砂の書〜深海の章〜 (海の脅威)

『この章は、星の三割を占める「海」についての記述であり、最も難解とされる章の一つである。』


 我らはりくに七割を奪われた『陽』を脅威と思う。

 だが、『海』が我らの友と思うな。

 『海』は『陽』に奪われた故郷をいまだ渇望している。

 『海』は我ら砂の民を、自らの故郷を奪った『陽』の眷属と見なしている。


 耳を澄ませ。

 『海』の潮騒は、嘆きではない。それは「返せ」と囁く呪詛である。


 三度の『泥』は、大地が流した涙ではない。

 あれは、我らが足元の砂を再び『海』に引き戻そうとする、深海の『嘆願』であり『侵略』である。

 泥の洪水は、地が天に抗い、星が再び水に満たされようとする『回帰』の衝動なのだ。


 ゆえに、海辺の民は知っている。

 深海より来たる『異形の使い』を。

 そして、四度目の『震え』が来た時、最も危険なのは地下の泥だけではない。

 深海が、我らの大地を奪いに来るだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る