うちのお嬢様がVRMMOで暴れまくってます、胃が痛い!
ヤスミ
第1話
「ねぇ、
「はい、なんでしょう、あまりその様なお淑やかな雰囲気はお嬢様にはお似合いではないと思いますが」
漆のような艶やかな黒い髪に窓の外を見つめる儚げな目、そして視線が止まることなく足まで落ちるスレンダーボディ!!
ティーカップを手に取り優雅に口をつけるその姿は深窓の令嬢というに相応しい。
しかし、お嬢様もとい
「あら、そんな事を言っていいのかしら……せっかくあなたの愛してやまないコレを調達して来てあげたのに」
ニヤリとしてからお嬢様は懐から1本のゲームソフトを取り出した。
「なっ! そ、それは、俺があらゆる抽選で全落ちした今世紀の覇権を握ると言われているVRMMO『GATE KEEPER』!?」
「忠誠心のない下僕にあげるご褒美は持ち合わせてないの……残念だけれどこれはお預けね」
完全敗北である。
先程まで被っていたお淑やかの皮を脱ぎ捨てて女王様のような悪い笑みを向けてくる。
今ここに悪魔とお嬢様が並べばどちらが悪魔か俺には答えることが出来ない。
「そんなっ!! お嬢様、どうかご慈悲を、何でもしますから!!」
生粋のVRゲーマーの俺が覇権のゲームにリリース日から参加しないなんて一生悔いが残るっ!!
どんな条件を提示されても受け入れる覚悟だ!!
「何でも……言ったわね?」
「足でも舐めればいいですか?」
ひれ伏した俺と足を組んで見下すお嬢様というこの構図はSMプレイの導入のようだ。
俺が顔を上げればちょうどお嬢様の足が目の前に来る。
「え、違うわよ、一緒にパーティを組んで遊んでくれればいいわ、足を舐めたいなら好きになさい」
もう少し無茶な要求でもされるのかと身構えていたがとても可愛らしいお願いをされてしまった。
幸いにも俺が普段一緒に遊んでいるゲーム仲間は忙しくてIN出来ないらしいのでお嬢様が満足するまで付き合うくらいは問題ない。
あ、お嬢様、足を向けるのはやめてください!!
そのデニール数のタイツは俺のドストライクなんです!!
「千隼、私は先にキャラクタークリエイトを済ませてあるけれどあなたはまだでしょう? 遊ぶためのものは1式用意してあるから早く済ませなさい」
「これって最新のモデルじゃないですか?」
「やるからにはしっかりやるためよ、かなりいいお値段だったわ」
「マジ、お嬢様ぱねぇっす」
「でしょう?」
確かゲームのリリース時間は午後7時だったはず。
そして、今の時間は
「6時55分!?」
「ふふ、あと5分しかないわね? 間に合うかしら?」
そう言ってお嬢様は機械を頭に被ってVRの世界へと旅立った。
あんにゃろっ……慣れない紅茶を俺に淹れさせたのは絶対に時間稼ぎじゃねぇか!!
普段は「四ツ谷サイダー炭酸少なめ」とか言ってくるのに。
今日に限っては「爺や、紅茶を淹れてちょうだい」なんて意味のわからない事をほざき始めた。
この時点でなにか裏があると気づくべきだったんだ。
「やべ、あと4分じゃん!!」
速攻でVR機械を被って床に寝転がるとスイッチを入れてVRの世界へと旅立つ。
視界が暗転し、体が浮き上がるような感覚の後にGATE KEEPERを選択するとゲームが始まる。
残り3分
「この世界の概要? 事前に読んでる! スキップ!!」
キャラクターメイクは……なんだこれ。
『チハヤ』という名前で作られたキャラクターがあった。
お嬢様が事前に作ってくれていたのだろうか……
嫌な予感はするがこれを使わないと拗ねそうだし、時間短縮にもなるのでありがたく使わせて貰おう。
残り2分
「ってこれほぼ俺じゃん!! ってか俺だよな……」
焦げ茶色の短髪にスっと整った鼻や口、全体的に現実の俺を美化したようなキャラが作られていた。
てか、この顔ムカつくんだけど?
完璧に俺の上位互換じゃないかお嬢様め、当て付けか?
これくらいイケメンになれという当て付けか?
「使用武器は剣、チュートリアルはスキップで!」
残り1分
「良くあるよね! 再度確認! スキップ連打だ!!」
残り30秒
「ここに来てロードかよ!!」
残り10秒
「しゃっ!!間に合ったぁぁぁぁ!!」
待機列1番
「俺の、俺の、勝ちだぁぁぁぁぁぁ!!」
時間までに待機していた人は抽選で待機列を割り振られる。
そしてギリギリ間に合った俺は運良く待機列一番になったってわけだ。
俺がそう叫んでいると視界が真っ暗になりゲートキーパーの世界へと降り立った。
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