砂の書〜家畜の章〜(第四文明)

 ​『「泥の章」は我らを『獣』と記した。

 この章は、我らの末法を記す。』


 三度の泥の地層の上に、我ら第四の子らが生まれた。

 我らは『狩人』の力を恐れ、牙を隠した。

 我らは『大樹』の高さを嘲り、地を這った。

 我らは『菌糸』の知を忌み、目を閉じた。


 我らが選んだ道は、ただ『生き延びる』こと。

 『獣』のように、しなやかに、狡猾に。


 だが、永き平和は『獣』の牙を錆びつかせた。

 オアシスの壁は我らを守る『柵』となり、過去の遺産は我らを養う『飼い葉』となった。


 我らはもはや『獣』ではない。


 『陽』を恐れ、『泥』に怯え、ただ明日の『水』を待つだけの『家畜』である。

 我らは『末法』の泥濘に安住し、自らが『畜群』であることさえ忘れた。


 星は四度、この淀みを見ている。

 第四の泥は、もはや浄化や忘却のためではない。

 それは、自ら牙を捨てた『家畜』を淘汰するための、『屠殺』の泥である。

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