第七章:錬金術の章(開祖)

 そして今、我ら第四の子ら、『獣の時代』が来た。

 『砂の書』は我らを『家畜』と呼び、末法の世と嘆く。


 三度の『泥の涙』は固まり、巨大な『地層』となって我らの足元に横たわっている。

 ​人々が『災厄の記憶』と呼び、恐れるその『地層』は、一人の女に、その真実を語りかけた。


 その女こそ、我らが開祖、ベーラ・モント、『はじまりの錬金術師』である。


 ​ベーラは、父の『秩序科学』と母の『本能魔術』の両方を学んだ者であった。

 彼女は『地層』に潜り、その『泥の涙』に触れ、母神アマテルの『嘆き』を聞いた。

 そして彼女は、かの書を読み解き、悟った。


 ​彼女の言う『錬金術』とは、『砂の書』の信奉者たちが求めるような、卑金属から金を作る小賢しい技術ではない。

 それは、父の『秩序』を理解しつつ、母の『本能』と対話し、乾いた『砂』を、再び『豊穣の地』へと変える聖なる技術――。

 それこそが、真の錬金術であると。


 ベーラ・モントは、『雄牛の犠牲』の儀式を『錬金術』として現代に蘇らせた、最初の預言者である。

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