総長、私のリボンほどいて。🎀
空野瑠理子
Ice lolly1⋈① リボンほどいて。
お願い。
誰か、
心に絡まったリボンほどいて。
*
「あぁ、今日も暑いな」
放課後の空の下、孤独に歩道を歩いている私は、
半袖のセーラー服にピンクのリボン、
チェックの薄い灰色とピンクのスカートは可愛くていいけど…、
黒のふわロングのウィッグ外したい。
だけど外せない。
“
お母さんの母はイギリス人で、
日本人の祖父と結婚して黒髪のお母さんが生まれた。
そしてお母さんは日本人のお父さんと結婚したんだけど、
私とお兄ちゃんは祖母の遺伝で髪の色が金髪っぽい。
だから地味な変装みたいな感じで登校する時は必ず黒のウィッグ被ってるんだよね。
高3の
…あ、夕方なのに
寝不足だから余計にうるさく聞こえてイライラする。
今日から7月だもん、当たり前か。
私は今年で高校2年生、つまり来年は受験生。
「はぁ…」
このまま
*
「ありす、おい、起きろ」
深夜前。
マンションは15階建てで私達は5階の部屋に住んでいて、私の部屋はシンプルでエアコンに学習机とベットだけある。
話し方はいつもぶっきら棒。
「あ、
「寝てんじゃねぇよ。これ飲んで頭冷やせ」
「うん、ありがとう…」
「でもまぁ」
「寝られるってことは第一志望の一流大学、余裕で合格出来そうだな」
「寝てんの邪魔して悪かったな」
「…ありす、頑張れよ」
ぱたん、と閉まる部屋の扉。
私は自分の髪が嫌い。
こんな金髪っぽい色じゃなかったらウィッグつけずに、みんなみたいに普通に登校出来るのに。
アイスコーヒーみたいな黒色だったら良かったのに――――。
*
私が高校生になる前の春休み。
「
居間で呆然と立つお兄ちゃんに話しかけた。
「…両親とも出て行った」
「え?」
お母さんとお父さんが?
意地悪言わないでよ。
「あ、手紙? 見せて」
「お前は見るな」
「
私が無理矢理取ろうとすると、
ひらり。
『ありす、
あたし達ね、ずーっとあんた達が母と同じ金髪なのが嫌だったんだけど、
イイ人が見つかって違う人と暮らすことになったから、
明日から2人でよろしくね。
生活費は先に出て行ったお父さんが入れるから。
じゃあね、元気でね。
母と父より。』
「なん…で…」
「私達、捨てられちゃったの?」
私はその場で崩れ落ちた。
「ありす!」
「明日から2人でよろしくねって…何?」
お母さんとお父さんがイギリス人の祖母と仲が悪いの知ってた。
“祖母と同じ金髪じゃなくて、あたし達と同じ黒髪だったらね”って毎日呟いてた。
だから髪のこと気にしてたのに。
まさか別に愛人がいたなんて。
私の両目から大粒の涙が零れ落ちていく。
「私が金髪だから出て行ったの?」
「私のせいなの…!?」
「違う」
「お前は何も悪くねぇ」
「金髪だって憧れの色だ。おかしくねぇよ」
「みんな染めてんじゃねぇか」
「でも中学校で金髪のままでいたら、みんな変な目で見てきたよ」
「先生にも特別扱いされて…」
「ありす、大丈夫だ」
「俺がいる」
「
「2人で生きて行こう」
もう涙が止まらなかった。
一緒にいてくれてありがとう。
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