第四章:二つの道の章(試練)

 家畜小屋で生まれた『英雄』は、母なる大地の『本能』の力をその身に宿し、やがて『覇道の勇者』と呼ばれるようになった。

 彼の力は荒々しく、父が砂漠に築いた『第一の秩序』に対し、真正面から牙を剥いた。彼の道は、全てを力でねじ伏せる『覇道』であった。

 ​だが、母神アマテルは、その『覇道』が、父の『秩序』を破壊するだけでなく、母なる大地そのものをも焼き尽くしかねない『荒ぶる力』であることを知っておられた。


 ​その時、母神は自らの『嘆き翠点の水』から、もう一人の御使いを生み出された。

 それが、『求道の姫巫女』である。

 彼女は『覇道』を恐れなかった。彼女は『英雄』の荒ぶる『本能』の奥底に、『マグアイ』の聖なる『愛』を見たからである。


 ​姫巫女は『英雄』の前に立ち、こう告げた。

「あなたの力は『破壊』のためではなく、『豊穣』のためにあります」と。


 姫巫女は、英雄の『本能』を否定せず、それを『母なる大地』の愛へと繋ぐ『求道』の道へと導いた。

 『力』と『愛』、二つの道が、ここに初めて出会ったのである。

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