AI耳栓が恋愛を完璧シミュレーションするけど、現実の女子はバグだらけで崩壊中!
青井空
第一章 リリカ誕生
第1話 プロローグ
「何してるの?」
教室の片隅。黒髪ロングの清楚な女子が、Kindleからちらりとこちらに視線を向けた。
「AIを開発してる」
「それって、面白い?」
「この世の何よりもワクワクする!」
「……ヤバいね」
彼女は呆れたように苦笑いした。けど、その笑顔ひとつで俺の心臓はうるさいくらいに跳ね上がる。
すぐに興味を失ったのか、
俺はスマホを取り出し、秘密フォルダに保存した前回の中間テストの成績を眺める。
「日本史15点、生物5点……。興味ない科目はとことん壊滅的だな。よし、AIで解決だ!」
そんな俺がテスト対策のために自作したのが、この耳栓型AI『リリカ』。脳波で会話できるなんて世界初の快挙のはずだが、その開発動機はカンニング(笑)。
「これは不正じゃない、時間の有効活用だ」
そう、俺は卑怯者じゃない。これはあくまで高校の定期テスト限定の措置。
大学入試なんて数学と英語、あとは小論文で余裕だ。過去問対策すらしなくても受かるに決まってる。というか、そもそも大学に行かずとも、超一流のエンジニアとして余裕で食っていける自信がある。
――と、完璧な自己正当化を終え、昨日完成したばかりの『リリカ』を耳に装着した。
一限目は日本史。前回は確か15点。適当にマークしたのが運良く当たっただけの点数だ。
『リリカ、早速だけどテストの解答、よろしく!』
『エラーを検知。不正行為は推奨されません。データベースに基づき、適切な学習支援を実行します』
『いや、そこを何とか! 前回の俺の日本史、15点なんだぞ!』
『ユーザー:
『おぉ、さすがリリカ! 話がわかる!』
『警告:過剰な称賛は処理効率を低下させる可能性があります』
『警告って……。ま、まあ、ありがとう。おかげでテスト終了30分前には全部終わっちまった。……でも待てよ。前回15点の俺が、いきなり満点取ったらさすがに怪しまれるか』
『指示します。消しゴムを用意してください。8問目、選択肢アを消去。受験生が間違えやすい選択肢ウに修正します。……これで予想スコアは80点です』
『パーフェクトだ! リリカ、愛してるぜ!』
『…………』
『ん? 沈黙? もしかしてバッテリー切れか?』
『再度、警告します。返答に窮する質問は、処理能力を著しく低下させます』
『AIのプログラミングは奥が深いな……』
俺がAIを駆使したいのは、テストだけじゃない。恋愛もだ。
狙うは、さっき声をかけてくれた
昼休み。思った通り、
『よし、リリカ出番だ!
『解析失敗。対象との関係性が希薄なため、好感度の算出は不可能です。なお、現時点での会話シミュレーションにおける成功率は22%、失敗率は78%です。推奨行動:静観』
『マジかよ、ほぼ無理ゲーってことか!?』
そのときだった。
「ハルト、スマホばっか見ててキモいんだけど!」
快活な声とともに、
『警告! 心拍数が急上昇しています!』
リリカが脳内で騒ぐ。うるさい、こいつじゃない! 俺の本命は
こうして、AIリリカと共に過ごす、俺の波乱に満ちた一日が幕を開けたのだった。
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登場人物紹介
https://kakuyomu.jp/users/aoisorakirei/news/16818792436278600468
https://kakuyomu.jp/users/aoisorakirei/news/16818792436720262686
https://kakuyomu.jp/users/aoisorakirei/news/16818792436278980545
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