Ice lolly1⋈②
それから2人で黒のウィッグを遠くのコスプレショップまで電車に乗って買いに行った。
コスプレショップはビルの5階にあり、試着室で自分で選んだ黒のふわロングのウィッグを被ってみる。
「被れたか?」
「うん」
私が短く答えると
「…どう?
私は恥ずかしそうに尋ねる。
「似合ってる」
そして私の頭を撫でる。
「高校からは中学の連中とは別れて知らない奴らばかりだ」
「俺は金髪で通ったが、お前は黒髪ってことにすればいい」
「金髪なのは俺だけが知ってればいいだろ?」
「そうだね」
「登校する時は必ず黒のウィッグ被ること、いいな?」
「うん、分かった」
私は
*
…
高校生になってからは私が不自由しないように
料理も健康に気を遣ってくれてて、私が出来ることは
私はびっしりと書き込んだノートを見つめる。
受験勉強はもう高校2年生だから仕方ないよね。
やらなきゃいけないよね。
分かってる。
だけど、なんの為に勉強してるの?
なんで受験するの?
「…分かんないや」
大粒の光がノートに
私は両手で顔を覆う。
お願い。
誰か、
心に絡まったリボンほどいて。
「…気分転換に外の風でも吸おうかな」
私はガタッと椅子から立ち上がる。
私は水色にゴールドの星柄がついたカーテンの前に立つ。
でも一つだけ外に出る方法がある。
それは…。
シャッ!
カーテンを開けリボンで留めると、 ガチャ、と鍵を外す。
“ベランダに出ること”
ガラッ。
私は扉を開けて飛び出した――――。
「あ、風、少し吹いてる」
「涼しい」
兎がいそうな、まんまるで大きな満月の光に照らされ、ベランダが明るくなった。
夏の夜空の星々がキラキラと希望に満ちあふれ、美しく光り輝く。
「…髪の色、綺麗だな」
え…男の子の声?
仕切り板を見ると穴が空いていた。
なんで穴、空いてるの!?
あ……。
仕切り板の穴から隣のベランダに立っている白髪の男の子が見えた。
男の子はネイビー色のTシャツに黒のスキニーパンツを穿いている。
なんで…男の子が!?
髪、白兎みたいに真っ白…。
なんだか不思議な世界に迷い込んだみたい…。
同級生ぽい感じだけど…ってあれ?
髪の色、綺麗だって言われなかった?
私は自分の髪に触れる。
まずい、ウィッグつけてない。
家ではいつも取ってるから。
しかもだっさいTシャツに短パン……。
私の顔がサァーッと青ざめる。
終わった……。
どうしよう。
今まで髪の事は
もし、同じ高校だったら!
「あ、あのっ」
「…板壊したの、俺じゃないから」
「…野良のブタ猫だから」
え、ブタ猫が壊したの!?
「…これ、やるよ」
男の子は袋に入った白いサワー味のアイスキャンディーを仕切り板の穴から手渡してきた。
「え、受け取れません」
「…溶ける、早く」
私のアイスキャンディーじゃない。
だから別に溶けたっていいはずなのに。
私は仕切り板に近づいてとっさに手を伸ばす。
袋に入った白いサワー味のアイスキャンディーを受け取った瞬間、指が触れて……、
何かが変わった気がした。
私、なんで受け取ってしまったんだろう。
「…それ美味しいから」
「…刺激的。じゃあな」
男の子は部屋に戻ろうとする。
「あっ、待って」
「名前、聞かせて」
男の子は驚いた顔をした。
「…俺のこと知らねぇの?」
「え?」
「…ほんとに知らないんだな」
「…まぁ、好都合だけど」
好都合?
「あの?」
「…
「…お前は?」
「私は
「
「…俺も同じ」
「…またな、
男の子はそう言って部屋に入って行った。
同じ高校なんだ…。
…あれ?
え、同じ高校!?
やばい、どうしよう、髪の事みんなに言われたら…。
それより今は、アイスキャンディー食べなきゃ。
私は袋を破る。
爽やかな甘い香り……。
わぁ、白いサワー味のアイスキャンディー、綺麗。
私はアイスキャンディーを食べる。
サワーなのにヨーグルトっぽい味。
ほんとだ、美味しい。
刺激的でシャリシャリ弾けた甘酸っぱい感覚…。
おまけに……頬が熱い。
刺激的な夏がやってきて、
心に絡まったリボンがほどけ始めた。
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