砂の書〜雫の章〜 (希望)

『破滅と禁忌ばかりが記される「砂の書」の中で、唯一、希望とも取れる記述が残る章。』


 『陽』は奪い、『海』は求め、『泥』は埋める。

 我ら『獣』は、その理の中でどこへ逃れればよいのか。

 答えは、我らが命の源にある。

 翠点こそが唯一の狭間である。


 翠点は『陽』の熱を遮る砂の影にあり、

 翠点は『海』の呪詛が届かぬ内陸にあり、

 翠点は『泥』の記憶の上に咲いている。


 狩人は翠点を独占して滅びた。

 大樹は翠点を吸い上げて滅びた。

 菌糸は翠点を忘れて滅びた。


 獣よ。

 翠点を守れ。

 翠点を繋げ。


 点在するオアシスが、乾いた砂の上で一つの水脈として繋がる時、

 『陽』の熱は和らぎ、『海』の渇きは癒され、『泥』の怒りは鎮まるだろう。

 それこそが、第四の泥を恵みに変える唯一の道である。


 我らの道は生き延びること。


 我らの希望は繋ぐことにある。

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