹”だ』
『そして、今のがお前の本音だ』
私の両目から光が消える。
『人は窮地に陥る時、本性を表す』
『
『
「
『お前を
私達3人は驚く。
『小5の時、親父が再婚して血の繋がりがない妹が出来た』
『だが、俺の親父も新しいお袋も中1の時に内輪揉めをし出て行った』
『俺達はふたりで生きて行こうと決めキスを交わしたが、現実は甘くはなかった』
『
『そして親戚も知人もいない、他人の大人達に頼ることさえも不器用で出来なかった』
『仕送りも段々と減っていき、中1の夏、ジュースを家の近くの自動販売機で買って帰って来たら床に林檎が転がっていて、雪が倒れていた』
『そしてそのまま雪は熱中症で死んだ』
そんな……。
『雪は大人に殺されたと言っても過言ではない』
『俺はふたりで生きられなかった』
『だが、ひとりでさえも生きられなかった』
『そんな俺が辿り着いたのは暴走族の世界だった』
『族の奴らが道端に倒れていた俺を助け、俺の世話をしてくれた』
『そして冬、俺は独り立ちし、
『
『俺はひとりでもふたりでも生きられなかった』
『だがお前は違う』
『
電話が切れた。
それに
「
モデル…ガン?
「はい、総長! ここにありすさんを運んだ時、置いてあり使いました」
「
「
「連絡してくれて助かった」
「総長……髪、黒…」
「今日のことは誰にも言うんじゃねぇ。分かったな?」
「はい」
「もう帰れ」
どうしよう…
今すぐ逃げたい…だけど体がぴくりとも動かない。
冷や汗が止まらない。
「ありす!」
背中で縛られた両手のリボンをほどこうとする。
「触…らないで」
「なんで…来たの?」
「偽りの
「大嫌いでも構わねぇよ」
「ありす、帰るぞ」
拒否ったのに、
いつもぶっきら棒なのに、
なんで… そんな優しくほどくの?
「ありす?」
「はぁっ、はぁっ…」
まずい、上手く息が出来ない。
苦しい。
大嫌いって言ったくせに
だめ、なのに。
「ありす、ゆっくり息吸って吐け」
「大丈夫だ。俺がついてるからな」
「――――よし、正常に戻ったみてぇだな」
「乗れ」
「え、でも……」
高校生にもなっておんぶだなんて恥ずかしい……。
「ほら早くしろ」
私は
「相変わらず軽ぃな」
「てかお前寝れてねぇだろ」
「なんで…」
「目の下クマ出来てる」
え、クマ!?
「家に着くまで寝てろ」
こんな状態で眠れる訳ないって思ってたけど、うとうとしてきた……。
金髪の私と黒髪の
周りから見たらきっと兄妹に見えてないよね…。
それでもいいや。
私、
私はそう思いながら眠りについた。
*
「んっ…」
しばらくして目覚めるとなぜか部屋のベッドだった。
あれ…いつの間に部屋に着いて…。
服(袖と裾にフリルがつき、背中にクロスストラップがついた薄いブルーのトップスとウエスト部分にリボンがついたショートパンツ)も変わってない…。
「入るぞ」
黒髪の
「起きたみてぇだな」
私はびっくりして起き上がる。
「え、私、なんで…」
「玄関で起きろって何回呼びかけても爆睡してて起きねぇからここまで運んだ」
え、爆睡…!?
恥ずかしい……。
「ほら、さっさと食って飲め」
アイスコーヒーに味噌雑炊…凄い組み合わせ……。
それに黒髪だと、なんだかお兄ちゃんじゃないみたい。
「なんだ? 食えねぇなら俺が食べさせてやろうか?」
「だ、大丈夫。一人で食べれるから」
私はおぼんの上の味噌雑炊を手に取るとスプーンで一口食べる。
「お、美味しい」
私はパクパクと味噌雑炊を食べていく。
「そうかよ。あー、あん時のお前の茶漬けひどかったな」
「ちょ、思い出さなくていいから!」
あ、いつも通りだ。
大丈夫、このまま兄妹に戻れる…よね?
「おい、ついてんぞ」
「ありが…」
私と
「…バイトの時間だから行くわ」
「味噌雑炊、キッチンの鍋の中に入ってるから好きなだけ食えよ」
「あ、うん」
ぱたん、と扉が閉まる。
私はおぼんの上に味噌雑炊を置いてアイスコーヒーを一口飲むと、自分の髪に触れる。
顔が熱い。
それに……。
“私は
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